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引きこもり主婦のポンコツな日々  作者: 小日向冬子
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ココロをゆるめる

 計画魔である。


 初めてそれに気がついたのは、小学生のときだった。

 夏休み前に書かされる予定表。みんな面倒臭いと文句を言ってたけれど、わたしは全然苦にならなかった。それどころか、出来上がった表を眺めていると妙に心が落ち着いた。


 それから今に至るまで、いったいどれだけ計画表と名のつくものを作っただろう。

 今でも週の初めには一週間の献立表を作るし、在庫管理表をチェックして日用品や調味料などまとめ買いもする。エクセルで家計簿や家事一覧なんかも作っている。


 なんてことをうっかり知り合いに話すと、口では「すごい、マメだね」なんて言いながら、表情は明らかにどん引き。

 血を分けた姉妹ならわかってくれるだろうと姉に聞いてみると、「いやー、私はやらないねえ。あんたさ、そういうのって、疲れない?」


 はい、疲れます、とっても。

 でも、これをやらないと、もっとしんどいんです。


 おそらく、マメとか几帳面とかいう次元の話ではないのだ。

 どんなことでも、とにかく目に見える形で枠を作っておかないと、頭の中が混沌として動けなくなってしまう。入ってくる情報をどこに収めていいかわからず、闇雲にガラクタを積み上げているような感覚に陥る。


 結果、フリーズ。


 これは発達障害の類では? と密かに疑ってはいるが、日常生活はなんとか送れているのでそれ以上追及せずにいる。



 が、ここ数年、きっちりと計画を立てたりこなしたりが難しくなってきた。家計簿の入力をずるずる溜めこんだり、気分が乗らずにやるべき家事をすっとばし続けたり、献立が決まらないままスーパーに行って途方に暮れてみたり。


 年か? 年のせいなのか?


 いやいや、待てよ。

 前はそもそも「計画を立てない」「やらない」なんて、考えられなかったではないか。どんなに疲れていても時間がなくても手を抜けず、パンクするまで強迫的にこなし続けていたのだ。


 おお。では、もしかしたらこのゆるゆる感は、わたし的には大きな「進歩」なのではないか?



 そんなわたしの心を知ってか知らずか、連れ合いが言う。

「ねえ、今度の休み、電車でどこか行こうよ。ふらりと途中下車してさ、気の向くまま歩いてみるのもいいと思わない?」

「うん、いいね」

 反射的にそう答えてから気がついた。君と一緒なら無計画でも大丈夫って、そう思えてる自分に。


 どんなにフリーズしても失敗しても、君はわたしを責めたりしない。逆に「ホントに冬子は面白いなぁ」って、楽しそうに大笑い。

 その笑顔に、ガチガチに委縮した心はどれだけほぐされ、救われてきただろう。


 ああ、そうか。

 もしかしたらこの計画癖は、いつ責められるかわからないと感じていた小さなわたしが、必死に身につけた鎧だったのかもしれない。


 がんばってきたんだね、わたし。

 でも、もう安心しても大丈夫だよ。


 君の笑顔を間近に見ながら、心の中の用心深い小さな自分に、そっと語りかけてみた。

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