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引きこもり主婦のポンコツな日々  作者: 小日向冬子
2/21

冬来たりなば

 にゃんこの毛は、年に二度、春と秋に大きく生えかわる、らしい。


 らしい、というのは、完全室内で飼っているせいか、一年中フローリングの上を舞う抜け毛と格闘している気がするからだ。

 撫でられ好きなうちのにゃんこは、誰かの手が触れるたび、うっとりしながらグレーの毛をまきちらす。気がつくと、こたつの上もパソコンも、調理台だって毛だらけだ。掃除機が吸い込んでいるゴミの大方は、もちろんにゃんこの毛。


 飼い主の体感的に言うならば、もこもこと厚い冬毛に変わったあとの数カ月だけが、抜け毛量が激減する貴重な期間なのだ。


 つまり、今。



 が、今朝、いつものように食事中のにゃんこにブラシをかけて、ハッとした。


 抜け毛が、増えてる!

 もう夏毛に生えかわっていくというのか?



 そして、思い出した。

 いつもこの時期なんだ。


 毎年ちょうど寒の入りの頃、突然にゃんこの冬毛は抜け始めるのだ。

 これから本格的に寒くなろうというときに、にゃんこの本能は、いったいどこで遥か遠くの夏を感じとっているのだろう。



 ブラシにごっそりついた毛を見ながら、ふと頭に浮かんできた言葉。


「冬来たりなば、春遠からじ」


 いつだって、すぐ目の前の寒さに身を固くする人間たち。

 その先を見ている、にゃんこの体。



「大丈夫。春は、もうそう遠くないんだにゃ」


 にゃんこの抜け毛に、そっと励まされた気がする、寒の入りの朝だった。

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