イジメを見て見ぬふりをしていたあなた方が!昨日もイジメをしていたあなたが!それをするんですかッッ!!!
寝れない時に妄想していた話が完結したので書いてみた。
アルーバル王国 ユニヴァース学園
そこの卒業式が終わった直後、
「ジャスティ公爵令嬢!お前はラスト男爵令嬢にイジメをしていたそうだな」
プライド王太子がジャスティ公爵令嬢の行っていたイジメを暴露した。
「……私のした忠告が彼女を傷つけたのであればイジメと言えなくもないですね」
「とぼけるな!彼女の物を隠した事や彼女の物を切り刻んだ事や彼女を階段から突き落としただろう!」
「……そんな事していません」
ジャスティ公爵令嬢が否定すると、
「う、嘘をつかないで下さい!」
「まったく、イジメなどという卑劣な真似をして恥ずかしくないんですか」
「言い訳なんて見苦しいよー」
「女でなければ斬っていたぞ」
「僕は女でも焼き尽くしたいね」
「姉さん………」
ラスト男爵令嬢が勇気を振り絞っている風に見えるように叫び、それを彼女の取り巻きと化した宰相子息、侯爵令息、近衛騎士団長子息、王宮魔導隊長子息が援護する。
ジャスティ公爵令嬢の弟である公爵令息はどちらを信じるべきか迷っているようだ。
それを見てジャスティ公爵令嬢は安堵する。
「それにしても、わざわざ隣のクラスの女子生徒のためにここまでするなんて王太子殿下は優しいんですね」
この言葉を嫌味と受け取ったプライド王太子は眉をしかめる。
「王族の一人として当然のことをしたまでだ」
プライド王太子がそう言った瞬間、
「当然?おかしいですね。2年前に白髪の平民がイジメを受けていた時はイジメの現場を見ても、『これは当人同士の問題だ。俺は関係ない』と仰っていたのに」
「なっ!それはっ、ラストは友達だから関係あるんだ!」
「おや?"王族の一人として当然のこと"はどうなさったんですか?」
「くっ」
「おやおや?そういえば昨日もイジメがありましたね。イジメを受けていたのは帝国の庶子でしたか?あら?たしかイジメをしていたのは王太子殿下ではありませんでしたか?『汚らわしい平民の血が入っていて恥ずかしくないのか』とか言って」
途端に、ジャスティ達を囲んでいた生徒達が驚愕の声を上げる。
「イジメなどという卑劣な真似をして、恥ずかしくないんですか?」
プライド王太子が羞恥と怒りで顔を真っ赤にする。
次にジャスティは取り巻き5人組の方を向き、
「グリード宰相子息、スロウス侯爵令息、エンヴィ近衛騎士団長子息、ラース王宮魔導隊長子息。貴方方は一体何を見てきたんですか?生徒会の一員ならその男が彼にする非道な行いを見たでしょう。証拠も無く私を断罪する前にその男を諌めるなり、この事を国王陛下に直接言うなりするべきだったんじゃないですか?」
囲んでいた生徒達が再び驚愕し、5人を軽蔑の目で見る。
ジャスティがプライド王太子を「その男」呼ばわりしている事を誰も気にしない。
プライド王太子の評価は地に落ちていた。
「私が彼に皇帝陛下に伝えるべきだ、と言ったら彼が何と言ったと思いますか?『そんな事をしたら侮辱されてると思って父上はこの国を滅ぼしてしまうから無理だよ』ですよ。自分をイジメていた王太子の国のために耐えたんですよ!そんな事も知らずにイジメをエスカレートさせて!それを見て見ぬふりをして!今度はイジメの断罪ですか?イジメを見て見ぬふりをしたあなた方が!昨日もイジメをしたあなたが!それをするんですかッッ!!!」
ある事情で卒業式の1日前に帰国した彼を想い、ジャスティは涙を流しながら叫ぶ。
衝撃の事実に静まり返る生徒達。
そんな中、ラスト男爵令嬢が言う。
「それを言っちゃったら帝国に知られんじゃないの?」
「「「 っ!」」」
全員が『なんて事をしてくれたんだ!』という目でジャスティを睨む。
しかし、
「何故、彼は卒業式に出席しなかったんだと思いますか?」
「まさかっ!」
学園で一番頭の良い宰相子息が気づく。
「……そう、既に帝国はこれを知っており、皇帝は怒り狂っています。彼は戦争を止めるために、無理であれば少しでもこの国の扱いをマシにするために帰国しました」
「ジェネロ君………」
「ジェネロ………」
彼と仲の良かった者が彼を思い出すように彼の名前を口にする。
「戦争が起こる場合、来年になるまでに帝国は攻めてくるでしょう。
例え戦争が起こらなくても、私は当主代理として、我がカース公爵家はアルーバル王国から独立し、ファステバル帝国の傘下となる事を宣言します。
帝国と王国の戦力差は絶大であり、さらにこちらに非があります。皆さんも、その男がこの国の王になる事も考えて、王国と帝国のどちらにつくのかを決めてください」
そう言ってジャスティは去っていった。
翌年、ファステバル帝国第三皇子 ジェネロ・フォン・ファステバルの頑張りでアルーバル王国はカース公国と同等の公国、すなわちファステバル帝国の属国となった。