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戦場で故意せよ乙女

公爵跡取り息子様が、公爵令嬢様に恋をしてると聞いたときは、お茶を噴出すかと思いました。


え?跡取り息子様はあれですか?実はマゾなんですか?

そう思っても失礼にはならないと思います。


お守りトリオ様達は、それぞれがそれぞれ、自分達が偏った力によって行動をしてる事を学んだそうです。

公爵跡取り息子様なら、力技で押さえ込む感じに近いですね、得意なのは武器に魔力を乗せて殴りこむ事だそうです。

その発想は間違いなく脳筋言われますね。

でも公爵令嬢様と私の子守じゃないですね、お守りをするようになって、何でも力技ではなく少しは考えて行動を取るようになったそうです。

まあ脳筋だけででは確かに公爵令嬢様のフォローとか無理ですよね。


逆に宰相の息子さんは知能派と呼ばれてました。

でも咄嗟の判断の時に色々と考え込んでしまい、それが行動に移せない事が多々あったそうで、色々と考え込んでては、偶然で色々と引き起こす公爵令嬢様のお守りは無理なので、咄嗟の判断力という名の瞬発力を磨く事にしたそうですよ。


宰相の息子さんと跡取り息子さん足して2で割ったら丁度良いと思うんですけどね。

でもそうなると同じタイプの人間が2名で面白みに欠けますかそうですか。


そして王子殿下はオールマイティー型。

お決まりの定番の王子様はなんでもそつなくこなすタイプのやつですよ。

王子殿下そんな所まで定番を引き継がなくても宜しくてよ?

そんな王子殿下でも、公爵令嬢様のお守りはそつなくこなすには難しかったそうで、でもそのお陰か王子殿下はある流れを読むのが得意になったそうです。

何の流れなのか教えてもらえなかったのですが、国王陛下には褒められたそうですよ。

その流れを読むことになったお陰が、私と公爵令嬢様のお陰だそうですが、いや私なにもしてませんよ……。


まあ、そんなお守りトリオ様達の中で公爵家跡取り息子様が、公爵令嬢様に惚れたそうですよ!

大事な事な気がするので2回言って見ました。


毎日側に居て、最初は色々と巻き込まれて怪我もして、治療してもらっての繰り返しだったそうですが、脳筋のままではダメだと気が付いて、まずは公爵令嬢様の動きを観察する事から始めたそうです。

公爵令嬢様を観察していくうちに、幾つかの行動に気が付いたそうです。

うっかり行動を取るときは、直前に少しボーっとされる時があり、周りのものが気が付くか微妙な位の間で、意識が戻った瞬間に取った行動が大体惨事を起こす事が多いそうです。


公爵令嬢様も薄々、意識が一瞬途切れるのを自覚され始めたそうで、そうならないように、気を張ってたりする時もあるそうですが、どんなに気をつけてもその一瞬が来るそうで、その後の落ち込みを見てたら段々と、守ってあげたい気持ちが高まり、恋に目覚めたそうですよ。


あ、はいそうですか、公爵令嬢様も頑張って居られるのですね、私も頑張ってますよ!

今では泣かなくなったじゃないですか、どうですかこの努力!!

同じように毎日顔を合わせてても、私の変化には見向きもされないんですね、そのハンカチを必要としなくなったの何時だと思ってるんですか、いえ、跡取り息子様には興味ないので、ただ同じように努力してるような気がするのですが、誰も私を気にかけてくれなくて寂しいだけですよ。


涙が出なくなったからって理由だけで誰も褒めてなんかくれないの判ってますよ。

ちょっと拗ねてみたかっただけです。


そんな跡取り息子さんの公爵令嬢様へののろけ?話かよく判らない話を聞きながら

なんだかんだで、私結構平和に生活してますね、って実感してる時にその話は突然舞い込みました。



魔獣が大量に発生したとの事で、本来なら実地訓練後とか、少々実践を積んでとかをする訳ですが、今回は量が多かったという事で、未経験の私達も初めての戦場に立つ事になりました。

私達の学年は王子王女殿下が指揮を取る事になり、初という事もあり私達は後衛部隊として、補給等の補助的な役割になっていました。


それでも前線の戦力が足りないという事で、殿下達も学年内でも即戦力の者達を連れて前線へ向かう事になり、私は他の負傷した者達と補助部隊の人達と一緒に後衛として行動を取る事になりました。

王子殿下が前線に向かう前に


「魔獣の流れが変わって来たから、もしかしたらここも戦地になるかもしれないので、なるべく前線と国境との間に移動をしといて欲しい」


と言われて移動を開始しようとしてた時でした、戦場全体の指揮を取られる方に、ここは安全でこれからも負傷兵が沢山来るから、ここから動くなと言われてしまい、殿下は私達の指揮者でもありますが、その上司になる方の命令には逆らえないので、動く事が出来なくなりとりあえずここに残っている同学年の者で一度集まり、後衛部隊としての行動をどうとるか決めましょうと、してた時でした。


「うわぁああぁぁぁ」


という悲鳴と突然の何かが押し寄せてくる大きな音に、私達は驚きそちらに目を向けると

大量の魔獣が押し寄せてくる光景が目に入りました。

戦力の要にもなる聖魔力の治癒魔法を使う私を守るように、皆が私の周りに集まりました。


そうして私達は主力部隊と分断されてしまいました。


初めて目にする魔獣に、巻き込まれた負傷兵達のおびただしい血の臭いと、魔獣たちの独特の臭いが混じり、突然ここは戦場なのだと、身の安全だった後方とは違う場所になったのだと認識させられました。


分断した魔獣達の群れの中にも、生き残った者達で果敢に立ち向かうもの達も居て

まずは一番近いその者達を助けようと動く事にしました。

少しでも戦力を欠くと私達も倒れるかもしれないからです。


皆得意とする技で協力しながら少しずつですが、魔獣を倒しながら味方の者と合流を繰り返しながら移動をしてましたが、所詮は戦力となる者が居ない部隊です。

どちらかと言うと、守る事の方が得意な者が多く、直ぐに魔獣を殲滅して主力部隊と合流は出来ないわけです。

それに私の治癒魔法があるとは言え、傷がずべて癒される訳ではない、私の治癒魔法は範囲は広くてもある程度が前提なのです。


減らない敵の数に、私達の精神もじわじわと疲れてきて、このままここで死ぬのかもしれない……と思い始めた頃


ズドンッッという凄い水飛沫が上空から落ちてきて、目の前の敵の一部の姿が消えたかと思うと、そこに王子王女殿下達が舞い降りてきました。


「皆のもの無事ですか?」


王女殿下の言葉に思わず皆と一緒に、はいと大声で返事をして、弱気になっていた気が引き締まりました。


「ではここからは、僕の指揮の下、土魔力の者達が結界を担当、火魔力の者達は魔力回復に専念、風主力の水補助による攻撃で一斉に移動を開始、左側にまだ残ってる別部隊と合流したのちに、主力部隊の元に戻るぞ!」


王子殿下の言葉で私を守るように囲っていた人達の動きが変わります。

何度も王子殿下が、結界魔法、攻撃魔法、補助魔法、の命令を繰り返しながら移動を進めて、別部隊と合流してから、念願の主力部隊との合流も果たせました。


皆魔力も尽きてふらふらになりながらも、無事に生き残った事に喜び近くに居た人達と抱き合いながら喜びました。

そしてお礼を言われている王子王女殿下の姿が目に入り、私もお礼を言おうとお2人の側に向かいました。


「王子殿下王女殿下、お2人のお陰で大半の者達は助かり……」


2人に声を掛けた事でほっとして安心をしたのか、久しぶりに涙がボロボロと溢れてしまい

お礼の言葉が詰まってしまい、言葉が止まってしまいました。


そんな私を王子殿下が今までと同じようにハンカチを私に差し出してくれて、こんな時にまでハンカチを持ち歩いてるんだ……と思わずふふっと笑いながらそれを受け取りました。


「殿下達のお陰で無事に助かりました、本当にありがとうございます」


涙を拭き頭を下げてお礼をいい、顔を上げたときに、笑いながら私を見る王子殿下の顔がありました。


「本当、君が無事で良かった」


そう言って珍しく私の頭を撫でた王子殿下が私に持たれる様に崩れてきて、私も慌てて支えようとしたけれど、男性の体を抱きかかえる体力は無いので一緒に崩れてしまいました。


「殿下?殿下?」


何の返事もしない王子殿下に、私はどんどん不安になり、止まってた涙がまた溢れ出します。


「兄様は、魔力の限界を超えてしまったから倒れただけですわ。

貴方の顔を見て安心してしまったのでしょうね」


そう王女殿下は私に言うと、近くに居た人達に王子殿下を運ぶのを手伝ってもらい、私は王女殿下に手を握られたまま連れられて、王子殿下の運ばれた救護テントの中へと案内されました。


「兄様は、流れを見るのです。

あの事件騒動のお陰で、魔獣たちの魔力の流れが見えるようになったそうですわ。

なので今回貴方達を救援する為に、その魔力の流れを事細かに見た影響と、それらを踏まえての常に細かい指揮を取った疲れと魔力不足で倒れてしまっただけです。

だから死にはしませんわ」


王女殿下も慣れた手付きで私にハンカチを差し出します。


「貴方はどうして今泣いてるのか、その涙の理由を起きた兄様に説明してあげて、それが兄様の一番の力になるから」


王女殿下は私にそう告げると、そのままテントを出て行かれました。

私が今泣いてる理由と言われてましても、それは王子殿下が倒れて不安になったからでして……。

不安に……


王女殿下の告げた言葉の意味と、不安で胸が押しつぶされそうになったこの気持ちに気が付いてしまい

私は思わず触れなくても判る位熱くなった顔をハンカチで隠してしまいました。


その後王子殿下は今回の功績が認められたのと、その能力を考慮して、魔獣討伐の指揮総統の地位に着くことになり、王位は王女殿下が継ぐことになりました。

それでも王位を辞退した訳ではないので、第二王位継承者でもあります。


そして私はその王子殿下と本日結婚する事になりました!


これで完全に底辺の心配から卒業ですよ!

なにせ最高位の王妃……ではありませんが、王子妃ですから上位ですよ上位!!

これで過去私を見下していた、貴族の方々にふんぞり返って自慢できます!

私を下げずんでたあの人達ざまあー!

これで憧れのざまあが出来ます!


というか、底辺扱いだった私が、あの時、思い出したのは原型が良く判らないふんわり設定だけだったのに、よくぞここまで……ただ底辺にならないために必死で、誰かとお付き合いとかお嫁さんになれるなんて思っても居なかったので、感慨深さと感動と嬉しさと色々な感情が溢れてきて、思わず涙が溢れてきて止められませんでした。


泣き虫治癒令嬢は返上したのに、これでは台無しです。


王子殿下は魔獣討伐の指揮総統の地位につき、私はそんな王子殿下と結婚した聖魔法属性の過去類のない広範囲治癒魔法使いなので私もその時は一緒に戦場に身を置く事になります。

でも不安はありません、思い返せば王子殿下は、公爵令嬢様からも魔獣からもずっと私を守ってくれてたので、彼ほど安心の出来る場所はないのだから。


泣く私に王子殿下は慣れた手付きで、私の涙をハンカチで拭いた後に、そっと目元に口付けをして嬉しそうに笑ってくれました。






令嬢としては不名誉なあだ名を頂きました。完結。

ギャグ要素がなくなって、恋愛っぽい展開になりましたが、こんな続きでも目を通してもらい、そして楽しんでいただきありがとうございます。

一応これで本編完了です


続きの話は公爵令嬢様救済処置話と王子視点のおまけです。

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