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マヨマヨ~迷々の旅人~  作者: 雪野湯
第五章 遭遇……アクタの謎
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数字の謎

 朝食を終え、アプフェルの案内で学士館が管理する時計塔へ向かう。

 時計塔は北地区にある学校の敷地外にあり、西地区の中心にあるそうだ。

 道中、彼女は書類に目を通しながら、うんうんと唸り声を上げて歩いている。



「アプフェル、さっきから何見てんの?」

「ちょっとね、課題をねぇ」

「課題?」


 ヒョイと書類を覗くと、見たこともない数式が並んでいた。

 以前も少し話したけど、こちらの数字は地球のデジタル文字が変化したような数字。

 慣れるまで大変だったが、今ではすんなりと頭に入ってくる。

 だけど、アプフェルが手にしている書類の数式は全然頭に入ってこない。



「なにこれ? なんか難しい数式?」

「ああ、これ。風の魔法と火の魔法を組み合わせた時に生じる、エネルギー量の計算式で、その時の気候条件と術者の持つ魔力バランス。そこからどれだけの魔法力を生み出せるかって問題」

「……そうですか。なんか、ややこしそうなんだけど」


「そうかな? そこまで難しい問題じゃないけど……そっか、ヤツハは学校に通っているわけじゃないもんね。でも、あんたもそのうちエクレル先生から習うと思うよ」

「うげ、面倒」

「他にも基本問題で、土地面積の単純な計算から、そこの土地を掘削(くっさく)するために必要な魔力量を算出するとかあるけど」



 別の書類を手渡され、読んでみる。

 魔力量の計算はさっぱりだが、面積の計算には見覚えがあった。

 日本にいた頃、進学の相談の際に高校の教科書を見せてもらったことがある。


 そこに載っていたのは積分を利用した面積の求め方。

 つまり、アプフェルが手にしている問題文は俺の知識を超えたもの。

 それを単純な計算って……。


「アプフェルさんって、見た目とは違い頭いいんですね」

「それ、どういう意味よ? 一応、私は国立学士館の生徒よ。これぐらいできて当然」

「そっかぁ。これが、俺より頭いいのかぁ……」

「だからっ、どういう意味、それっ!? だいたい、これ扱いってっ!」

「すまん、正直舐めてました。アプフェルって学士館でどのくらい凄いの?」

「どのくらいって……実技では学年トップ。座学だと、二番だけど……そう、あの忌々しい女がいなければぁぁ~」


 

 誰かを呪い、宿屋の時のように目を血走らせてる。

 たぶん、相手は仕事をさぼった同一人物。

 だけど、そいつがいなくても学年二位の成績。実技に至ってはトップ。

 アプフェルが超がつくエリートなのには驚いた……性格はアホよりなのに。

 今も、エリートとは思えない呪いの声を喉元から上げているし……。


「まぁまぁ、アプフェル。誰かを呪うのはそこまでにして、今日は仕事に集中しような。ほら、時計塔はすぐそこなんだし」

 

 時計塔の背は高く、遠くからでもはっきり見えている。

 なので、詳しい案内がなくても近くまで来たことはわかっていた。

 時計塔は最初に王都に訪れた時に見た、あの高い塔。

 あの時に時計塔かなと予想していたが、やはりそうだったみたいだ。


 アプフェルは俺の宥めに渋々と頷くと書類をカバンに仕舞い、時計塔へ向かい歩き始めた。


 


 時計塔の前まで来て、俺はあんぐりと大口を開けながら建物を見上げた。

 高さは城壁より少し高いくらいで40mほど。

 外壁はまんべんなく細かな装飾が施され、頭頂部は尖った屋根のようになっている。

 見た目はロンドンにあるビッグベンを小型にした感じ。

 入口と思われる場所には衛兵が立っていた。


 遠目からでも結構な高さがあると思ってたが……これを二人で掃除するって無理がないだろうか?


「アプフェル。ホントに二人だけ掃除するの?」

「掃除する場所は一番上の階だけだから大丈夫。そこまで階段で昇んなきゃいけないけど」

「うへぇ~」

「我慢我慢。その代わり、依頼料が高いんだから。じゃあ、私は見張りの人に話をしてくるから、ちょっと待ってて」

「はいよ、わかった」



 アプフェルが許可を取りに行っている間に、もう一度、時計塔を見上げる。

 デカい……天辺(てっぺん)には鐘らしきものが見える。これが壊れているなんて、ちょっともったいない。

 次に、時計盤の部分に視線を移した。

 そこで、思わず小さな声が飛び出た。


「え、なんでっ?」

「どうしたの?」

「あ、いや。許可は取れたの?」

「うん、問題なく。じゃ、とっと始めましょう」

「そうだな」


 アプフェルは時計塔の入り口を目指す。

 俺も彼女の後ろからついていくが、途中で足を止めて、時計に目を向ける。



(どうして、時計盤にローマ数字が使われているんだ? この世界の数字じゃないのに……)


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