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4 二度目の五月一日

 

 ◆


 目を覚ましたおれは枕元に置いてある電波時計で、日付と時刻を確認した。


 五月一日、午前七時。


 この日付と時刻は、すでに見覚えがある。つまり今日という日はおれにとって昨日と同日であり、他人にとっては新たなる一日となるのだ。

 

「やっぱりアレは、夢じゃなかったのか」


 おれはベッドから上半身だけを起こし、頭を軽く振った。長い髪が揺れて、頬に当たる。これも一昨日とは違う、昨日から感じ始めた感覚だ。

 つーか、女になったら髪が長くなってるとか、それもどーなんだよ、女神様。


「それがわしのジャスティスじゃ!」


 ……なんか、心の中に響く声があった……。


 だがしかし、おれはまだ、今日が昨日と同じ一日であるとは信じきれない。

 そりゃ、そうだろう。誰だってタイムリープを簡単に受け入れられるはずが無いのだから。

 だからこそ、おれは昨日と同じ行動を繰り返してみようと考えた。もしかしたら昨夜のことが単なる夢で、本当は昨日が四月三十日だったかも知れないからだ。


「ぎゃー!」


 少しわざとらしいが、洗面台の前で奇声を上げること数回。すると、やはり前回と同じく妹が愛らしいピンク色のパジャマで登場し、不審者を見る目つきでおれを睨んでくる。


「やっぱり……」


 妹の三白眼を見ながら、おれはため息をついた。


「何を意味不明なこといってんだ、オマエ! そもそもアニキはどうした!?」


 おれは前回と同じく、くだらない会話を交えて兄だということを証明する。そして妹が御堂を呼ぶというのを、今回は止めなかった。

 不本意だが、昨夜の神――ローラ・ローリングの言ったことが事実ならば、家でじっとしていることは得策と云えない。


 何しろおれはハンサムに告白されつづけ、真実の愛をみつけなければならないのだ。

 この厳然たる事実を粛然と受け止める為には感情が追いつかないが、この条件を満たす為には、学校という猟場へ行く方が、間違いなく良い。


 まあ、ハンサムってーのがよく分からんが、例えば生徒会長やバスケ部のキャプテンなんかは絵に描いたようなイケメンだし、条件は満たしていると思う。

 それにチャラ男として有名な片桐欄丈かたぎりらんじょう――あいつもまあ、ハンサムといって差し障りないはずだ。

 あとは美術部の眼鏡君だって背が高く整った顔立ちをしていたと思うし、後輩で同じく読モをやってる奴もいるしな。


 とはいえ、やはりハンサム像に関しては不安が残る。なので御堂が到着すると、おれは早速こう言った。

 コイツは曲がりなりにも秀才だ。おれよりも豊富な知識がある分、正しい答えを導き出す可能性が高い。


「なあ、御堂。ハンサムってどんな奴のことだと思う?」


「ハンサム、ねぇ。語源はHandとSomeが組合わさったものでね、手で扱いやすい、とかそういう意味だったんだよ。そこから顔立ちが良いと、女性も手で扱いやすいってことから、男前とか……そんな感じの意味合いになったはずだよ」


「イケメンとは違うのかな?」


「イケメンって言うのは、もうちょっと顔だけって感じじゃない?」


 流石は御堂、無駄に知識が豊富だ。ってことはだ、ハンサムってのは顔が良くて女を扱うのが上手い男のことだな。となると狙うべき相手が限られてくるぞ。

 やっぱりチャラ男の、片桐欄丈かたぎりらんじょうがベストな選択か。


「は? 何いってんだ。ハンサムってさ、ちょっと気持ち悪い奴のことだろ?」


 おれ達の会話に空子が割り込んで、両手をブンブンと振っている。彼女は何やら、ハンサムが嫌いのようだ。

 まあいい……ともあれ目標は定まった。となればやはり、学校へ行くことが先決だ。


「あー、そんなことより、空子。おれも学校へ行きたい。出席日数やべぇしな。ちょっと制服を貸してくれ」


「は? 何言ってんの、この変態。そんな格好なんだから、家で大人しくしてろよ。てか、制服をどうしても貸して欲しかったら、一日五千円な!」


 緑色の三白眼が、おれを睨む。なんて言う無茶ぶりだ。

 出席日数がヤバいって言ってんのに、コイツは兄に留年して欲しいのか。お兄ちゃんと同級生になりたいのか? 

 そもそもきちんと一万円を返したのに、五千円寄越せだと? この仕打ちは酷いんじゃないか? お陰でおれの財布には、もう五百円しか残っていないというのに。


 拳を握りしめてフルフルと震えていると、御堂がおれの肩をポンと叩いた。


「洋ちゃん、ぼくの制服で良かったら貸してあげられるよ。それで、とりあえず学校に行ったら? 今の身長の洋ちゃんにはちょっと大きめかもしれないけど、きっと大丈夫だと思うんだ」


 顎に指を当てて考え、おれは頷いた。確かに奴の身長ならば、今のおれとあまり変わらない。だとすれば、男の制服でも問題ないだろう。

 というか、確かにいきなり女子の制服の方が抵抗がある。むしろこっちの方がいい。


 なにより形はどうあれ、学校へ行ってハンサムに告白される可能性を少しでも上げなければ、おれは今日も死ぬことになるのだ。死んで明日も五月一日が繰り返されるなど、冗談じゃない。しかもチャンスが一つ減るのだから。


「じゃあ、御堂。悪いけど、制服を貸してくれ」


「うん、わかったよ。とってくるから、ちょっと待っててね!」

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