表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/11

故意がなせる業

最初はチェルシー視点、後半がフォール視点になります。

お告げを受けるのに体が慣れたからか、それとも感覚がつかめたからなのか、私は最近はその身にお告げが降りる前にカイン様達に合図を送れるくらいの余裕が出てきてました。


だからなのか、今、この身に降りてくるお告げに我が身を奪われそうになるのを堪え押さえ込むことに必死になりました。


このお告げはあれです、私の意識が完全になくなり、何かの大規模で起きる混乱を防ぐほうのお告げです。

今までの縁を結ぶ為とかの、公爵家としての能力の方ではありません。


今この大規模魔獣討伐の最中に私の意識を失う事はしては駄目なのです。

まず回りに私の動きを止めれる者が今は居ないのと、それによって起こされる事故を私の意識がない間に行われたくないからです。


次こそこのお告げを私自身の力と意思で行えるようにならないとと、奪われそうになる意識を集中させます。

嫌です、こんなのは嫌です。

降りてくるお告げにあまりの恐ろしさに体が震えそうになり、これなら意識を奪われた方が良かったのではないのかと一瞬頭を過ぎりました。


でも駄目ですそれじゃ駄目なんです、私はこの力をきちんと使いこなせるようにならないと、周りの者を振り回すままでは駄目なのです。


支配しようとする者から抗う力と、そのお告げの内容とで、私はその場で膝を崩してしまい、肩で荒く息をしながら、いつの間にか顎を伝い滴り落ちる大量の汗を手で拭いました。


「ユリウス様をユリウス様!!誰かユリウス様を呼んでください!」


私の呼び声に反応して誰かが呼びに行かせたのか、私が歩きながらユリウス様の名を呼び続けていると、こちらに走ってくるユリウス様の姿が見えました。


私の意識を奪おうとしたお告げの内容というか、取ろうとした行動は、私が前線で守り結界を張っているユリウス様を後ろから突き飛ばして、わざと魔獣の攻撃を受けて治癒を受けて念の為にと後方の支援部隊の所に回される内容でした。


ユリウス様を支援部隊に置く為に取った行動みたいでした。

なんと危なく、そして前線を混乱させる行動なのだろうと、その意識を奪われたときに取る行動に我ながら身が震えます。


「お呼びと聞きましたが何でしょう?」


きっと前線に居たのを私が呼んでるからと、急いできたユリウス様の表情は非常に戸惑っていました。

今までの付き合いで私がこうやって呼ぶことがないので、ユリウス様もどういった反応をしていいのか困ってるのでしょう。


「命令です今すぐ後方支援に周って下さい」

「いえ前線の結界の維持の為にも動けません!」

「言ったはずですこれは命令なのです!急いで後方支援部隊に行ってください、間に合わなくなります!」


どうすればいいのか判断に戸惑うユリウス様を見て、私は一度目を閉じて深く息を吸って、吐き私の気持ちを一度落ち着かせました。

私も焦って話すからユリウス様も判断に困ってるのだと思うことにしました。


「聖属性治癒魔法の恩恵を行使し、チェルシー・エドマスが命じます、ユリウス・アルティアは今から後方支援部隊に赴き、その力を持って後方支援部隊を魔獣から守りなさい。

今、それが行えるものは今は貴方しか居ません!」


そう今、前線は魔獣部隊との戦闘が拮抗していて、これ以上の戦力は減らせれないので、後方支援部隊の所に魔獣が現れるとしても直ぐには向かわせれない。

私がここ前線の近くで治癒をしているのも、即戦力の者を直ぐに戦場に戻す為です。


今は後方に回っている範囲治癒魔法を使うリルティア様の周りは、救援物資や、即戦力ではないけれど戦いで傷ついた者を中心に、この前線が落ち着いたら入れ替わりで防衛に入るために休憩を取られてる方達です。


その後方支援部隊の所に魔獣が押し寄せる為に、それを防ぐ為にお告げは私にユリウス様を後方に下がらせようとしていました。

私の恩恵を行使した命令により、ユリウス様はわかりましたと返事をされて、緊急用に置いてある馬を使って後方部隊へと向かいました。


もう馬は使ってしまったので、自力で行くしかないけれど、私はここの事を他国から応援で来ている、私のお母様と変わらない位の治癒魔法を使われる女性の方にお願いして走り出しました。




――――――――――――――――――――





「このまま炎属性の攻撃続け!」


僕の掛け声とともに、炎の魔法により前方の魔獣が焼かれていく。

その残った魔獣たちを接近を得意とする者達が手に持つ武器にそれぞれの得意とする魔法を載せて魔獣に武器を突き立てる。


魔法を攻撃として使うのは大体が、全体に攻撃を与える詠唱魔法と、武器にその属性を載せて敵を切る方法が多い。

詠唱魔法攻撃だと、全体に攻撃が届く分魔力消費が激しい為に、あまり連発は出来ない。

逆に武器に属性を載せての攻撃だと的確に弱点を突けば、少量の魔力消費で済む。

大体が魔力が多い者が魔法詠唱を得意とし、体を動かすのが得意なもの、もしくは魔力量が少ない者が武器を使う事が多い。


僕は魔獣の魔力の流れを読み、この場に居る魔獣の弱点の多い属性の魔法攻撃を命じながら、前線を維持していた。


今まではただ、前に居る魔獣に皆が皆思い思いに魔法を打ち込み、武器を使い攻撃をしていく、そういった戦い方をしていた。


けれども、僕はこうして前線に立ち、魔獣を見ることで魔獣の持つ魔力にも、属性という物があり、属性があるという事は、その弱点となる属性を持つという事でもある。


火は水に水は風に風は土に土は火に弱いという流れがある。

なので僕はその魔獣の魔力の流れを読みその弱点を的確に狙ってい行けば問題ないはずだ、そう思って任されている部隊の指揮を取る事にした。


適当に魔法を打ち込み戦力を消費するよりは、多少でも弱点を突くのが効いてるのか、拮抗していた前線は少しずつだけれど、こちらが有利になってきた。


魔獣は満遍なく全属性が均等に居るわけではなく、多少の偏りがありその中に別属性が混じっている事もあるけれど、その弱点属性をつけるこちらの攻撃は有利だったみたいで、その数はどんどん減っていった。


このまま行けば、ここはこちらの勝利で終われる、そう思い始めた頃に後方支援が魔獣の襲撃を受けて分断されたといわれた。


ここに来る前に彼女が所属している後方支援部隊には、彼女達が担当する位置は魔獣の魔力の流れが不穏だったから、念の為にそこから移動しておくように命じていたのにどうしてと、いやもしかしたら彼女達とは違う後方支援部隊かも……と思案しながらも、その所属部隊の確認を急いでした。


「兄様、リルティア様が所属する部隊ですわ」


情報を集めた終わったのかいつの間にか側に来ていた妹が告げるその言葉を理解するのに一瞬時間が掛かった。


「場所に移動命令を出してあったのにどうして……」

「どうやら別の司令官により現状位置のままで居るようにと命令が下されたそうです。

今までの経験でそう命令を出してしまった為に、今回の事は予測不能だった為に申し訳ないと謝罪はされてましたよ」


という報告を聞きながら、今どうやってこの前線から後方支援部隊の援助に向かうかに考えを巡らせる。

一番な正当理由として、僕の担当部下に当たるから直接上司として迎えに行くという理由が仕える。

幸い今僕が維持していたここは、もう問題はないだろうから動けれる。


問題があるとすれば、分断された後方支援部隊の位置と、其処にどうやってたどり着くかだ。

うかつにこちらが助けるのに攻撃をしては巻き込みかねない。

後は今ここの指揮を取っている僕がここを離れていいかどうかだけれど……。


「フォール殿下!」


ここに居ないはずのチェルシー令嬢の声に思わずそちらを見る。

走ってきたのか、肩で荒く息をしながらも、何か強い意志を持った瞳で僕を見ている。

彼女のこんな強い目は、一緒に居るようになってから始めてみる。


「聖属性治癒魔法の恩恵を行使し、チェルシー・エドマスの命により

フォール・マルクト及びファリス・マルクト両殿下はこれより、魔獣により分断された後方支援部隊とそれに所属するリルティア・リウドルの救助を命じます」


驚いた顔をしている僕達を見て、チェルシー令嬢は笑いながらも頷く


「先にユリウス様を送り出しました、多分結界での防衛に回られてると思います」

「命に従いこれより後方支援部隊の救助に向かいます」


僕とファリスは返事をして直ぐにその場から離れた。


「両殿下が戻られるまで、前線はこのまま維持しますよ!

私達が今まで培ってきた、努力と結団を見せるときです、指揮官が居なかったからという泣き言は許されません!」


背後からチェルシー令嬢の力強い言葉に、残っていた学生達の返事が聞こえた。


「彼女変わられましたね」

「カイルのお陰か結構前向きな考えに変わったよ。

あと今会ったの事で確信した、彼女はあの力を扱えるようになっている」

「そこまで判るのですか?」

「彼女が迷いない行動と確信に満ちた目をしてたからね、だから後方支援部隊も絶対に助かる」


それに僕は守ると誓ったから、例えこの身がどうなろうとも助ける。

ファリスと手を握り2人で魔法発動させるための呪文を唱えていく。

ファリスの水魔法の力で下から上に押し上げて、一度上空まで飛ぶ。

その水魔法が回りに分散しないよう、上までの道を僕も風魔法で作っていく。


一度上まで飛ばされて見下ろす先に見えるのは、魔獣により囲まれた二つの固まり。


「二つに分かれていますね」


その言葉に頷きながらも、僕の視界は一つの魔力の流れを捉える。


「あっちの小さい方に彼女は居る」


落ちる速度を魔法の力で緩めながら、そしてそちらの方向に向かうように誘導しながら魔法を幾つか発動させていく。


「ファリス頼む」


僕の言葉にファリスは真下へと水魔法を叩き付けた。

固まり集まって密集してる中に僕達2人が降りる場所がないので、魔獣を無理やり水魔法で叩き潰す事で其処に場所を作った。僕達はそこに下りた。


チェルシー令嬢の言葉だとユリウスが先に来てるというけれど、ここにはその姿が見えないので、もう一つの囲まれていた固まりにユリウスが居るのだろうと検討つけながら、僕達はそちらの方へと移動をする事にする。


ここに居る者たちは皆、防御を得意として攻撃は不得意に者達ばかり。

だからさっきみたいに、大体の攻撃では少しずつでも先に進む事が出来ない的確に弱点を突くしかない。

ファリスもその事に気が付いてるからか、周りの者達に声を掛けながらも心配そうに僕を見る。


魔力の流れを見るのに意識を集中させる、何時もなら視界が直ぐに色々な色で覆われてしまい、魔力の色により酔ってしまうからとした事がないけれど、今はそんな事は言ってられない。

僕の出す命令により一匹一匹確実に弱点を突いて倒していく。

水属性と風属性の時は僕とファリスもその力を篩い確実に魔獣の数を減らしながら移動をしていく。


途中でユリウス達とも合流を果たして、人数が増えた事によりさっきよりは早くなった殲滅スピードに少し安心をしながらも、魔力を見ることに力を使いすぎたのか、少し視界がおかしく感じながらも、何度も瞬きをしながら目の焦点を凝らして、今居る皆を無事に安全な所まで着くまではと前を見続ける。


そうしているうちに、前方に居た魔獣の数も魔力の流れも変わり始めてて、僕達とは別で……後方支援部隊の救助に来ていた部隊と合流をして、無事に安全な所にたどり着けた。


無事にたどり着き、魔力を使いすぎたからか、どこかふわふわと足がきちんと地面に着いてるのか、ついてないのか曖昧な感覚のまま、周りに居た者達からお礼の言葉を言われながら、同じように僕のところに声を掛けにきた彼女と顔を合わせた。


「王子殿下王女殿下、お2人のお陰で大半の者達は助かり……」


緊張からほっとしたのか、言葉を詰まらせて泣く彼女を見ながら、なんというか凄く懐かしい気持ちになった。

何時だって彼女は泣いていたから、その泣く彼女にあの時と同じように、癖で身につけてあるハンカチを差し出せば、彼女は笑いながらも受け取ってくれた。


「殿下達のお陰で無事に助かりました、本当にありがとうございます」


頭を下げる彼女の姿に、良かったと僕も嬉しくなり口元が緩む。

あの時上空から彼女達を見つけたとき、危機一髪というほどの危険な状態ではなかったけれど、救助部隊が来るまで間に合うかと言えば、間に合わないかもしれないという、危うい均衡状態だった。

間に合って良かった、守れてよかった、そう思いながら思わず彼女の顔を、頬を撫でてしまいそうな手に気がつき、誤魔化すように彼女の頭を撫でた。


「本当、君が無事で良かった」


そう言葉にした所で僕の意識はなくなった。






「か、顔を、あわせる度に、ないてば、かりで……」

「いいよ、それは僕達のせいなのだから君が責任を感じる必要はないよ。

やはり君の護衛は他の者に任せたほうが……」

「いいえ!それだと、学校に、居るあい、だはいいですが、社交デビューして、からもこの状態だ、と、殿下達の顔を、見るたび、泣いてたら、私の沽券に関わります!」


最初は僕達のせいで、僕達の勘違いが起こした騒動に巻き込まれてしまい、泣いてばかりいる彼女をそれだけ傷つけてしまったのだと、だからもう何があっても、これ以上傷つけないためにも守ろうと思っていた。


彼女がやはりトラウマの為にチェルシー令嬢と極力顔を合わせたくないというので、父である国王からのチェルシー令嬢の動きを監視しろという命令を、僕達は都合の良い様にそれを受け取り動いていた。

この時はまだチェルシー令嬢の能力の事とかも知らなかったから、チェルシー令嬢から彼女を守るものまた、チェルシー令嬢の行動の監視の一環だというこじ付けを無理やりつけた。


僕達と顔を会わせる度に泣きながらも、それを克服しようとする彼女が少し面白くて、変な子だなと見ていた。

たまに聞こえてないと思っているのか、漏れる言葉の「底辺回避」の意味は今も結局判らないままだったけれど「名誉挽回」「この不名誉なあだ名脱却」と言いながら、僕の顔を見るたび泣く姿に、内心無理じゃないかな?とも思えてた。


だんだんと顔を合わせた時に泣く時間が短くなり始めたある時


「王子殿下見てください、私今泣いてませんよ!」


嬉しそうな彼女の初めて見る笑顔に、ああ、可愛いなと思った。

必死に頑張った彼女が見せた努力の姿だったからこそ、そう胸に入ってきた。

そう笑った後に、ぽろっと涙が零れて、思わず僕が笑ってしまい、彼女は


「こんなはずじゃなかったのに!」


と焦っていたけれど、いつの間にかそういった姿をもっと見たいと思うようになっていた。


「殿下達は私の護衛に為に側に居てくれてるのかもしれませんが、私実はこんなに長い間誰かと一緒に居るの初めてなんです!

領地に居たときは諸事情であまり周りの方達と仲良くなれなかったので、誰かと一緒にこうやってお茶を飲んだり、お話しするの実は憧れてたのです」


殿下達のお陰で夢が一つ叶いましたと言われた時は、どうしてファリスも一緒なのだとちょっと落ち込んだ。


「兄様、リルティア令嬢とお付き合いに私は反対しませんわよ。

爵位は確かに低いですが、逆に聖属性持ちが王族に加わる事は有利になるので、反対意見など出ないと思うので、さっさとお付き合いをされては如何ですか?」


ファリスにそう言われた時は、僕の心はそこまで筒抜けなのかと思ったけれど


「伊達に長い間双子はやってませんよ、私も一緒ですから周りに気づかれてる方は居ないと思いますが、ああ見えてリルティア令嬢は『癒しの聖女様』と呼ばれてて人気ですのよ。

他の方に掻っ攫われても知りませんわよ?」


相変わらずの妹の情報通に少し驚いてしまう。

その癒しの聖女様も今初めて耳にしたのだけれど何時から流れていた噂なのだろう、それとも僕が噂に疎すぎるだけなのだろうか?


「リルティア令嬢は広範囲の治癒魔法を使われるのですが、魔法発動時にリルティア令嬢の気持ちが乗ってるのか効果範囲に居る者たちは皆、心に気力や暖かさが沸くそうですわ。

何時も笑顔で接してくださり、魔法から溢れる優しさに信者が多いそうですわよ」


僕の様子を伺うようにファリスは見るけれど、僕は気にしてないように言葉にする


「溢れる優しさか、判る気がするよ、彼女はあんな事をした僕達を許して、克服の為と言いながら側に置くくらいだからね。

幾ら僕達の方が立場が上だと言っても、彼女の方が恩恵があるから上になれるのに、そういった事をしない。

それにいいと思っているよ、他の誰かに攫われても、その人が彼女を幸せにしてくれるのなら。

僕は彼女を傷つけた側の人間だからね、彼女を守る資格はあっても幸せにする資格があるとは思ってない」


笑いながらそう告げる僕の顔を見た妹はとても悲しそうで…………




周りのざわめきの音が耳に入りフっと意識が目覚める。

視界に写る景色は何処かのテントの中なのか、一面の白い布が目に入り、ああそうか確か後方支援部隊の救助に周って……と少しずつ何があったのかを思い出し、ゆっくりとその体を起こした。

起こしてまた周りを見回すと、他には誰も居なくて僕の姿を見ながら涙を浮かべている、彼女の姿が目に入った。


「良かった殿下気がついたのですね!」


僕に抱きつくながら泣く彼女の姿に、これはさっき見ていた夢が、僕の都合のいい夢となり見せてるのかと思ったけれど、ゆっくりと彼女の背中に腕を回してみたら、確かに腕に伝わる彼女の温もりに夢じゃないんだと感じさせた。


泣く彼女が落ち着くまで、彼女の背中をゆっくりとあやすように叩きながら頭を優しく撫でてやる。

どれくらいかそうやっていたら、落ち着いたのか彼女が恥ずかしそうに慌てて僕から離れて、感じていたぬくもりが消えてしまい寂しく感じる。


「あ、あの、気が動転してしまって、殿下の方がお疲れなのに……」


倒れる前から続いてるふわふわとした夢見心地のような感覚がまだ続いていて、やっぱりさっき感じた体温は気のせいでこれは夢なのかもしれないという気持ちにもなってくる。

そんな僕の様子をうっすらと頬を赤らめて見る彼女に、可愛いという思いと、ここで手放さないと駄目だという思いが溢れてくる。


「いいよ、ずっと僕が気がつくまで側に居てくれたの?」

「あ、はい」


今まで触れずに居た彼女にさっき、一度触れてしまったから、我慢できていた感情が箍を外しそうになる

だからそれを堪えれるうちに僕は手を離す。

そう心に決めて僕は言葉を口にする。


「リルティア・リウドル子爵令嬢、僕が貴女にこんな事をいう資格はないかもしれないけれど、どうして伝えておきたいんだ」


一度言葉を区切り、彼女の方に視線を向ければ、大切そうに手に握る僕のハンカチが目に入り、少しだけ心が解れてくる。


「こんな時にこんな所で伝える言葉ではないと思うけれど、僕は君の事が好きなんだ。

今までも側で守ってきたけれど、これからもずっと僕の側に居て君を守らせて欲しい」


僕の言葉に、見たこともないくらいに顔を赤くしながら


「私もずっと殿下のそばに居たいです」


という恥ずかしそうに告げる彼女の言葉を聞いたときには、すでに体が動いていて、抱き寄せて伝わる彼女の体温と、彼女が僕の背中に回した彼女の手の感触に、ずっとふわふわとしていた感覚が、やっと足が地についたように止まった。

これにて本当に完結とさせて頂きます。

最後までお付き合いありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ