1話:出会いは始まり②
みんな、嘘ばっかりだ・・・・・・
誰も信用できない。ここには俺の居場所がない。味方が欲しい。依り代がいればどんなに楽になるか・・・・・・
「いつ本当の事を伝えるんだ?」
いつとかの話じゃないだろ。最初から教えろよ・・・・・・
「隠し通したいわ。だって本当の事を知ったら・・・・・・」
「俺は本当の事が知りたいんだよ!」
そう叫んで少年は悪夢から目覚めた。
時刻は午前9時過ぎ。今は春休み中なので学校は休みだ。かと言って学校がある日でも行くかと言われたらノーコメントだ。俺、鶴賀和斗は去年の5月からずっと不登校になっている。原因は去年のゴールデンウイークだ。
毎年ゴールデンウイークは親戚が集まる風習になっている。その時に聞いてしまった、14年間ずっと自分の両親だと思っていた人が実はいとこの両親で、本当の両親は13年前に交通事故で亡くなっていたという衝撃の事実を。それ以来俺は誰も信じられなくなり、塞ぎ込んで引き篭もってしまった。
「またあの時の悪夢かよ・・・」
悪態をつきながら和斗は自室のベッドから起き上がり、
「今日は家の人が全員休みだから外に出るか」
と独り言を言って身支度を始めた。中学生らしいパーカーに茶色の長ズボンに着替え、2階の自室から1階の玄関へ向かった。
誰にも会わないことを願いながら階段を降りて行くが、残念なことに義母と玄関前の廊下で会ってしまった。
「和斗おはよう。今日もお祖父ちゃんのところに行くの?」
「別に・・・・・・」
鬱陶しいと思いながらも答える。
「じゃあどこ行くの?何時頃帰ってくるの?朝ごはんは食べないの?」
「うるさいな。俺がどこ行こうと勝手だろ!」
「だって母さん心配で・・・・・・」
この一言で和斗の沸点が頂点に達し、
「母親づらすんじゃねーよ!」
「母親づらって、母親だもの。」
「この、嘘つき・・・・・・」
と一言吐き捨て家を飛び出した。
大人に罵声を浴びせたが、不思議と罪悪感は無かった。しかし、このまま続けて何か解決するのかと考えも何もない。ちゃんとみんなとそのことについて話したいが、まだ気持ちの整理がついていない。
「ゆっくり予定立てるつもりだったのに、はぁ。」
出てきたはいいものどこに行くかは全く考えてなかったから困った。いつもなら祖父のところに行き、剣道の稽古を行うのだけど、今日は向こうの都合で無しになっている。
祖父は剣道の師範である。先祖に鶴賀直虎之助という武士がいて、その人が鶴賀流剣術を作り、人々に剣術を教えてきたらしい。祖父もそれが影響で剣道を続けている。俺が祖父に剣道を習っているのは、引き篭もっていることを聞いた祖父が無理やり俺を連れ出したからだ。
「何を閉じ籠っている。心が弱いから籠るのだ。強くなるためにわしがお前さんを鍛えてやる。」
と言い出し、半年前から傍から見れば虐待とも取れるような稽古を行うようになった。初めは嫌すぎてサボったが、次の日には家に迎えに来て稽古場に連れていき、それはもう恐ろしい罰を与えられた。それ以来、祖父には逆らうことはなくなった。
「中学までの勉強は終わったから、参考書を買いに行くか・・・・・・」
勉強の方は引き篭もりながらも、独学で行いつい先日高校に進学する前に、高校1年生の内容を終えてしまった。勉強は嫌いではない、むしろ好きな方だ。中学の時に学年でトップを取ってみんなに自慢したこともあった。
学校自体は嫌いではない。明るく誰とでも仲良くなれるような性格だったためでそれなりにクラスの中心にはいた。ただ、あのことで色々精神的に参ることが多く塞ぎ込むようになってしまったことで不登校になった。
「とりあえず、本屋までぶらぶら行くか。」
ゆっくりと本屋に足を運んで街の様子を見ていると、新入生おめでとうなどの文字が爛々と光を放っている。
「もうそんな季節か。早いな。」
学生時代なんてもう過去のことだと言わんばかりの言葉が口から出た。街は親子連れやスーツ姿の人で溢れている。春は皆が浮かれがちになる季節であるが、俺だけは気分が沈んでいる。
はぁ、家にいても居場所があるかわからないし、親戚にも微妙な扱いされるし、稽古はしんどいし。この世界に俺の居場所はないんじゃないのか・・・など考えて歩いていると突如、自分の足元に真っ暗闇の穴が開いた。
「え、ちょ、うわあああああ!」
という叫び声を残して暗闇に吸い込まれた。
ここは何処だ・・・・・・
あんな事考えてるから天から見放されて、とうとう地獄に落ちたのかと思った。しかし現実は違う。気がつくと俺は芝生に尻餅をついたような体制で、大勢の人に囲まれている状況に陥った。
「あ、あなたが私のさ、サーバントですか?」
声の方を向くと、自分より年下であろう日本人離れしたエメラルドグリーン色の髪の少女が手を差し伸べていた。
③もおそらく早めに投稿出来ると思います。ていうか、早めに投稿したいですww