表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/11

私の戦いはこれからだ!(完

発表会当日、私の熱は下がらなかったけれど、手紙で呼び出しを受けたのでふらふらと校舎入り口へと向かう。

呼び出した相手が相手なので無視が出来なかった訳です。

多分恩恵を使えば無視は出来ますが、極力恩恵は使いたくない訳ですよ。


過ぎたる力は身を滅ぼす―――と言いますから、私の身に合わないこの力を使って、何か起きたら後悔しますからね。


入り口の玄関が凄い人だかりで、今日が発表会とはいえこんなに入り口に集まるような事あったかしら?

と思いながら近づくと、ざわめきの中1人の男性の声が聞こえる。


よくよく耳を澄ませて聞けば、私の家名を連呼されてる。

えええええ、もしかしてこの声は手紙の持ち主本人様ですか?

周りの生徒が私に気が付いて、生徒達が私を通す為に少しずつだけど通り道が出来ていく。


ええええええ、こんな目立つ人道通りたくないです。

すでに引き返したいけれど、なんとかふらつく体を唯一動かせる左側で支えてる松葉杖でを動かしながらその道を通っていく。


痛いし辛いし、ふらふらするし、恥ずかしいし、断れないし、なんで私こんな目に合うのだろう。


つい漏れ出す心の声も流石にやさぐれます。


コツ ズル コツ ズル


そんな音を立てながら私は前へと移動をする。

でもとてもじゃないけれど、前は向いていられない頭がふらふらするので、頭をあげる気力がないのです。


「殿下私はここに居ります」


声の近さからして、あとすこしで王子殿下達の所につくのだろうと判断して先に私から声を出す。

じゃないと何時までも家名連呼されるとか恥ずかしくて敵いません。

普通の貴族としての場なら怒られるかもしれないけれど、ここは学園だし多少の事は許されるはずです。

そう思い込みます。


私の声に気が付いて他の人達も場所を開けてくれる。


沢山の人の中で、呼び出しを受けるとか、まるで断罪イベントみたいとか、何処か遠い目をしたい気分を味わいます。


「君が…………!」


王子殿下の前までたどり着いた私を見て、王子殿下は声の勢いが剃れ絶句して言葉を止める。

王子殿下の周りにいた、えーと多分宰相の息子様と公爵跡取り様と、殿下の後ろに殿下に隠れるようにこっちを見てた公爵令嬢様も同じ用に絶句して私を見てます。


「え……ええ……と……」


告げる言葉が思いつかないのか、言葉がとまどってますよ?

でも絶句するのも判ります、だって私も朝起きて鏡を見て絶句しました。

だってぶつけた顔が凄い事になってますから。

ぼっこり貼れて紫色ですよ、私女の子なんですよ、貴族なんですよ子爵令嬢なんですよ。

それでもこんな顔になっても、王子殿下からの呼び出しを断るとか貴族としてはやっぱり出来ないじゃないですか!


「君が、彼女と階段から一緒に落ちた?」


私と王子殿下の後ろにいる公爵令嬢様を何度も見ながら尋ねてくる


「いいえ、違います。

正しくは私の上に落ちてきたのです!!」


思わず力いっぱい返答をしました。


「もしかして私が突き落としたとか思われたのですか?」


なんとなく、呼び出された内容とさっき王子殿下が口にしようとした言葉を照らし合わせて思ったことを口にする。

そしたら、王子殿下達も少し、図星を付かれた様なあって反応をされて


「いや、その彼女が階段から一緒に落ちて手を怪我したと言うから……」


その言葉で、落とそうとした私も一緒に落ちて、公爵令嬢様に怪我を負わせたと思ったと言う事は理解できました。

王子殿下の影に隠れるように居る公爵令嬢様の手首に包帯が巻かれてるのが確かに見えた。

だってその手で王子殿下の服の裾を握ってこっちの様子を怯えるように見てるんですもの……。


それを聞いてみて、色々と限界が来ました。

頭はふらふらするし、怪我もずっと痛いし、好奇の目にさらされてるし、何より疑いを掛けられたし

そしてきっと熱で判断力も鈍っている、そう熱で判断力が鈍っているのです!


「疑いの疑惑で呼び出されるのであれば、私も聖属性の治癒魔法使いの恩恵を使い、この審議を国王に求める事を要求します!!!」


その言葉に王子殿下達の顔色が変わった。

でももうそんなの関係ないのです。

だいたいですね……


「だいたいですね、普段人に治癒魔法で散々治せ治せと頼っておきながら、人の上に落ちてくるわ怪我をしてる私を治す事無く『授業の一環以外の一般治療で治癒魔法は使うなと言われているので、申し訳ないですがその方を治す事は出来ません』ってどういう意味ですか!!!

お陰で熱もあるし、体はどこもかしこも痛いのに呼び出されてこん目に合わないといけないとか、私がなにをしたっていうんですかー!!!」


出せる限りの力で叫んだら、力が抜けてその場に崩れ落ちて思わず涙がぼろぼろと零れてきて


「うわーーーーん、もうやだーーーーー」


と盛大に泣け叫んでしまいました。

その後、私は倒れてしまい、先生方に寮に運ばれたそうです。

いえ意識が戻ったら寮のベッドの上で寮母様にそう教えられました。



この事件のあらましが国王陛下の耳に入り、私は王城内に勤めているよぼよぼのお婆ちゃんの治癒魔法により今は、顔も元に戻って体も痛くなくて、元気な健康体に戻りました。


公爵令嬢様は今はお咎めなしだそうです、意図してやった訳でもなく偶然の事故であるからだそうです。

王子殿下達は早とちりの為に起こした騒ぎだから、それなりに処罰があったそうです。どんな処罰かは知りませんが。


怪我を負わせた公爵令嬢には処罰がなくて、騒ぎを起こした王子殿下達には処罰があると聞くと、聖属性治癒魔法の恩恵の凄さを垣間見た気分です。


この恩恵やっぱり私の身には過ぎたる力、何があっても使いたくないです。


そしてそんな私の前に、王子殿下達は土下座をして謝ってます。

流石に女子寮の入り口では目立つからと、寮の裏側で話を聞きますと来ましたが、まさかの土下座謝罪ですよ!早とちりで疑いを掛けた件で、今まで謝罪が出来なかったからという事で。


上位権力者達が土下座をして謝ってるとか、凄くイヤですよ辞めて欲しいですよ。

なんで謝られる側が気を使わないといけないのですか、本当に勘弁して欲しいですよ。


「そんな、謝罪は受けますから!ですから顔を上げてください!」


王子殿下が顔をあげて、私と目が合いほっとしたような顔をしたかと思うと


「危ない!」


という声と同時に、私の体は一瞬で抱き上げられて王子殿下の体に守られるように抱え込まれる。

そして直ぐに、ドスンという音と共に私の居た場所に物が落ちてきた。


え?もしかして私、王子殿下が気が付かなかったら、死んでたかもしれないの?


その事に気が付いてサーって血の気が引いたけれど、布越しに感じる他の人の肌の体温で、あ、私そういえば今王子殿下に、守られて……。


ふぇ?え?ナニコレ、や、ちょっとまってください、王子殿下ってあれですよ?

もう見目麗しくて金髪だし碧眼だし、絵に描いたような王子様なんですよ?

私こういった顔の整った方との免疫ないのですよ?

だって最底辺扱いされてて、貴族同士の集まりでも色々と虐げられてて、そんな私に声を掛ける男性は居なかった訳ですよ?

男性免疫さえゼロに近いわけですよ?

クラスに仲のいい男性友達?

居るわけないじゃないですか、だって私は聖属性治癒魔法使いな訳で、誰かと一緒に魔法研究をする事もないので、仲良くなるきっかけなんてなかったのですよ!

大体公爵令嬢様に追いつくのに必死で、治癒魔法の事しか頭になったのですよ、だから今までも今もボッチですよ!!


そんな私を王子様が抱きかかえてるとか、しかも助けてもらったとか、ちょっと胸がときめいてしまうじゃないですか!


しかも短時間なのに何この格好をつけるような守り方、何様ですか王子様ですよね、流石王家の方は守り方さえいちいち様になりますね!!!

何処で身につけたのですかその技、是非見たいですね客観的な立ち居地でですが!


そんな私の様子とは裏腹に、宰相の息子様と公爵家跡取り様とが、私達の方に慌てて寄って来る。


私は私でそんなときめいた乙女心にうわわあああああーってなりそうになった時に


「申し訳ありません、手を滑らせてしまって物を落としたのですが、お怪我はありませんか?」


と上から声が降ってきた。

でもこの声……聞き間違いじゃなかったら公爵令嬢様の声で……。


私もだけど、王子殿下達も凄い青い顔をしたまま4人で思わず顔を見合わせてしまい

思わず4人で


「今の声?」

「いやでもまさか?」

「でもだって……」


とか互いにさっき聞いた声の主を誰か確認するかのように尋ねあい、いやーまさかね……ってなった所で


「大丈夫……でしたか?」


と建物の影からその声の主が姿を出した。

その姿は間違いなく公爵令嬢様で……。


私、階段から落ちたときあまりの痛さに、実は死ぬんじゃないかと思ったわけです。

これだけでも十分イヤなのに、さっきはまさしく死んだかもしれないので


「皆さんご無事ですか?」


と何事もないように、笑顔で私達に近寄る公爵令嬢様を見たときに、私は恐怖のあまりに殿下の首に抱ききました。


私も恐怖だったけれど、王子殿下達も同じように、もしあと少しずれてたら、もし気が付かなければの恐怖があり、王子殿下も恐怖のあまりに私を力を込めて抱きかかえ、後の2人も私と殿下に引っ付いてました。


どうしてあの人、平気そうに笑ってるんですか?

私を下敷きにして落ちたときも気にもされてなかったし、上から物を落とすとか、下に居る人が亡くなってもおかしくないのに、どうして笑顔で普通に声を掛けながら寄って来るのですか、この人なんなんですかどこかオカシクナイデスカ?


パニックと恐怖とで私の悲鳴は女子寮に盛大に響いたそうです。


その後日談、王子殿下達はやたらと私を気にかけてくださるようになりました。

生徒の方々も事件のあらましを知ってるので、私に声を掛ける色々の理由も知ってるわけでして、あなた子爵令嬢の分際でとか言われる事はありません。

まあ多分、聖属性治癒魔法使いの私にそんな事言う勇気のある人は居ないと思いますが……。


先生方も色々と配慮してくださって、私と公爵令嬢様が今後も同じクラスにならないように、授業もかちあわないようになってます。


「兄様たちには昔から言ってたのですが」


今私は学園の食堂件カフェテリアのテラスで、王子殿下の双子の妹君の王女殿下様と一緒にお茶を飲んでます。


「あの人ね、なんと申しますか、そうですね、歩く最悪の権現みたいなものですよ。

今までも散々、一緒にいた令嬢様方をうっかり下敷きにしたり、うっかりで大怪我させたりとされていて、誰も怖がって近寄らなかったのですよ」


ふーと息を吐きながら、王女殿下はお茶を口に含まれる。


「正直申してあの方の属性が聖属性でよかったと思ってますわ。

だって他の属性だとうっかりで、凄い大惨事にされそうでしょ?

その分治癒魔法なら、うっかりでも誰かが怪我とか死ぬことはありませんからね」


何それ凄く怖いのですが。


「そうそう、だから兄様達には、きちんと理由も説明して、危ないから近寄るなと申してたのですが、幼馴染とはいえ、そう男女で一緒に遊ぶ事は少ないでしょ?

大体は男子なら男子、女子なら女子で別れるものじゃないですか、だからあの方の起こしてた事件はあまりご存知ではなかったみたいで『大げさに話さなくてもいいじゃないか、そうならないようにきちんと見ておくよ』とか言いながらあの様ですからね。

本当に役に立たない方達です事。

だから今の現状は自業自得なのですよ、貴方が気にかける必要はありません」


私は、はあとか返事をしながら、ちらっと視線を動かすと、視界の端で疲れた顔で歩く宰相の息子様の姿が見えました。

それと同時に涙が零れてきます。


あの後から私はトラウマからか公爵令嬢様、王子殿下様、宰相の息子様、公爵家の跡取り様の顔を見ると条件反射のように涙が出るようになりました。


「あの方にやたら治癒魔法を掛けさせられたそうですね。それも理由がありましてよ。

あの方自身でも無駄にやたらと怪我をされる方でして、見かねたお父様が治癒魔法での治療を認められたのよ。

だから自身が治癒されるのには気にしないけれど、一般治療として他人を治癒する理由が判らないのですわ」


流石公爵令嬢様、権力のある立ち位置だから大事にされてた訳ですね。


「まあ精々兄様達は自業自得の立場ながらも、あの方を見張る事で自身の身を守るすべを高めれば宜しいのよ」


なんというか、王女殿下は悪そうな笑みを浮かべながら私の後ろに視線を向けます。


「そういう訳でして、兄様この方の身の安全の為にも頑張ってくださいね」


驚いて振り返ると、やたら疲れた顔をしながらも苦笑いを浮かべる王子殿下が私の後ろに居ました。

一度止まりかけた涙がまたぼろぼろと零れてきて、王子殿下が慣れた手付きで私にハンカチを差し出してくれます。

私もそれを当たり前のように受け取ります。


私のハンカチさっきのですでにグショグショなので助かりました。


王子殿下達も、他の生徒達も最初は戸惑ったり驚いたりされてたのですが、私が泣くのは今では当たり前の光景のようになってしまいました。


王子殿下達の処罰は公爵令嬢を見張る事だそうで、今でも殿下達3人は交代で公爵令嬢様と接しています。

公爵令嬢様がこれ以上誰かを怪我させないようにという処置だそうです。


王子殿下達も私が泣くので、最初は会うのを辞めようかと申し出てくれたのですが、私が断りました。


廊下ですれ違ったり、食堂であったり、学園の玄関で会ったり、とりあえず私の視界に姿が入るだけで、私は泣いてしまい、今では『泣き虫治癒令嬢』という不名誉なあだ名がついてしまいました。

それのトラウマを克服する為にも、あえて王子殿下達と会ってる訳です!


後は公爵令嬢様の側に居るので、油断して怪我も結構されるので、私が治癒してるのもあります。

今年の魔法薬のストック切れも、この公爵令嬢様に巻き込まれて怪我をされた方が多かったみたいで、その治療でなくなったそうです。


保健の先生も私も、てっきり魔法授業の事故の方だとばかり思ってたのですが、そのうち半分は公爵令嬢様のせいだそうです。

聖属性治癒魔法使いによって怪我をさせられるってだけなら、まさに思い出した設定通りですね。


今は王子殿下達も私と居る事で、私と公爵令嬢様との鉢合わせ回避も兼ねてるそうです。

お陰で事件直後よりも見かけなくなりました。

そして3人が私の側に居れない時は、王女殿下様がその穴埋めをしてくださってます。

正直言うと大事にされすぎて申し訳なさ過ぎます。






このままいけば最底辺は回避出来るので、次はこの不名誉な

『泣き虫治癒令嬢』

のあだ名を挽回させてもらわないと!!


私が心に決めてぐいっとお茶を飲み干してましたがその光景を殿下2人が


「何か違うと思います」


といいながら見てたそうです。


え?心の声漏れてました?

本来短編予定だったんだぜ

まさか3話分に分ける羽目になるとは思わなかった

何を言ってるか(以下略



こんなアホでポンコツで明後日な話を楽しんでいただけたなら幸いです。


悪役令嬢は公爵とか侯爵が多いので、じゃあ下の方の子爵とか男爵にしてみようとか、とりあえず誰も断罪されないエンディングを目指そうとか、不名誉なあだ名をつけてみたいな、とか私の変な発想の元で突っ込まれたお約束ネタ。

目を通してもらえただけでも感謝です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ