FAお礼短編「「魔法少女フェフ」to さちはらさん
FAをくれた"さちはら"さんへ捧ぐ。
自作「僕の妹はバケモノです」の夢衣ちゃんを描いてくれたお礼を。
小説を書き始めた頃から感想をくれ、勇気と元気を貰ったことに最大の感謝を込めて。
"さちはら"と呼ばれる人物は、その胸中に不安を募らせてある人物を待っていた。
待ち人の名前は鹿角フェフ。本日は彼の作品にファンアートを送ったお礼をしてくれるとの話であったが……。
さちはら氏は軽く顎に手を当て、眉を顰めてこれから起こるであろう出来事に思いを馳せる。
今回の事柄について予定を合わせる時の話だ。
どんなのが良いか? という不安しか抱かない質問に対し、いつもどおりで良いと応えた。その時のやり取りが今になって思い起こされたのだ。
果たして自分の言葉は正しく伝わっているだろうか?
湧き上がる不安でそわそわと落ち着きなく待ち合わせ場所の公園をうろついていると、どうやら時間になったらしく遠くの方からこちらに駆けてくる人物が見えた。
「さちはらさぁぁぁぁん!」
鹿角フェフは、当然の様に魔法少女ルックでやってきていた。
(だからいつもどおりでいいってお願いしたのに!!)
幼女という約束は何処にいったのやら、完全におっさんルックにピンク色のひらひらした魔法少女衣装に身を包んだ鹿角フェフ。
彼は何故かこれみよがしな内股で器用に走りながら、周囲の注目を一身に浴びてさちはら氏の前までやって来る。
「おまたせしました、さちはらさん! 待ちましたか?」
「いえ、待ってないですけど……フェフさん、それはなんですか?」
滅茶苦茶突っ込みを入れたいが、ここでそんなことをしては相手を調子づかせるだけだ。
そう考えたさちはら氏は、至極冷静に鹿角フェフの相手をする。
「ええ、実はさちはらさんに喜んでもらうために、今日は魔法少女のお誘いをしに来たんです! ――っと、はい、これ」
「…………? これは、宝石?」
鹿角フェフから手渡さたそれをしげしげと見つめる。
それは卵をほんの少しだけ小さくした様な楕円形の宝石で、上下に美しい金属の装飾が施されている。
黄色く輝くその中身はまるで一つの世界が埋め込まれているように輝いており、さちはら氏の気持ちを代弁するかの様に美しく煌めいている。
ふと、何処かでまったく似たような物を見た気がした……。
「これはハートジェムです、さちはらさん。これでさちはらさんも魔法少女になれるんですよ! ほら、フェフさんも同じものを持っています!!」
そうやって自分のジェムを見せつけてくる鹿角フェフ。
訝しむさちはら氏はとある事実に気が付きハッとなる。鹿角フェフの衣装だ。
ピンクのフリフリの衣装。武器は弓の様な謎の物体。髪は両サイド結わえており、赤いリボンが見えている。
……嫌な予感が、ひしひしと伝わってきた。
「あと気をつけて下さい。ハートジェムの穢れは溜まり過ぎるとやがて魔女になってしまうのです! さちはらさんの大好きな、魔女に!!」
「ちょっと待って下さいフェフさん」
「なんですか、さちはらさん」
さちはら氏は腹をくくって魔法少女フェフの言葉を遮る。
そうして、自らの疑念を、ちょととシャレにならない事態について質問を投げかけた。
「それ……パクりましたね?」
「パクってないです」
即答だった。しかも真顔である。怪しいことこの上ない。
「マスコット、居るんですよね? 名前は?」
「Pベェです、さちはらさん」
「パクりましたね?」
「パクってないです」
「「…………」」
「ぎゅっぷーっ!!」
既視感のある白い生物が、既視感のある鳴き声を出しながら魔法少女フェフの後ろから現れる。
さちはら氏は目にも留まらぬ速さでそれを掴みとると、誰の目にも届かぬ遠くへ放り投げた。
「Pべぇ!? どうしてそんなことをするの!? さちはらさん!!」
裏声気持ち悪く、魔法少女フェフはくねくねと身体をうねらせながらそれっぽいことを言い出した。
どう見ても反省していない。
それもそのはず。鹿角フェフはいつだってギリギリのところを責めるのが大好きなのだ!
「フェフさん、反省してませんね?」
「さちはらさん何を言って? ……もしかして、ループしてるの!?」
限界だった。
明らかに無理やり話を進めようとしている鹿角フェフに業を煮やしたさちはら氏。
もう我慢ならないと実力行使に出る。
たっ、と鹿角フェフに近づく。キャラになりきっている彼は反応する余裕が無い。
そうして、えいっとばかりに鹿角フェフの手元よりソウ……ハートジェムを奪い取ると、勢い良く地面に叩きつけ割った。
パリンとガラスが割れる独特の音が鳴り、ピンク色の小さな宝石は砕け散る。
刹那、黒い霧がジェムより噴き出し鹿角フェフを覆い尽くす!
「いやあああ!!! 鬱展開はダメぇぇぇぇ!!」
鹿角フェフのオネエっぽい絶叫が響くなか、さちはら氏はなんとかギリギリの所でパクリを阻止したことに安堵の溜息を吐く。
そうしていろいろと満足したさちはら氏は、だいたいいつもこんな感じの鹿角フェフを放ってお家に帰った!
これが……世界が闇に包まれた真相!
魔女フェフによって世界に訪れた脅威の、真実だったのだ!!!
果たして世界はどうなってしまうのか? そしてこの短編はセーフか、アウトか!
それは、神のみぞ知る話なのだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!