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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

曇り空から月明かり

『人』『食』『鬼』『女』

人の体と人喰いの性質を持つ生き物って、どうなるんだろ? っていう疑問の結論ですね……何考えてんだ僕^^;

 


 とある所、小さな村があった。



 その村に、一体の人を食す物がさまよいたどり着いた。


 村人達はその物を『人食鬼女(じんしょくきじょ)』と呼び、恐れ、村を出ていく者もいた。


 だがその村人の中の一人の男は『人食鬼女』に惚れこんでしまった。その男の名はマルク。


『人食鬼女』は、飢餓状態であったがとても美しい女であった。獲物を噛み殺してしまうような牙と、鋭すぎる眼光を除いては。


 マルクはまず、『人食鬼女』に『アリソン』という名を付けた。


 アリソンはマルクに襲いかかろうとするが、いかんせん飢餓状態であったため、殺す力など無かった。



 マルクはアリソンをとことん飢えさせた。



 アリソンの到来から半月すぎる。



『アリソンは害無し』とみなして、村に残る者が多くなった時、マルクはアリソンに家畜の肉を一切れあげた。


 アリソンはそれを僅かに口にし、大きく目を見開いて残りを大きな口で頬張った。


「うああ、うああ」


 アリソンは「よこせ、よこせ」と言わんばかりにマルクを見ながらがらがらの声を発した。


 次にマルクは畑で獲れた芋をあげた。これもアリソンはものすごい速さで食べた。


「美味いだろう、アリソン。これは『イモ』と言うんだ。君が今まで食べていた物が食べる物だよ」


 マルクはアリソンに近付く。アリソンは、マルクを食べようとはしなかった。


「あ、おぅ、くぅ」


 アリソンは涙を流し、マルクを抱きしめた。



 人食鬼女と人間が、分かり合えた瞬間であった。






 アリソンは賢かった。


 言葉を教えれば、すぐに使えるようになり、畑仕事を教えれば、すぐにできるようになった。


 彼女の到来から早10年。


 マルクとアリソン、2人の間には2つの命が生まれていた。


 ルーンという男の子とマーシーという女の子。

 齢8つと齢2つ。


 2人は人食いの性質を持ちながらも人間の身体を持つ子達であった。


 マルクとアリソンは2人に言いつけた。



「人は決して食べてはならないよ。もし食べたら気付いてしまう―――」




 それから5年。

 ルーンは13歳、マーシーが7歳の時、2人は村の外に行ったまま、帰らぬ人となった。


 ルーンとマーシーは村人達に助けられながら生活をしていた。


 ルーンにはシーニャという想い人ができた。しかし、マーシーは村人達の生活にとけ込めずにいた。

 マーシーはルーンより人食いの性質が強かったからか。


 それから1年。


 村は不作だった。


 過去最大の不作であり、家畜は餌がなく死に、家畜同士の病気が発生したりなどで家畜は全滅。当然、野菜も獲れず。



 村は飢餓地獄となった。



 そのまま季節は冬となる。

 村人達はそれぞれ固まり、共に寒さに耐えていた。

 ルーンはシーニャと。


 しかしマーシーは 例外。 誰ともおらず。


 ただ1人で寒さに耐えていた。


 しかし限界がきた。




 彼女は、覚醒した。





 マーシーはルーンとシーニャのところへ寄った。


「おにいちゃん、どうしておとうさんとおかあさんはあんなことを言ったんだろうね?」


 そう言って、シーニャの首にかぶりついた。


「マーシー!? 何をしてるんだよ!」




「なに? お食事をしてるんだよ。わたし達は…食べれるでしょう」




 マーシーは、そう言ってシーニャを食べ続ける。食し続ける。



「で、でた……人食鬼女がでた!」


 一人の老女が叫んだ。刹那、他の者は悲鳴をあげ、泣き出す者もおれば、逃げ出す者もおり。



「マーシー! やめろ! シーニャは食べるな!」


 ルーンは言った。すると、マーシーは食すことを止める。








「…………シーニャ、は?」










 マーシーは逃げていた老女にかぶりついた。


「マーシー!」

「おにいちゃん。安心して、おにいちゃん。シーニャは食べないよ。シーニャは(・・・・・)


 と言って、マーシーは老女を食す。

 ものすごい勢いで老女を食べ終えると次々と、泣く者、逃げゆく者にかぶりつく。




 人、人、人。

 食、食、食。




 マーシーの目は人の目ではなく、肉に向いていた。



 行き交う悲鳴の最中、マーシーはわらう。




「おいしい」




 そう言った。


 それからしばらくして、ルーンは、シーニャの欠片と共に、村の悲劇を見ていた。傍観していた。



「おにいちゃん、あげるよ」


 マーシーは村人達の欠片を拾い集めて、ルーンの目の前にずい、と渡す。


「いらないよ…っ」

「どうして?」

「いらないってば!」


 ルーンはマーシーを強く押してマーシーから離れる。


「おまえは……おまえはバケモノだ! 来るな! おまえはマーシーじゃない! 返せ! バケモノ! マーシーを返せッ!!」


 ルーンは叫び、激しく肩を上下させて息をする。マーシーはそんなルーンを悲しげに見つめた。


「どうしてそんなこと…言うの?」


 マーシーはルーンに近寄った。

「おいしいのに、おいしいものを残しちゃだめって、おかあさんは言ってたよ」

 マーシーはゆっくりとルーンに近づいて、ずい、ずいと手を指し伸ばす。

 ルーンは「やめろ!」と叫び、その手と、手の上にある欠片たちを叩き落とすようにはたいてその場にうずくまる。


「いたっ」


 マーシーは叩かれた腕をさする。


「わかったよ、おにいちゃん」


 マーシーはルーンの手からシーニャの欠片を荒々しく取った。



「ほら、おにいちゃん。これなら」



「――――――――!!!??」

 ルーンは声にならない叫びをあげた。


「シーニャはおにいちゃんが食べるから、食べないでって言ったんだよね? そうだよね? おにいちゃん、優しいから。シーニャは自分で食べるのね?」


「食べないッ!」


 ルーンはマーシーを叩いた。


 マーシーは転がる。


「ぼくは! シーニャと一緒にいたかったのに……!」




「そう……じゃ一緒させてあげるよ?」










 マーシーはルーンにキスをした。


「おにいちゃん、だいすき」



 そこからマーシーはルーンにかぶりつく。


 そして呆気なく平らげた。




「おいしかった、おにいちゃん。ホラ、これで、シーニャと一緒」


 シーニャの欠片を口の中に放り込み、ブチブチと噛み砕いて胃の中に入れる。



「これでおにいちゃん、シーニャと…………わたしと一緒」



 村人は、村は全滅した。




 それから数ヶ月。何も無い村でマーシー(人食鬼女)はさまよい続けた。

 飢えた人食鬼女は倒れ込む。


 すると、目の前に欲していた肉があることに気が付いた。


「いままで……気付かなかったなんて」



 人食鬼女は見つけた。


 こんなにも、身近にだいすきな肉があったことを知らなかった。


 その肉がどんな肉かとも知らず、人食鬼女は食べた。


 その肉を手でもいで食べる。


 食べ終え、

 もいで、

 食べ終え、

 もいで、

 食べ終え、

 かぶりついて引きちぎって、

 食べ終え、


「おいしかった。でも、でも何でだろう。体があついよお」














 人なき村の真ん中で、四肢のない美しい少女の死体が横たわっていた。





ありがとうございました。。


こんなことありえないかな?

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