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サマタオ  作者: 辰野ぱふ
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ラサ (2)

 大きくなった子どもの何人かは内地の戦に巻き込まれて亡くなったし、少し大きくなった子どもは、兵士になって戦にかり出されて行った。

 今、このあたりでは、戦は収まっているけれど、すぐ隣の国ではまだ続いている。

 病気で亡くなった赤ん坊もいたし、食べられずに亡くなった子もいた。それがいつだったのか、だれの子どもだったのかなんて、ラサにはもうわからないのだった。

 今、ラサの目の前で子どもが飛びはねている。そのことが楽しい。

「うぉっ ほっほっほっほっ」

 ついおかしくって、また笑いがもれる。

「また泣いてる!」

「笑ってるんだってば!」

「わかんねー!」

「わかんねー!」

 子どもたちの歌は、始まっては終わり、また次の歌のもとを見つけては始まる。

 なにも遊ぶ道具がなくても、そうやってみんなでふざけ合って、踊り、歌い出す。

 子ども一人一人の音階が層になっていて、空気に響いて風に乗って、部屋の中で反響して、複雑なハーモニーを作る。

 この声に包まれていると、ラサの身体の中から再びリズムがあふれ出す。

 ラサは、ふと夢の中の子どものことを思う。色の白い、細い、髪の黒い、見たこともないような女の子だ。なぜそんな女の子の夢を見るのだろう。

 その子も笑っている。

 ここの子たちとは、違う、静かな笑いだ。

 このあたりでは見かけない、サラサラの毛に包まれた動物を見つめている。

 この女の子は一人ぼっち。その動物だけが遊び相手なのだろうか。

 もっとにぎやかだったら、楽しいだろうに。

 見た目はずいぶんと違うけれど、子どもはみんな同じ。神様からの贈りものだ。

 今、ここにその女の子が入って来たら、黒い子どもたちにまじって、一緒に歌ったり踊ったりするに決まっている。子どもたちは、子どもたちの間に伝わる波長を持っている。

 言葉が通じなくても、自然に通じるリズムを持っている。

 ラサの部屋にいた子どもたちはすっかりお腹が空くまで、ラサの周りで飛んではねて、うたって踊って、外に出たり入ったり、いつも動いている。

 ごはんの時間になれば、まただれかがラサに食べ物を持って来てくれる。

 外がぼんやり暗くなってくると、子どもたちは少しずつ帰って行く。

 暗くなると、どんどん土も冷えてくる。寒くなる前に子どもを帰さなければならない。

「おやすみ!」

「おやすみ!」

「おばあちゃん、また明日ね!」

 子どもたちには自然の感じがわかるのだろうか、暗くなると、歌も静かになって、ゆっくり流れる音の層に、さよならの言葉を乗せて歌う。

 踊りも手拍子もゆっくり、どこかもの悲しいものになる。

「またね!」

「またね!」

 決まった歌ではないのに、きのうのお別れと同じような旋律になって、一つの言葉を長く引っぱり、歌いながら帰って行く。

 それはラサへの子守歌だ。

 ラサは、よっこらしょと、身体をゆっくりと移動して、ベッドに横になる。何重にも布を重ねてくるまって眠る。

 また、明日晴れたら子どもたちがやって来る。

 それが楽しみで、楽しい夢を見る。

 夢の切れ目に、色の白い女の子の姿も映る。

 また一日、健やかに過ぎたことを、神様に感謝する。

 子どもたちみんなが、いつまでも幸せでありますように。もちろん、色の白い、黒い髪の女の子も。

 ラサはお祈りしながら、いつしか眠ってしまう。

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