そして物語は始まってました
とりあえず寮に戻ってから、この私の持つ特権は悪用しない、むやみやたらと人を傷つけて直して脅すという事をしない、そして公爵令嬢様には近づかない。
私はこの3つだけは何があっても守ろうと心に誓いました。
でも明日から本格的に魔法授業が始まるというので、ちょっとワクワクしてしまいます。
授業内容は主に4つ
魔力のしくみについてと、魔法の使いかについて、魔法特性についてと、そして大事な基礎体力作り。
魔力のしくみについては、己自信の魔力を知り魔力を高める事で、その魔法の効果を高める為に
魔法の使い方については、繰り返し魔法を使うことで最終的には詠唱なしでも自在に魔法が使えるようになる為の特訓
魔法特性については、自分の属性魔法と他の属性魔法がぶつかれば、もしくは合体させたらどんな魔法になるかを自分達で発明研究する為の時間。
基礎体力作りは、いざって時に動けませんでは困るから、最低限の体力だけでもつけましょう
ちなみに男性だとこれに武器の練習も含まれます。女性も希望すれば可能です。
何でここまでするかと言えば、この世界は魔獣が存在してて、常にその魔獣と戦っているから。
特に魔獣が大量発生したりしたら、国家滅亡の危機にもなるので、それを未然に防ぐ為の防衛の為にも、貴族が市民を守るためにも我が身を盾として戦う為に、魔力持ちの貴族+市民を鍛える為にあるのがこの学園な訳です。
魔法があるとないとでは、魔獣への対抗手段が格段に変わるそうです。
その中でも数少ない癒し魔法の使い手がいると、傷ついた兵士達を癒すだけでも戦力に格段の差が出るから貴重な訳です。
上下身分関係なくとか寮内生活も全部、この魔獣と戦う時に知ってるもの同士ならいざという時は連係出来るし、同じ戦場で戦う仲間になるからこそ、早めに互いの事に慣れるためとか、戦場での団結力の為に今からそれを育てようというのもあるそうです。
そして授業が始まり、速攻で一つの誓いが守られない事を悟りました。
魔法の使い方の授業は、その属性の生徒だけを集めて行う授業なのです。
だからイヤでも一緒になる訳です、その公爵令嬢様と……。
考えれば判るのに、どうして私は最初で気が付かなかったの!
属性魔法の人達と集まるわけで、それ専用の教室に移動して、先生が来るのを待ってたら、教室に入ってきた公爵令嬢様を見たときは心臓が止まるかと思いました。
私の最底辺フラグの人が来ました!という意味で。
落ち着くのよ、普段の教室の位置も違えば、クラスも違うので早々会うことはこの授業意外ないはずだから、この授業中は仕方ないとしても、他の時会わないのなら問題ないはずよ!
そう何度もいい聞かせながら、互いに挨拶も終わらせて、先生の話を聞きながら実際に実技を行うわけです。
保護されて傷ついた動物を癒して森に戻すそうで、最初はそういった動物の治癒から始まりました。
私も公爵令嬢様も同じ位の治癒力でしたが、魔力授業の内容も進みどんどんと回りも魔法の力があがり始めた頃に、私と公爵令嬢様の治癒に差が出始めました。
私はある一定のラインまでは治せても、それ以上治せない、それに対して公爵令嬢様はどんな大怪我も治していく。
同じ治癒なのに、こんなに差が出るなんてと、それが判明してから非常に落ち込み、だから私は自主学習としても魔力を高める勉強に力を入れ初めて、その差を埋めようとやっきになり始めました。
だって公爵令嬢様の方が爵位も上なら、聖属性魔法使いとしても上になる訳で、そうなったらきっと周りの人達が私を指差して
『同じ治癒使いでも、あいつ下なんだな』
とか言いそうで怖いじゃないですか、今まで散々底辺扱いされた弊害か私はその位置にまた戻りたくないと必死でした。
本当は治癒魔法は日常生活では人に使ってはいけないと言われてて、その理由は人は本来怪我を治す力があるのに、なんでも治癒魔法で治すとその本来の力が落ちてしまい、自己治癒をしなくなるからだそうです。
動物を回復させて自分の魔力度合いを測るにも、怪我をしてる動物が頻繁に現れる訳ではないので、私は色々な先生方に頼み込んで、保健室で怪我をした生徒の治癒をする事で自分の力量を測る事にしました。
簡単な怪我ではしません、魔法授業の時に力加減を誤ってしまい大怪我をした生徒とか限定です。
それでも私の治癒度合いは変化が訪れず、段々と悲しくなってきました。
今日も防ぎきれずに大火傷をした生徒が運ばれてきて、通常なら魔法薬である程度までは治すのですが私が魔法を掛けて治しました。
全身酷い大火傷を負ったその生徒に魔法を掛けても、皮膚がただれすぎて肉まで見えていたのが、水ぶくれのように腫れてるまで戻り、それ以上は効果がありませんでした。
保険の先生は、ここまで酷いと魔法薬でも完全には治せなかったけれど、ここまで治してもらえたら後は魔法薬で補えるから助かったわと褒めてくれたけれど
私からしたら、公爵令嬢様なら完全に綺麗な状態に治せれたのにと落ち込み、大火傷を負った生徒にもありがとうと言われたのに、うわべな言葉なんてと素直に受け取れなくなってました。
何度も悔しくて枕を濡らしながら過したある日、私と公爵令嬢様の魔力値は似たり寄ったりなのに、その効果に差が出るのが不思議で仕方ないから、国に掛け合って治癒魔法の事に付いて何か記録がないか調べて貰ったら、過去に私と同じように治癒の効果は浅いけれど、それに反して広範囲に渡って大人数を癒す使い手が居たそうです。
その結果から私の治癒魔法を調べた所、私も広範囲治癒魔法だという事が判明しました。
魔力値が上がれば上がるほどその範囲は広がり、公爵令嬢様は魔力値が上がれば上がるほど、その治癒効果が高まるそうです。
私と公爵令嬢様は同じ治癒でも対極な関係だったのです。
それからは授業内容が変わり、私も公爵令嬢様も別々の治療院に行き、そこで魔法を使うという方法になり顔を合わせる事もなくなりました。
このまま行けば当初の目的通りに、もう公爵令嬢様と顔を合わせることがなくなる!
と喜んでいたのも束の間……やたらその公爵令嬢様が私の前に姿を現すのです。
こけて手首を捻挫したので治癒を掛けて貰えないかとか、基礎体力の授業で使ってた武器の使用を誤って怪我をしたので治癒してもらえないかとか、木登りしたら落ちたからとか、ガラスが割れて深く手を切ってしまったからとか……最初は断ってたのですが、あまりにも粘るので仕方なしに魔法を使用してました。
自分で治せたら一番良いのでしょうが、治癒魔法の弱点は自分の怪我は自分では治せないのです。
でもやけに怪我をしては私の所に現れるので、なんででしょう……と考えて思い当たったのが、原作の私の行動です。
私は周りの人達をわざと傷つけて癒し脅す事をしてましたが、今回はしてないので公爵令嬢様はもしかしたらこの話の事を知ってて、私が何も行動を起こさないので自分で自分を傷つけて私に癒してもらう事で原作と似た行動を取ってるという、なんというかややこしい様な、ややこしくないような、でもその通りだとしたら非常にマゾイですよね公爵令嬢様……というなんとも言えない想像に辿りつき、今までうやむやでも治してたからこうなったんだ、次からはきちんと断ろう!と心に決めて数日後に、また公爵令嬢様が怪我をされて治癒の申し出に来たので、きっぱりとこれで最後次からは治癒しませんと断りました。
これでまた怪我をしたら、私の想像通りかもしれないし、違ってても大人しく保健室へ怪我を治しに行くかもしれないし、と思いながらウキウキと廊下を歩いてました。
近々学校内で発表会のような、魔法のお披露目会があり、属性持ちの方々は同じ属性もしくは他の属性の人達と協力したりして、自分達は今こんな事が出来ますという研究内容とかの発表をする為の練習に明け暮れてて、その練習風景がとても真剣ですが楽しそうで見てるこっちがワクワクしてしまうのです。
私は参加出来ないのでそれを眺めながら廊下を歩き、階段に差し掛かり降りてる途中で背後から
「あっ!」
と声が聞こえて、え?って思った時には後ろからすごい衝撃が着て、顔から下へと私は落ちてしまいました。
とっさに顔を庇ったけれど顔を庇ってたほうの腕が、直ぐに肩の激しい痛みとともに力が抜けてしまい何度も階段に顔をぶつけてしまい、下に落ちた時には全身何処もかしこも痛い上に何故か重くて動けない状態になってました。
「きゃっ!申し訳ないわ大丈夫ですか?」
私の上から声が掛かり、誰かが私の上に乗ってるから重い事に気が付きました。
でも痛くて何も言えなくて、ただ
「…………うう……」
と呻き声を漏らせば
「直ぐに先生を呼んできますから!」
と私の上から重みが動く気配が伝わると直ぐに、足に激痛が走り
「きゃあっ!」
という再び女性らしい悲鳴と同時に
「――――――――――!!!!」
悲鳴にならない私の声が出ました。
どうやら私の上に乗ってた人は私のまだ階段に乗ってた足を踏んだみたいで、そのせいか足になんとも言えない痛みがあり、私は身動きできませんでした。
私の上に乗ってた人は私の足を踏んだ弾みで、またこけたのかなんかそれっぽい音が聞こえました。
なんとか顔を動かして涙目でぼやけてる視界の中、その上に乗ってた人を見極めようと見たら
公爵令嬢様でした。
え?公爵令嬢様なら魔法掛けてよ!貴方ならこの怪我一発で治せるでしょ?!
と思ってそう言おうと声を出そうとしたけれど、痛みで全然言葉が出なくて、そうこうしてるうちに公爵令嬢様は姿を消しました。
大慌てで担架を持った先生方が現れて、私は保健室に運ばれて、非常に申し訳なさそうな保健の先生に
「最近発表会の練習に力を入れた者達を治すのに薬が切れてしまってて……」
といわれました。
昨日までは私もその治療をお手伝いをしてました。
でも今日私が居ない間に大怪我をした人が数人現れてしまい、予想以上に薬を使ってしまい在庫が切れたそうです。
普段ならこの時期は在庫がもっとあるけれど、何かの手違いで今年は薬の数が少なかったらしく薬での治療が出来ないと言われました。
治癒薬も非常に高価で生産量が限られているので、使える場所はこの学園か王城のみに限られてるそうで今は王城の方へ薬の要請をしてる最中で早くても数日後になるそうです。
そして今、公爵令嬢様に治癒要請をしてるそうですが
『授業の一環以外の一般治療で治癒魔法は使うなと言われているので、申し訳ないですがその方を治す事は出来ません』
と断られたそうです。
『もしも治癒魔法を使えと言うのなら、私は恩恵を行使してでもお断りさせて貰います』
まで言われたそうです。
…………散々人に使わせておいて、しかも公爵令嬢様が原因の怪我なのに断るとか、お前何様だよ!!
と私は激しい怒りが込み上げてきました。
保健の先生の通常処置で、私の肩は脱臼をしてて、それははめて貰えましたが(凄く痛かったですが)肩も激しくぶつけてあって動かすのは良くないと言われ、そういった補助器具で固定され、踏まれた足は骨折をしていて、それも薬が届くまではという事で、同じように骨折治療用の器具で固定さました。
顔も凄く腫れてしまい、それは冷やすしかないからと氷嚢で冷やすだけをする事に。
咄嗟にかばって動いたのが利き手だったのもあり、利き腕は肩固定で使えなくなり、踏まれたのも右足だったので、なんとか動く左側で松葉杖を使いながら動く事になりました。
痛み止めの薬を飲んでもあまり痛みは引かずに、逆に骨折に脱臼にと怪我をしたせいか私は熱も出てしまい、先生に支えながらも何とか寮のベッドに辿り付けて、倒れこむと同時に寝込む羽目になりました。