表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/16

MISSION 14 馬鹿


「全く、相変わらず無謀というか馬鹿というか……」


 翌日、俺の活躍をさゆりさんから聞いたアキラは、頭を振って溜め息を漏らした。


「発破をかけたのはお前だろうが」


 俺はソファーに寝転がりながら、アキラに文句を言ってみる。


「そうだっけ? 昔の事は忘れたね」


 自分に都合が悪くなると、全て忘れてしまう。こういうところは昔のままだ。


「まぁ、おかげでさゆりちゃんも助かったけどなー」


 ひどい言われようの俺に、ミアがフォローしてくれる。


「ところでお前、どこにいたんだ?」


 そういえば、俺が駆け付けた時にはもうミアはいなくなっていた。あんなに危険な状況だったのに、一体どこにいたのだろうか。


「私が先に逃がしたんです。ミアちゃんに何かあると総統様に怒られちゃいますから」

「怖いオッサンだな……」


 悪の親玉……というよりは、ただの親バカの顔を思い出す。何となくだが、一旦怒ると怖そうだ。特に、他人に対しては。


「紅一、いいのか?」


 少しだけ思いつめた顔をして、アキラが俺に言葉をかける。


「何が?」

「何でか報道はされてないけど……お前はこれで裏切り者になった訳だ。ネイチャーレンジャーのレッドになりたいって夢は絶望的になったぞ」


 ああ、そんな些細な事か。その事に関しては、俺の中では問題はない。

 頭の中で決着はついている。


「お前は、何もわかってないな」

「はぁ」


 偉そうな俺の言い回しが気に障ったのか、アキラが苛立ちそうに答える。


「なぁミア、お前が大人になる事が出来たら、悪の組織ってのは無くなるんだろ?」

「まぁそうなるな」


 腕を組み、ミアが頷く。


「だろう? だから俺がそれを手伝ってやる」

「本当ですか?」


 期待に溢れる目を輝かせ、さゆりさんが嬉しそうな声を上げる。


「『悪の組織を潰す事』と『ネイチャーレンジャーのレッドになる事』。別に矛盾してないだろ。やればできるさ」


 なんと完璧な理論だろうか。もともとその二つの結果は同じ事じゃないか。

 ここにいたって、ネイチャーレンジャーのレッドにはなれる。世界の平和は守ってみせる。


 ――俺が描き続けた、ああいう人に。


「馬鹿だな」

「バカだなーっ」

「おばかさんですね」


 人が折角いい話をしてやったというのに、三人が頷きながら俺を馬鹿にする。

 全く、なんて奴らだ。人の苦労も知らないで。


「うるさいよ……もういい、今日は一日中ここで寝てやる。でかいイビキかくから覚悟しとけよ」

「うわ、迷惑だ」


 ミアはそう言い残すと、残っている彼女の作業に戻った。


「おっと、もうこんな時間か……それじゃ、行ってきます」


 アキラも授業があるとかないとかで、簡単な挨拶を残して部屋を後にした。

 俺が寝転んだソファーの前には、いつの間にかさゆりさんが経っていた。


「あの、紅一さん」


 俺の名前を呼ぶ彼女は、少し思いつめたような顔をしていた。

 もしかすると、責任を感じているのだろうか。


「よろしく」


 さゆりさんに向かって、真っ直ぐと右手を差し伸べる。


「よろしくお願いします!」


 丁寧なお時儀と一緒に彼女が両手でしっかりと掴んでくれた。

 手のぬくもりが、心地よかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ