故意のキューピッド
リクエストの続編に応えてみた所、ギャグ要素がなくなってしまいました。
結局、色々な人に見守られながらの学校生活に慣れた頃に、学年が1つ上に上がり、今まではクラス単位もしくは属性単位での授業が中心でしたが、他のクラスとも合同で授業を受けるようになってから、公爵令嬢様の異常さを周りが気づき始めたのと、身を持って体感した人も多いからなのか、身を守る術を磨く人達が増えました。
あれだけ大騒ぎした私の事件は、公爵令嬢様と同じクラスもしくは、過去に巻き添えになった事のある方達には、私に同情や共感をされたそうですが、ただ噂でしか聞いたことのない方や、今まで巻き込まれたことのない方達は
「またまたー大げさな」
みたいな認識で居たそうで、いざ合同授業が始まり、その巻き込まれっぷりを目にしたのか、もしくは実際に味わったのか、このままでは幾ら魔法で治癒してもらえるとはいえ、身の危険には代わりないので、自己防衛を磨くべく、色々な方達が協力しながら公爵令嬢様対策をしてるそうです。
公爵令嬢様ご本人も、私がきれた件でやっと自身の行動で回りに怪我をさせている回数や、その怪我の酷さに気が付いたそうで……。
今までは、他の人も公爵令嬢様並に人様に怪我をさせたり、自身も怪我を負ったりするものだと思ってたそうで。
やっと周りと自分との違いに気が付いたとかで、今は一緒に行動している、王子殿下に宰相息子様に公爵跡取り息子様からの注意と申告を聞き、行動に気をつけてるそうで、少々怪我をする方が減りました。
あとは周りが自己防衛に励んでる努力も実ったのかもしれません。
そして公爵令嬢様も自身のせいで怪我をさせているのだから、ご自身も治癒魔法を使う許可を学校から貰い今では保健室で治癒魔法を積極的に使ってます。
まあ、私も同じ聖属性魔法を使うからと、今まで同じ授業を受けてましたが、授業中に魔法を披露する時は教室内に設置されてるガラス張りの個室の中に入り、其処で魔法を使うという方法で、私が披露すれば交代で公爵令嬢様といった形だったので、ご本人とは頼まれて治癒魔法を掛ける以外では交流もなく、あの事件の時まで公爵令嬢様がそんな体質持ちだとは知らなかったし上に、同じクラスの人達とも魔法の関係で交流がなかったのでそんな噂も知りませんでした。
あの後公爵令嬢様には非常に謝らました。
もちろんえーと、お守りトリオ様達(王子、宰相息子、公爵跡取り息子)に色々と防衛してもらいながら、色々と味わった恐怖で私の状態は凄い事になってて、私は何を言ったのか一切覚えておりません。
そういった経緯で合同授業の時も、保健室での治癒魔法の時も私と公爵令嬢様とは、鉢合わせにならないように組み合わせを作ってもらってます。
保健室での治癒魔法を使ってる効果なのか、私の回復魔法範囲は今ではさらに広がり本気で使うと半径150メートル範囲内であれば効果があるそうです。
そして公爵令嬢様の方も効果は高まり、今では事切れる直前の怪我さえも完全に治せるようになったとか聞きました。
そして、今この学校ではある事件をきっかけに、公爵令嬢様の認識が代わりつつあります。
それは、ある日の出来事だったそうです。
私は聞いただけなので見てないのですが、宰相息子様が少し公爵令嬢様から視線を逸らしたその時に、開けてあった廊下の窓から入ってきた虫に驚いた公爵令嬢様が
「きゃっ」
と少しあとずさってしまい、その時たまたま側を通ってた女性とぶつかり、その方は運悪く階段の方に落ちてしまいそうになった所を、たまたま通りかかった男性が助けたので、その女性も男性も怪我もなく終わったそうですが、その後そのお2人がお付き合いをするようになってから
そういえば前にも公爵令嬢様から守られた女性が、その助けてくれた男性とお付き合いをしてるという話を聞いたことが、となり……もしかして公爵令嬢様から女性を助けれたら、女性とお付き合い出来るチャンスがあるのでは!というとんでも方式になり、今では公爵令嬢様は、恋のキューピッド様扱いされてるそうです。
そりゃ、生きるけど酷い大怪我で治るとはいえ痛い思いをする人から、その身を守ってもらったら、どんな女性でもキュンってしちゃいますもんね。
私でも王子殿下に不覚にもキュンってしちゃいましたからね。
そんな人から女性を守れたら、俺ここまで実力身につけれたのか!って自信に繋がりますものね。
その上助けた女性から熱い目で見られたら、そりゃドキドキものですものね。ある意味吊橋効果抜群ですね。
その守って守られては、男性が女性に守られたりもあるのに、そっちには誰も目を向けないんですね。
ちなみに男性×男性だと、流石兄貴!頼りになる!その技を教えてくれ!!ってパターンが多いそうで
女性×女性だと、お姉さま素敵、是非助けてもらったお礼にこれをどうぞ!とお茶菓子とか小物をプレゼントパターンだそうです。
お陰で授業以外でも公爵令嬢様を切っ掛けに色々な人達が色々と交流を取ってるそうで、私達が在籍する学年は一番ある意味団結力が高いそうです。
今は王女殿下にお守りトリオ様の誰かが一緒に居ますが、なんというかお友達というよりは、大切な護衛対象的な扱いに感じるので、ボッチ感が半端ないです。
公爵令嬢様も同じ状態なのに、噂だけ聞くと凄く…………ダメよ私それを思うときっと大ダメージを精神的に受けるわ、さあ深呼吸をして吸ってーはいてーすってーはいてー、はい復唱
「底辺じゃないだけまし、底辺じゃないだけまし、底辺じゃないだけましですわ!」
そうです底辺じゃないだけましなんです!
私はまだ底辺に落ちていないし、今の状態じゃ落ちる予定も起こらないと思います!
「その底辺じゃないだけましって、何かな?」
「え?言葉に出してました?!」
「でてました、よ」
王子殿下が笑いながら私にハンカチを差し出してくれてるけど、私は少し視界が滲んだ程度だしと思って、受け取らずにそのまま手の甲で拭おうと手を動かしたのですが、その動きを王子殿下に止められました。
「たとえ少量でも手でこすると目が赤くなるからね」
王子殿下はそう言ってから私の目元を取り出したハンカチで拭き取ってからハンカチを元に戻す。
今はもうボロボロと涙をこぼす事もなくなり、一緒に居てもふとした拍子にポロッと出たりとかにまでになりました。
これで泣き虫治癒令嬢の汚名も返上が近いですよフフフと私は心の中で笑いながら王子殿下にお礼の言葉を述べました。
「ありがとうございます。
でも何時までもお手数をおかけして申し訳ありません」
「これくらい何でもないよ、それに初めての頃に比べたら、今では殆ど泣く事も減ったのだし、それだけ君がぼ……」
君がぼ……?と続きを告げる前に王子殿下は、はっとしたように上空を目を細めながら見つめ始めました。
私も何があるのだろうと、手で目元に影を作りながら同じように空を見上げてみる。
「兄様!フォローをお願いします!!」
王子殿下と同じ、きらきらと光る金色の髪の毛を今は一つに束ねた王女殿下が、上空から落ちてきながら、叫び声をあげてます。
その言葉に反応するように王子殿下も幾つかの術式を唱えながら、魔法を展開させていき、その魔法が発動したのか、王女殿下は空中で3回ほどクルクルと回転をして、地上ギリギリの位置でふわっと止まり、そのまま何でもないように着地をしました。
え?何ですか今の、凄く……かっこよくて素敵だったんですが!!!
「兄様助かりましたわ。
他の方との共同実験で、飛距離を確かめてたのですが、思ったよりも距離が出てしまい、相手の方の魔法範囲から外れてしまったので、力技で着地しようか悩んでた所でしたの」
「お前の力技は、落下地点に魔法を叩き込むになるんだろ、後の被害を考えると僕の居るところだったから良かった言うべきか…………」
「でも今ので、相手の方との魔力の相乗効果が把握出来ました、お陰でレポートにもまとめれそうですわ、兄様ありがとう!
でもこれだとやはり、空を飛んで移動方法には色々と難点があるので、まだまだ研究をしないと駄目なようね、いい案だと思ったのですが……」
王女殿下はふぅっと溜息を付いて、少し手を頬に当ててから何か考えてる仕草をされて、王子殿下はそれを呆れながら見てました。
最近は実地訓練も増えてきたので、学校で着る服も動きやすい服になっており、私や王女殿下は騎士の方達が着ている様な詰襟になっていて、膝下まである左右に短めのスリットの入っている服を身につけてます。
腰をベルトで締めてあり、スリットの入ってる服の下にはタイツを着用してて、訓練の時にはこれに胸当て等が着けられます。
王子殿下も同じ様なタイプの服を着ていて、スパッツが長ズボンな位です。
王子殿下は後は腰に帯剣そしてるくらいですかね?
でもこの姿は物語でよく出てくる、王子様がしてるような服装にも近いので、王子殿下は王子様みたいだなーってたまに思ってます。
王子殿下なのに、王子様みたいって意味が判りませんが、そう思ってしまうのです。
そんな王子殿下と良く似ている王女殿下が、空から回転しながら、しかも王子様みたいな(私も同じ格好だけど)服を着て、優雅に着地とかかっこよすぎて、かっこよすぎて
「王女殿下!今の着地もう一度見せてもらえませんか?!」
「「え?」」
私のいきなりの頼みごとに2人して驚いて私を見ます。
「あ、次は是非マントを身につけて!
空中でこういった感じでくるっと回転をしてから!
着地するときはマントをひらっと浮かせてお願いします!!」
王女殿下がマントをなびかせながら空中で、クルッと一回転をした後に、マントを浮かせて着地するシーンを想像してると、凄く胸が高鳴り、ドキドキしてしまいます。
こんな素敵なシーンを見たら間違いなく私惚れてしまいます!!!