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引きこもり主婦のポンコツな日々  作者: 小日向冬子
14/21

骨太の人生

 まったくの下戸である。

 ほんの数口のビールで、みごと真っ赤に茹で上がる。


「安上がりでいいなあ」


 なかなか酔えずに杯を重ねては翌朝後悔ばかりしている連れ合いには、いつもそう羨ましがられる。

 が、ほんのり気持ちよくなる一瞬を過ぎたとたんに気分が悪くなってしまうのだから、わたし的には何のお得感もない。



 というわけで、年に数回あるかないかの女子会でも、頼むものといえばウーロン茶かノンアルコールのカクテル。


 しかし、お子ちゃまのようなわたしのオーダーを聞くと、周囲はこぞってこう反応する。


「またまた、冗談言っちゃって!」


 どうやらわたしは、滅法酒に強そうな風体をしているらしい。

 そこで「具合が悪くなるといけないので……」などと言うのも無粋なので、「大丈夫、素面で酔えますから~」とナチュラルハイ状態にギアチェンジして受け流す。



 そういえば中学生のとき、朝礼で貧血を起こしたことがあった。

 校庭で長々と先生のおはなしを聞いていると、しきりに生あくびと冷や汗が出てくる。やがてすーっと血の気が引いていく。

 あぁ、もう限界、というところで前にいたクラスメートの肩に寄りかかり、やっとの思いでひとこと、「気持ち悪い……」と訴えた。


 すると彼女はくるっと振り向き、突き抜けるような明るい声でこう言ってのけた。


「またぁ、なに冗談言ってんのよ!」


 朦朧とした意識の中で広がる絶望感。


 が、次の瞬間彼女がさっと凍りついた。


「え? え? 真っ青じゃん、ちょっと、ホントに気持ち悪いの? 先生!」


 かくして瀕死の女子中学生は、冷や汗をだらだら流しながら両腕を抱えられ保健室に連行されたのであった。



 これまでの人生を振り返ってみれば、そういうことは枚挙に暇がない。


 胃が痛くて遅刻すれば、高校の担任に「胃が悪いようには見えないけどね」と不信感もあらわにつぶやかれ、「いろいろ悩んで死にたいと思ったりしたこともあるよ」と打ち明け話をした友人からは「えー? 全然、そんな風に見えない!」と思い切り言われ、慌てて心のシャッターを下ろした。

 スポーツだって、体育の授業以外ほとんどやったことないのに、初対面の人からは必ず「バスケとかやってたでしょ?」と言われる。



 とにかく、骨が太いのだ。

 で、肩幅の広いがっちり体型。



 去年の健康診断でも、「こりゃ男並みの骨密度だね」と医者に目を丸くされた。

 おかげさまで、いくら長生きしても骨粗鬆症になる心配はないらしい。


 しかしそれって、女子としてどうよ?



 当然ながら、若いころは華奢な体型に憧れてダイエットに励んだりもした。

「思わず守ってあげたくなるような女の子」だったら、もっと愛されるに違いない、なんて思ったりもして。


 たが、いくら脂肪が落ちたとしても、骨は細くなりはしない。

 結果、守ってあげたくなるどころか、よけいにごつごつ感が増すだけだった。


 嗚呼母よ、わたしを身ごもっている間、いったい何を食べていたのだ。




 しかし、いいかげんこの年になると、はかなげな見た目よりも骨を折るリスクを回避できるたくましさのほうがよほど役に立つことがわかってくる。


 誰にどう思われようが勝手に誤解されようが、もうどうでもいい。

 強く生きて行けさえすれば、それでいいのだ。



 そう叫びつつも、同級生の中でひとりだけ体型の違う息子を見ると、この子が男でよかったと思わず胸をなでおろしてしまう母なのであった。

 

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