表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

02話 科学と工学みたい

お気に入り数件ありがとうございます!

僕はこのごろ夜遅くになってから勉強を始めている。

嫌々じゃない。自分のためだ。そのためお母さんが寝たあと、レヴィとこそこそしている。


「ノ、ノエル君。が、学校決定の気分は?」


レヴィがまた笑っている。机に突っ伏して、ガンガンと叩いている。

レヴィはつぼが浅いことが最近分かってきた。

彼女が笑っているのはお母さんが5歳になったら学校入りと決めたせいだ、僕は学校なんて行かなくても勉強できるといったのだが、お母さんは聞かなかった。

先生魂にでも火がついたのだろうか、あんなに熱く燃えるお母さんを見るのは久しぶりだ。

いや夜ならいつでも熱いのか。


そのお陰で僕に弟か妹かが出来るらしい。

やったね、ノエちゃん子供が増えるよ!とレヴィに言われたので、素直にそうだねと言ったら驚いていた。何故だろう?

まぁそれは置いといて、弟だったら僕が勉強を教える兄になれるし、妹だったら可愛がれる。

お父さんとお母さんの子だ。きっと八方美人の弟か、花も恥らう乙女になるだろう。

それはいいのだけれど・・・魔術に関してはまだ分からないことが多い。


「魔力か・・・。使えば使うほど量が多くなるってどういうことなんだろうね?」

「む?あれは違うぞ?実際は魔法を魔力が通りやすくなって効率化しているのが大半だ。少しは増えている奴らもいるが・・・。」

「魔術教会も間違ってるって・・・。社会はどれだけ入り乱れているんだ。」

「私も全知って分けじゃないが、結構間違ったことが流れていることが多い世界だとは思う。」

「何を信じればいいんだろうね?」

「うーん。臭く言えば己を信じろ?」

僕は苦笑しながら違いない、と返す。

「それより勉強中のノエル君は練習でしょ?ほら次やろうよ!」

「わかってるよ。じゃあ低級土魔術から。」

手を伸ばし、力を込める。

「"土石(ロック)"」



手のひらから拳大の土くれが出てくる。ずっしりとした重みを手から感じるが、出てくるだけだ。飛んだりは全くしない、土を出すだけの術これでは全く使えない。利便性の少ないこの魔法が役に立つのはせいぜい塀を作る時ぐらいだろう。


「おお。凄いな。」

「全然凄くないよ・・・。これでは、あれ()で弾にすることも出来ない。火薬で飛ばしても崩れちゃうし何より攻撃力が無いし。」

「いやそこまで考えていれば十分だよ。

よし!そんな悩める子羊のノエル君に助言をあげよう!」

子羊ってそういう使い方するのか。

「本当ですか!?」

「いや、そこは教えて先生!だよ。全く分かっていないなぁ君は。」

凄くイラッとする。僕は彼女に触れれるので、思いっきり殴ってやろうと思った。

だがそうしたら彼女は教えてくれなさそうな感じがするので我慢する。

出来るならロケットをぶつけてやりたい。


「お、教えて先生。」

僕は片言ながらもその言葉を言うと彼女は満足したのか、フッと鼻を鳴らす。そして無い胸を張る。

無理しなくてもいいのに。と言うとマジギレしそうなので胸の内に留めておく。


「簡単に考えてみてくれ、君の魔法がそうなるのはイメージ通りじゃないかい?そのイメージを捨てて、あてにするのは基盤だけでいい。考えるんだ、例えば・・・剣の形とか。」


僕は言われたとおりに行動を行う。土の塊とは球体もどきではない。形を変えて。

剣に。

剣に。


「"土石ロック"!」


思わず、イメージしやすさを求めて大きく声を出す。勿論、魔法が発動し、目の前に土の剣ができる。それを軽く掴み、固められていることを確認する。

魔術教本にはこのような事は書かれていなかった。

国が、世界が間違っているのか?

実際僕が疑わなかったように、他の者も魔術教本どおりに覚えて土くれを作り出すだろう。

だが、レヴィがいた僕はそうならなかった。

魔術は何所まで力を持っているか、僕だけが知ることが出来るのだ。

レヴィにここまで感謝したのは初めてかもしれない。


「良く出来てるよ。じゃあ、教えること第一、"科学"へ移ろうか。」


何と、これが教えることじゃなかったらしい。

驚きのあまり絶句して、レヴィの顔を見るが、ただ笑っているだけだ。嘘をつくときのようなニタリとした笑みをしていない。

言葉を失っている俺にはお構い無しにレヴィは話を続ける。


「科学というのは物質はこうしたらこうなると言うもの全般を言うんだけど。

なんて説明すればいいかな・・・。

例えばだけど、原子を弄るとかかな?」

「原子?」

「うん、この世の物質は全てとても小さな分子と言うのからできている。金属系以外は。

その分子は原子が二つ以上結びついたものをいう。」

「はい。」

「まぁ聞くより慣れろと言う奴でやってみればいい。

水を分解するイメージを出せ、水を出して、分解する。最初は順々でいい。魔術教本にはそんな魔法は無いが、その本に書いてあるのだけが魔法じゃない。」

「分かりました。-水を・・。分解。」

水と言うイメージを思い浮かべる。液体、透明、無害。それを思い浮かべて手のひらに念じる。

水が玉となって手のひらの上に出てくる。

それを分解する。分解は細かく割ればいいはずだ、もっと水を細かく見ればいいのか。

目を閉じて集中する。次第に何か見えてきた。

くっつきあう何かと何かがある。これが分子だと本能的に察知する。

それを切り裂けば良い訳だ。

イメージする、その離れる瞬間を。強く腕に魔力を流す。


すると手のひらにあった水の感覚が無くなった。

驚いて目を開いてみると、やはりそこに水は無い。


「驚いたか?それが原子って奴なんだよ。水は水素が2酸素が1で形成されている。酸素は大気の20%を占めていて、物を燃やすのを助ける力がある。

水素には・・・ちょっと火の魔法使ってみて。」


何だろう火の魔法を使って何かあるのか?さっきは何故か無詠唱と言う馬鹿げたことをしていたが、これは予想以上に力を使う。普通は使わないほうがいいので詠唱有りで行う。

と言っても初級魔術なので詠唱は短いが、

「弾ける力の奔流よ"火炎(ファイア)"」

するとその出た火炎が少しだが空気中で発火した。小さな爆発とも捉えられる。その光はカンテラだけで照らされている部屋を少し明るく映す。


「そう!水素には可燃性、簡単に言えば空気に浮かぶ爆薬なんだ、うまくいけば三重水素って言う凄い力を生み出せる物質まで作れるんだけど、今は逆に使えないほうがいいんだ。」

「何で?そんなに強いのなら覚えれば良いんじゃ・・・。」

「下手したらここから町全体が核の海に沈む。」

「イェッサー!絶対に危険そうな人や場所があったら作りません!」

核と言うのは聞いたことがある。戦争を終わらせたと言う最悪の兵器。

害悪を撒き散らし、破壊した上に復興を難しくするやばいものだ。

その点今回話した三重水素を使った水爆は、まだクリーンらしいが、威力としては原理上、旧式の核の十から数百倍の威力が出るらしい。

あの核でさえ町一つなのに数百倍。

良く人類滅亡しなかったな。

僕はその工程を一応聞いたものの、出来れば生涯使わないことを願った。


▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼


「次は"工学"。これはエネルギーを得るもの。つまり動かすものを作るってっことなんだけど。

これこそ例えが無い。強いて言えばあのロケットぐらいかな。」

あのロケットを思い浮かべる。一年かけてこつこつと作ったものだ。

レヴィはあれは努力の賜物だな。とも言ってくれたし。

やはりレヴィは僕の努力を分かってくれてるんだよな。


「アレを一瞬で作るくらい。」

前言撤回。やっぱ駄目だわ。

ロケットの先端を押し出すように持ち、切っ先をレヴィに向ける。

大丈夫、今の僕ならやれる。

「ちょwタンマ、タンマ。流石にあれを一瞬は冗談だって・・・。

だってさ?あの構造を覚えておければ、"鉄塊(メタル)"で作れるじゃん?だから一度作るのは必要なんだよ。」

「むぅ。そういわれると必要な気もするけど・・・。」

「必要!というか、必須!だからそのロケットを収めて!間違っても放とうとか思わないで!」

「というかまだ放てないし、放てたら躊躇もしない。」


レヴィがひえぇと唸る。

こういう結果になったのは自業自得だと思う。

「ま、まぁこの二つとここの魔法を覚えてけばいいんだよ。ほら、私も手伝うからさ?」

「そうだけど。ただ・・。」

「ただ?」

「レヴィが教えてくれる科学と工学は別として、魔法はこの魔法教本のしか載ってないんだよ?それ以上はどうするの?」

「ほんと9歳にあるまじき発言だね・・・。12,3歳でも言わないと思うよ。

―その件については簡単さ。続きは私が教えればいいんだ。」

「あれ?でもレヴィ前この国の魔術知らないって・・・。」

カンテラの炎が音を立て燃えた。まるでカンテラが僕の言葉を遮るように。

この国(・・・)のはね。」

木造の部屋だと言うのに、その言葉は部屋全体に響き渡る。

レヴィはニッコリと笑顔を浮かべた。


▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼


石を鉄にする。

意味が分からないとは思うが、これが彼女に習った"魔法"であった。

"錬金術"というその魔法は質量に則って、物質の元素を変質や密集させたりすることが出来る。

分解のイメージとも合いやすいので、いい魔法だなと普通に思った。

レヴィは更に"召喚魔術"というのも言っていたが。使うのは止めとけと言っていた。

曰くごちゃ混ぜは面白くないだそうだ。面白くないとはどういうことなのだろう?

もうすでに科学や工学でごちゃ混ぜだと思うんだけど。


半ヶ月練習した僕は、石ころを金にまで出来るようになった。

これを売ったら、家も裕福になるんじゃ?とレヴィに言ってみたが。

これを使っていた国では、金を作ることを禁じていたらしい。

同じく人間もだ。

大きな力を持ったり、世界を変える様な事にならないよう尽力するための法の様だ。

レヴィはだらしなかったと言っていたが。


錬金術とこの国の魔法、レヴィは精霊魔術と言っていたが。

それらの根源は同じようだ。

ただイメージが違うから、動く方向性が違うだけで。

ならばイメージを変えれば、レヴィの言ってくれなかった魔術も使えるのでは?

と思ったが止めた。

彼女は彼女なりにちゃんと考えているのだ。化け物みたいな量の知識の中には見せてはいけない部分がきっとある。それを弁えているのだ。

後ろから化け物はお前だ、と聞こえた気がする。僕は声に出して言っていないので気のせいだろう。


魔法にもポーズと言うのは重要である。

流石に棒立ちで魔法を使うのは、イメージしにくい。

手を伸ばすとか、指パッチンとか色々試したが手を伸ばすのは錬金術と相性がいいし、指パッチンは科学と色々ばらつきがあった。

中でもやはり何かを発射するのには特別向いたのがあった。

庭の土に向けて銃を向ける。

魔術を飛ばす、そんなイメージを送って引き金を引こうとしたが、やはり引き金は重い。

両手でやっと打つようにして放つ。イメージは飛ぶ鋼。


「"鉄塊(メタル)"」


勿論火薬音はしないが、代わりに魔法を撃つドンと言う音が鳴り。

気付けば地面に着弾し、地面を穿っていた。

今のは銃の効果でもなんでもなく、魔法の"衝突(ストライク)"と"鉄塊(メタル)"のイメージを合わせて撃っただけ。

超初歩的な魔術なのだ。簡単に出来て当たり前なのだ。

だがしかしそれを見ていたお母さんは驚いていた。

休日の昼間はお母さんが魔法を教えてくれるのだ。それでお母さんが今までの結果を一回報告してくれない、と魔法を使うように言ったので僕が銃弾を使った次第なのだが。

何故かお母さんが庭の真ん中で絶句し、レヴィが腹を抱えて転がり回っているのだろう。

そういえばレヴィは僕を普通の7歳じゃないと言っていた。利口だとか、賢いとか。

冗談だと思っていたけど、本当だったのか?

まだ確信に至るまでの情報はないが、これ以外に検討が見つからない。


レヴィお前!こうなると分かってて止めなかったな!今度はマジで発射してやるからな!

その時はきっちり痛みを味わうんだな。

「アルバンさんの言う通りこの子は天才だったんだわ!

前から思ってたのよ、何で字が読めるの?とか。」

レヴィに教えてもらったからだ。

「次々と魔法を覚えるのか?とか。」

レヴィに教えてもらったからだ。

「何で私の料理を食べても一人だけ気絶しなくなったの?とか。」

マジで体に危険物なので、分解を覚えたらへんで有害物質を分解してたんです。

って最後の関係ないよね!普通の人の料理じゃ誰も気絶しないから!


「やっぱり天才なのよ。」

お母さんがもう一回大きな声で天才という。

というか天才って何なのだろうか?と疑問に思ったのは当然だと思う。

四歳まで普通の人の前で言語を使ったら駄目、とレヴィに言われているので、問うことも、止めてくれるようにいうことも出来ない。


僕は呆然と顔に喜色を浮かべる母を見ていることしか出来なかった。

どうしてこうなった!

魔力はエネルギー保存の法則を成り立たせるためにあると考えてあります。

だから何も無いところから火が出てくるとか起こると思っています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ