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そして私の世界は…………

何時も過す校舎の裏庭で人から見られないように、木の側に身を隠してずっと其処で泣いてました。

持っていたハンカチもこれで拭くには意味もないほどに濡れてしまい、もう制服の袖でもいいかしらと思って目元に持って行こうとした腕を掴まれました。


「流石にそれで拭くのはどうかと思うよ、はいこれ」


私の腕を掴んでいたカイル様は私に持っていたと思われるハンカチを差し出して、私が受け取ったのを見てから私の腕を掴んでいた手を離してくれました。


「あ、ありがとうございます」

「もうそうやってハンカチを差し出さなくなった事を、今気が付いたよ」

「え?」


何の話をされてるのかわからなくて、私は思わず聞き返してしまいました。


「リルティア子爵令嬢、彼女はあの事故の後に俺たちの顔を見ると、トラウマで泣くようになってね、チェルシーと鉢合わせさせない為に側に居るのに、顔を合わせるたびに泣かれて、最初はどうしようかと凄く困ったてよ。

よくさっきみたいにハンカチを出すのが仕事になっていたのだけれど、いつの間にかそのハンカチを出す事がなくなってた事に今気が付いた」


カイル様の口から初めて、リルティア子爵令嬢様の話を聞いた気がします。

誰も私とはリルティア子爵令嬢様の事は話されないので。


「なんというか、そうやってお聞きしますと、噂と違う方ですのね」

「チェルシーの知ってるリルティア子爵令嬢の噂ってどんなの?」

「え、えと、そうですね……何時も努力をされてる方で、誰にでも治癒の力を授けてくださる方と聞いてます」

「ぶふっっ……いやまあそれも当たりだけど……」


カイル様は少し咽ながら、何度か何かを堪えた後に


「どんな遠目でも、俺たちの顔を認識した途端に、涙を滝のように流しながら泣くから『泣き虫治癒令嬢』って呼ばれてるよ最近では。

そのあだ名が不本意だからと、本人は俺たちと顔を合わせて慣れることで、泣かないように努力してるんだって……ある意味噂通りの努力家かもね。

ユリウスから言わせると、その努力の方向性は間違えてるそうだけど」

「はあ……」


え?でもその原因って結局は私ですよね、私のせいでそんなあだ名まで……。

本当にリルティア子爵令嬢様には顔向けが出来ないです。


「誰にでも治癒魔法を使うなら、今の君もそうだろチェルシー」

「いえ、私は……私のせいで怪我をした方を治す為にしてる事です、リルティア様みたいに誰にでもって訳でなないです、私は……私はだめなのです、誰かを傷つけるしか出来ない存在なのです」


お告げだか公爵家から受け継いだ能力だかの暴走により、誰かの体なり心なりを傷つけるしか出来ない、誰かを不幸にする存在


「カイル様も折角側に居て下さってるのに、迷惑ばかり掛けてしまって申し訳ありません」


そういって謝罪の言葉を口にするとカイル様は凄く悔しそうな顔をしながら私を見てました。


「俺も最初は、チェルシーの君が何かミスばかりをして、周りに迷惑を掛けてるのだと思ってた。

でもチェルシーは君は何時見ても気を張ってばかりで、周りの事を凄く気にしてて、何時だって何かに怯えてる」


その言葉に少しビクリとしてしまい、肩が少し揺れてしまいました。

その肩をカイル様は木に押し付けるように私の体を押さえて、私の顔を見下ろします。

少し影で暗くなったカイル様が私を見る顔はとても真剣でもあり泣きそうでもあり、見てる私の方が苦しい気持ちになってきました。


「本当なら防げるんだ、君の起こす行動は、周りが気をつけたら防げる行動なんだ、実際に今の俺たちはそれを防げてる事の方が多い、先輩方とかは防いでることの方が多い、俺らはまだ判断力とか実践経験不足が多いから、その差が大きいんだと思う、それに最近だと誰かが怪我をする事の方が減った。

そして本当に防げない事は、さっきの君の事を言うんだ」


カイル様は押されてない方の反対側の肩から顔を撫でられて、守れなくてごめんねと小さく呟かれました。

その時に、少し違和感を感じて自分の顔を触れようと手を動かした時に気が付きました。


「あ!髪!」


何時もなら触れる髪の毛が手に当たりません。

違和感の正体は髪の毛でした。


「うん、魔法暴発の時に燃えたんだ」


そして私は今着ている制服も新しい事に気が付きました。


「あ、制服新しいです!」

「まあ燃えたからね、保険の先生が新しい治療の時に新しい服に替えたと言ってたよ」

「チェルシーが魔法を暴発させた相手……バルマスク国の者だそうだけど、ありがとうだって」


その言葉は治癒魔法を掛けた時にも聞きましたが、私が飛び出さなければ、その方は魔法で大火傷を負う事もなかったのに、どうしてお礼を言われるのか私には判らなくて、首を振ってしまいます。


「彼は魔力の扱いが巧妙な分、魔力の放出が下手で、巧妙に誤魔化してたから、体内に発散されなかった魔力を溜め込んでたそうで、あの時その溜め込んだ魔力が暴走しそうになったそうだよ。

それを君が体を張って目の前に飛び出して来たから、開放しようとした魔法を、急遽解除する事で自分の体内で暴発させる事に切り替えたそうだよ。それで君はその余波に巻き込まれたんだ。

チェルシーがあの時現れてくれなかったら、魔力を暴走させたまま魔法開放をしてしまい、きっと大惨事になってたと言ってたよ、だからあの時、現れて止めてようとしてくれて、ありがとうだって」

「そう……ですか……」


その言葉を聞いてホッとして、私は緊張してこわばっていたのか少しだけ体の力が抜けました。


「チェルシー喜んでいいんだよ?」

「え?」

「君は人を助けて感謝されたんだし良い事をしたのだから、嬉しそうな顔をしてもいいんだよ?」

「喜んでいいのですか?でも私は……」


誰かを傷つける側の人間だから喜んではいけない、その言葉が胸を過ぎります。


「あの時、驚きすぎた俺達の責任だけど、チェルシーは何でも重く受け取りすぎだ」

「重く受け取りすぎですか?」


カイル様は力強く頷くと、ぐぐっと拳を握り締めながら


「そうだよ、チェルシーの起こすアクシデントは、俺たちの今の実力を試されてるようなものなのに、それから怯えて逃げたりしたら勿体ないじゃないか!」


力いっぱい真剣に発する言葉の内容は、なんだかずれてる気がしたのですが、あまりの前向きすぎるその考えに思わず笑ってしまいました。


「ふふっ、カイル様にそう言われると、とても楽しそうに聞こえますね」

「やっと笑ってくれた」

「はい?」

「ううん、行こう、前向きな気分の内に教室に戻ろう、その気分のうちにもっとクラスの人達と交流を持とう。

チェルシーはただでさえクラスの人達と交流を持つ機会が少ないんだ、もっと自身の事を理解してもらい、何かあっても謝るだけで終わる関係じゃなくて、もっと信頼の出来る関係にしないと、これから先魔獣討伐が始まった時に、少しでも信頼関係が築けてないと連携が取れないじゃないか」


カイル様が手を差し出して私の手を取って、其処から立たせようと引っ張ってくださる。


「これからもカイル様は……手助けしてくださいますか?」

「当たり前だろ?俺はこれからもずっとチェルシーを見てるよ」


それは心強いですね。

そう思いながらも、カイル様の言葉で少しだけ私も前向きに物事を考えてみようかしらと思えてきました。

カイル様に手を引かれながらクラスに向かって歩き、カイル様の背中を眩しそうに見てしまう。


「それにこれはクラス全員、いや学年……そしていずれは学校全体が強くなるチャンスなんだ!

そのチャンスをミスミス逃すわけには行かないだろ!」


嬉しそうに振り返りながら私に語るカイル様の言葉を聞きながら、前にフォール殿下とユリウス様が言っていたカイル様は『脳筋』だから、あまり言っている言葉を真面目に受け取るな、と仰っていた意味を少し理解した気がしました。


そして教室に戻った私の姿を見た一部の方達から悲鳴が上がりました。


「聖女様の髪の毛が…………!」


はい?と思って思わず頭を傾げてしまい、聖女様って聞こえた気がしたのですが、気のせいですよね?


「あ、髪の毛はあの燃えてしまって……このままじゃみっともないですよね……どうしましょう」


この長さだともう男性のように短い髪型にするしかないのですが、髪の毛は切ったことがないので私が自身の手で切るにしても、上手に切れるかしら?後ろの方とかどうやって切ればいいのかしら?と困りながらカイル様を見たら


「髪の毛整えようか?」


とカイル様に聞かれたので、お願いしますと言葉を掛けてから、切ってもらう為に椅子に座りました。

カイル様も誰かに声を掛けてから、何処からか出された鋏を手に持ってこちらに来られて、私の後ろに回ったかと思うと、ジョキンという音と共に髪の毛が教室の床にバサっと落ちました。


切って落ちた髪の毛を見て、意外と長さがあるものですね、と思っていたら


「イヤアアアァァァーカイル様まって!やめて!そのままだとチェルシー様の髪の毛がさらに短くなってしまいます!!!」


という女性の悲鳴にカイル様も私も驚いて動きが止まってしまいました。


「え?でもこのままだとみっともない髪型に……」


片方が耳が見える長さで、もう片方は元の腰までの長さの髪の毛って、みっともなくないですか?と思っていたのですが、クラスの令嬢様方はカイル様から鋏を奪い取ると、私を囲ってあれこれと言葉を交わしながら、両サイドを耳の見える長さに揃えて、後ろの方は肩までの長さで揃えてくれました。


そして髪の毛を切りながら色々と話を聞かされました。


確かに最初の方はいつ怪我をさせられるのかと、怯えてる方も居たそうですが、今では私の存在が私の想像も付かない者になっていました。


えーと……『縁結びの聖女様』と呼ばれてるそうです。

私の起こす何かから身を守れた者は良縁を結べて、怪我をした者は縁を結ぶ実力に満たないものとみなされて、何時の日か授かれるかもしれない縁を結ぶ為に己を鍛えてるそうです……。


いみがわかりません。


今ではその縁をあやかりたい方達が、虎視眈々と私の動きを見張ってるそうです。

何ですかそれ怖いのですが……!


その良縁とは色々あるそうですが、私の髪の毛を切ってくださった方達はもっぱら、憧れのあの人との縁を結びたいですわーと申してましたとだけ……。

いえ、ちょっと待ってください!私はあれですよ、動けば怪我をさせて、傷つけて、恐れられてた存在のはずですよ?!


え?

いざ戦場に身を置いて、こんな事が起きたから身を守れませんでしたーなんて言い訳が出来ない世界に行くのに、私の起こすアクシデントで身を守れないとか未熟な事を言うほうがおかしいとまで言われました。

もしかしてこのクラス全体、カイル様と同じ『脳筋』なのではないのですか?!


しかもあだ名だけ聞いてたら、公爵家の能力そのままなので、それはそれで反応に困ります。

その噂を聞いて他学年の方達までやたら私の行くところに顔を出されるので、まるで見世物みたいです。

という事を最近やっと気が付きました。

大分前からこの状態だったのに、私は全然気が付いてなかったそうです。

どれだけ私は自身の事に一杯一杯だったんでしょうか……。


そして学校全体もしかして『脳筋』というやつなのでしょうか?


そういえば良く判らない出来事が幾つかありましてうち1つが、つい最近の事ですが

少し教室内の熱が篭って暑いので、周りの方達に許可を貰って窓を開けました。

突然の突風に驚いてその風から顔を庇ったのですが、背後では女性の悲鳴が響き渡り……。

窓を開けるときに隣に居たカイル様が何故か私の背後に居るので不思議に思ってたのですが、振り返ればクラスの女性達は顔を赤めて皆制服のスカートを抑えてまして。


男性達はなにやらどよめいてたました……

よく意味は判りませんがこれは私のせいじゃないですよね?

だって教室の窓を開けただけですよ?

これで何の縁が結ばれるとかないですよね?本当に偶然の産物ですよね?


そういえば何でカイル様は私の背後に居るのでしょうと顔を見れば、笑顔で誤魔化されました。

チェルシーに新しい能力追加

ラッキースケベ属性を(※ただし巻き込まれるのは周り)手に入れた!

ただお約束を書きたかったんです。

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