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故意なのか必然なのか

※キャラに爵位ではなく名前がつきました。

※ここらかは公爵令嬢様救援処置回になります。

折角の晴れの舞台なのに、いや晴れの舞台だからこそ彼女は嬉しそうに涙をこぼしていた。

僕は慣れた手付きで、ハンカチを取り出してその涙を拭き取り、僕はそっとその目尻を唇で触れる。


こうやって泣く彼女を慰めれる日が来るなんて思っていなかった。

初めて会った時に酷い対応をしてしまったのに、二度目に会った時に僕の事を許してくれた彼女に感謝をし

三度目からは彼女はずっと泣いていた。


僕達の愚かな行動のせいで、その報いの為に彼女を護る為に側に居たけれど

涙を流す彼女に、それだけ僕達が彼女の心を傷つけたのを思い知りながらも、少しずつその痛みと向き合い立ち向かう彼女の強さに心惹かれた。


僕はあの時間違えて傷つけてしまったから、だからせめて何があっても彼女を守ろうそう心に決めた。





その日は公爵家から送られてきた報告書を読みながら、あまりの話しに頭を抱えてしまい

その姿を目にした妹に心配そうに声を掛けられてしまった。


「兄様、何をそんなに苦悩されて居るのですか?」


僕はその言葉に返事をする事無く、無言でその報告書を妹に手渡す。

妹はその受け取った報告書に目を通すなり


「は?」


え?と言いながらもう一度目を通して、四度程同じような動きをした後に、僕と同じように頭を抱えた。


「ファリスは心当たりある?」

「心当たりと言われましても、…………あ、いえ、こうやってこの書類を読んだ後だと確かにと思う事が幾つか確かにありますわ」

「という事はここに載ってる事は事実という事になるね」


公爵家から送られてきた報告書……その内容を思い起こす。


公爵家長子のチェルシー公爵令嬢。

彼女の身の回りの事故と怪我の多さから、公爵家の取ってた対応についての返答が載ってたはずのその書類に書かれていた内容は、僕達が思ってた予想をはるかに超える内容であった。


公爵家は予知能力者家系で、代々長子にその能力が受け継がれるそうだ。

でもその本来の予知能力は人と人との縁を結ぶという、良縁結びとしての予知能力であり

長子の公爵家が、思いついた様に誰かと誰かに声を掛けて引き合わせる事で、お付き合いを始めたとか結婚をしたとか、取引が成功したとか位の影響であったりとささやかな事の方が多い。


知り合い等に悪い事が起こりそうな、などの予知能力の時はその悪い予感のままに、その者に何か行動を起こすときは気をつけてね、と声を掛ける程度で防げたとか、そういった軽い能力であるそうだ。


チェルシー公爵令嬢みたいな、怪我をさせるとかそういった事は今まで起こった事がなかったけれど

今回チェルシー公爵令嬢が引き継いだ能力は、過去稀に見る強い能力であり、その反動であるという。


公爵令嬢の取る行動により、巻き込まれその者が怪我をする事で、その者の身に未来で起こる災厄を払ってるそうだ。


そうその書類には書かれていた。

公爵家の方も、チェルシー公爵令嬢が怪我をさせた人と、その人の行動とか、その後の経過を見た結果としてそう考えられるとしか述べれないとなっていた。


「ファリスちなみに、その心当たりとは?」

「昔お茶会に招待された方でチェルシー公爵令嬢と一緒に階段から落ちて、骨折をされた令嬢は確か、もし骨折をしてなかったら、行く予定だった教会へ福祉活動として顔を出す事になっていましたが、もし何時も通りに行っていたら、その時間帯に起きた馬車の事故に巻き込まれて居たかもしれないとは聞きました」

「その馬車の事故の規模は?」

「教会の玄関先で起きたけれど、幸い子供達も教会内で聖書の時間だったので、聖堂入り口の扉が壊れた程度だと、後はもし顔を出していたら、子供達の出迎えもあったから、令嬢本人と出迎えた子供達は無事で居られたかは判りません。

令嬢本人からその話を聞いたときに、痛い目にあったけれど、事故に巻き込まれなかったと思えば、助かったわと笑い話にしてたのですが……」


その話を聞きながら、妹であるファリスは話ながら、一緒に頭を抱えた。


「それなら、僕達がチェルシー公爵令嬢の行動から危険が起こらないように守ってる意味も、リルティア子爵令嬢を守っている意味もない事になるじゃないか」


守っていた事に意味がないという事実を僕は自分で口にしてしまい、その言葉の意味に傷ついてしまう。


「兄様待ってください、それだとつじつまが合わなくなります、怪我が起こるべくして起こるのであれば、その行動から絶対に守れるわけがないのです!

なのに今は実際にチェルシー公爵令嬢が起こすべき事柄から、守られて居る者も居てその者の身に何も起こらないのはおかしいですわ」


ファリスの言葉に何かが引っかかり、公爵家の報告書にもう一度目を通し、今まで僕自身が取った行動によりおきた出来事を思い起こす。


「そうかチェルシー公爵令嬢の起こす行動自体が意味のある事なんだ、怪我をしても守られても、そのどちらの結果も何かを引き起こすんだ」


リルティア子爵令嬢は、怪我をする事で僕らと引き合わされた。

そして僕らはチェルシー公爵令嬢の取る行動に注意を払うことで、各々で力をつけている。

多分あの時は僕達による勘違いによる呼び出しだったけれど、怪我の事がなければリルティア子爵令嬢に会うこともなければ、チェルシー公爵令嬢の事にも気がつかなかった。


会わなければ、僕はこの能力に目覚める事もなかった。


「ファリスならもし巻き込まれて怪我をしたらどうする?」

「そうですわね、チェルシー公爵令嬢には近づかないし、もしもの為に身を守る術を身につけますわ」

「普通はそうだよね、僕でもそうする。実際僕はそうしているし、カイルもユリウスも結果そうしている」


風の流れを読みながら、その魔力の流れを目で追っていく。


「チェルシー公爵令嬢の事故は学校に入学してから、特にその数が格段に増えている、過去の件はてっきり公爵家が色々と名誉の為にもみ消してたのかと思っていたけれど、もみ消した事実はなかったからこの資料に載ってる学校に入る前の数を思えば、今増えてしまっているこの数は、この学校内で僕らに課せられた何かなんだよ」


最初はそう、彼女とチェルシー公爵令嬢を合わせない為に何か方法がないかと思って、僕の属性である風の流れをずっと目で追っていた。

何時しかその中で、1つの流れがある事に気がついた。

聖属性の流れがなんとなく風の流れに乗って、感じるようになった。

学校内でたった2人しか居ない属性だから、気がつきやすかったのか、それともその2人のどちらの側にも居たから感知しやすくなったのか、其処から色々な属性の魔力の流れが見えるようになり、その魔力の流れを見ることに慣れて来ると、魔獣の発する魔力の流れが見えるようになった。


他の風属性の者達はそんな物は見えないと言っているので、多分だけど彼女を守るためにどうすればと気がついた聖属性の魔力の流れが切っ掛けなんだろう。

他の属性だと逆に持っている人の方が多くて、周りに溢れすぎているから気がつけないのだと思う。

実際他の属性の魔力の流れを見ると、視界は一気に色々な魔力の色に埋まりそうになる。


「チェルシー公爵令嬢対策のお陰で今では学校内で私達の学年が一番団結力も即決力も高いですわ、そして助け助けられのお陰なのか、今までいがみ合っていたもの同士も仲が宜しいの」


この学校は魔力を持つもの、主に貴族が集められている、そして魔力を持つものなら一般市民も含まれる。

それは自国だけではなく他国からも来ている。

この大陸では確かに国同士で仲が悪い国もあるけれど、だからと言って争いはしていない、そんな争いをする暇があるなら魔獣討伐に力を入れるからだ。


あの国が魔獣に襲われたからと言って達観したり無視したりも出来ない。

もしその国が魔獣に滅ぼされたら、それだけ人の住む場所と守る者が減るからだ。

そして国同士が争って領土を広げようともしない、折角奪った領土を直ぐに守れるかと言われると、魔獣から領土を守るだけの人手が足りないからだ。


そして貴族の一番の役割はその魔獣討伐の絶対参加だ。

貴族がその身を持ってして国を領地領土を守るからこそ、市民は皆その貴族を支える為に税金を納めたり、農作物を作ったり等の生活の基礎を支えてくれている。

もし貴族が居なくなれば、魔獣から身を守る術がないからだ。


「そういえば、噂で耳にしたような気がする……確か階段から落ちそうになったのを助けたとか、そんな内容だった気がするけれど……」


僕の言葉にファリスは頷きながら、その内容を口にしてくれた。


「ええ、初めてチェルシー公爵令嬢の災厄から身を守ったという話で有名ですわ。

ドノヴァン国の第三王子が、ヴェッチェル国の国王の妹姫を助けた内容ですわね。

今ではそれを切っ掛けに、卒業をしたら婚約をするという話になってますわ」


「……あの仲の悪い国同士が婚約……いや助けた助けられたは、一通り知っていたが今は其処まで話がいってるのか……、その後の関係までは噂でしか聞いていなかったけれど、その内容だけを聞くと公爵家の能力と一致するな」


抱えてた頭を上げて前を見れば、ファリスも同じように抱えてた頭をあげ顔を僕の方へと向けた。


「僕達はチェルシー公爵令嬢の行動ばかりに目が行ってて、その後の事には気がついてなかったという事か」

「そのようですわね、大分視野が狭くなっていた事を今更ながら気がつかされました」


なので今は見る属性魔力の流れは2つに抑えてある、うち1つはいつでもその場所をわかる様に見るために聖属性の流れと、そしてもう1つは魔獣達の持つ魔力の流れ。


その魔力の流れを視界から遮るように一度目を閉じて、今学校内で起こっている物事を整理しようと頭の中の情報をファリスと一緒にまとめていく。


「チェルシー公爵令嬢の起こした事件により、過去稀に見る広範囲治癒魔法の使い手になったリルティア子爵令嬢」


妹の言葉に同じように僕も言葉を続ける。


「同じく、そのリルティア子爵令嬢に窘められた事により、今では過去稀に見る奇跡的な治癒力を持つチェルシー公爵令嬢」

「最初は学年内で事は収まってましたが、チェルシー公爵令嬢の事は今では学校内になってますわ、そして学校内で求められる程の何か、学校内というよりも学校に居る者たち……」


僕達魔力持ちが求められるほどの何か……そういえばと気がついたことを口にしてみた。


「ファリスもう一つ追加を、ここ数日で魔獣達の魔力の流れがどんどん濃くなってる気がする」


凄い速さで濃くなっていく魔獣達の魔力、これが何を意味してるのか判らなかったから、あまり口に出した事はなかったけれど、もしかしたらという憶測を口に出してみた。


「「今までに無いほどの魔獣の討伐の可能性「ですわね」」


同時に発した言葉はまるっきり同じ意味を持っていて、2人して顔を見合わせて頭を軽く振る。

ファリスも同じ動きをしていて、こんな時は双子なんだなと改めて実感をする。

どっちもそんな馬鹿なって顔をしているのに、それを違うという反論をする為の理由が見つからなくて、共に黙ってしまう。


「一度父上に、この考えを報告してみよう」

「そうですわね、私達で考えていても仕方がありませんわ、他の者達の意見も聞いたほうが何か他の案が出てくるかもしれませんし」


ファリスとそういいながら席を立ち、一緒に部屋の扉を潜りぬけて父である国王の元へと向かった。




その半年後、大規模魔獣発生により、僕達学生王族・貴族もそこに向かう事になった。

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