カリストにて
「連邦から提案があったよ」
コルティナは通信機に向かっていた。相手は第三キルヤのデ・ルカ中佐だった。コルティナは同盟参加国との会議のため、カリストの植民ドームにいた。
「提案?」
「譲歩してきた。オールトの雲の領土問題でだ」
「……それはありがたい……何でまた?……」
「どうやら、あの子が原因らしい」
「二人目が? 連中も知ってるのか?」
デ・ルカ中佐の態度は普段の彼に戻っていた。コルティナとは同盟軍結成時からの戦友なのだ。
「まあ、熱源をモニターすれば解析可能だからな……。ある程度の情報漏れは仕方ない」
「それぐらいの危機感はあるってことか」
「そうだな。これで暗殺対象が二人になったってことだ」
「問題ないよ。連中には手は出せない」
「それは分からんよ。あいつらはあきらめない」
「もう一度やりあってもいいんだ。二人なら、作れる量も倍になる」
「……例の熱力学的爆弾か?」
「そうだ。燃料は無限にある。負けねえよ」
「……やめとこう。これ以上犠牲者は出したくない」
「慎重だな。まあ、任せるよ。うまくやってくれ、キルヤ同盟軍エウロパ防衛守備隊司令官殿」
「それはやめてくれ。それよりリフレクターが問題だ。気になる情報がある」
「何かあったのか?」
二人の話題はラグランジュ点の太陽光反射装置へと移っていった。
「また調子が悪いらしい。システムがダウンするかもしれんな」
「連邦がそう言ってきたのか」
「そうだ。連中はタイタンにも配分すべきだと言ってる」
「断れよ。土星の制宙権はこっちにある」
「いいのか? また事故が起きるぞ」
「いざとなればプラグを使おう。せっかく二人になったんだ。やつらに思い知らせてやろう」
「……待ってくれ」
コルティナの声はしばらく途切れた。国務大臣からの通信だった。
「連邦からホットラインが入った」
「びっくりだ。連中は相当慌ててるな」
「チャンスだ」
「そうだな。一気にタイタンのドームをつぶすか?」
「そう急ぐな。オールトの雲と交換条件なら悪くない。プラグのテストはそれからだ」
「了解した。俺は、これから第一に戻る」
「了解。後で連絡する」
コルティナは回線を切った。交渉は有利に進められそうだった。二人のプラグはいつでも使える。連邦にはそう伝えるつもりだった。
コルティナはホットラインの回線を開いた。相手はELM連邦の大統領だった。




