宗教政党
◎宗教政党
宗教を母体とする政党としては日本では公明党(公明政治連盟・新党平和・公明・黎明クラブ、創価学会系)が、海外ではキリスト教民主同盟/キリスト教社会同盟、民主党(イタリア、カトリック系)、仏教自由民主党、人民党(インド、ヒンズー教系)などがあるが、日本には公明以外にも様々な宗教系政党がある。
○立憲養正會(立憲養正会)
田中智学や宮沢賢治らが所属し、現在も活動している日蓮宗系新興宗教団体「国柱会」が母体。なお、「八紘一宇」は田中の考案した造語である。
戦前・戦後に渡って議席を獲得したことのある唯一の政党。政策は右翼的・復古主義的であり、国民主権を否定し、天皇への主権奉還や教育勅語の復活、憲法破棄などを訴えた。しかし右翼系ながらも、戦前は大政翼賛会に反対し、戦後は破壊活動防止法に反対するなど、行動は野党的・反権力的だった。1949年以降当選者を出していない。
○日本キリスト党
元官僚で、戦後は「キリスト新聞」主筆や日本基督教団伝道師(補教師)、明治学院学院長等を歴任した武藤富男により結党。1977年参院選に全国区より出馬し、「政治に良心を」を合言葉に、平和外交や軍備撤廃、世界連邦建設、青少年への倫理教育、教育事業への遺産寄付免税などを訴えた。しかし大きな支持は得られず、1度きりの出馬で活動停止状態となった。「キリスト新聞」は現在も発行されており、リベラル神学系・社会派系の新聞として知られる。
武藤の長男、武藤一羊は評論家で、「ベトナムに平和を!市民連合」(ベ平連)の運動や構造改革派の「共産主義労働者党」(共労党)、「アジア太平洋資料センター」(PARC)、「ピープルズ・プラン研究所」などの設立にも関わった新左翼活動家でもある。また、長女の那智子は当時富男が傾倒していたナチ(国家社会主義ドイツ労働者党)にちなんでつけられた名前である。
○世界浄霊会
浄霊医術普及会(「世界救世教(MOA)」を源流とする「手かざし」系宗教団体)が母体。「浄霊」(手かざし)の医療保険適用などを訴えた。支持率は低く、比例区出馬の全政党で最下位が定位置だった。
○真理党
阿含宗から分裂した、チベット仏教系新興宗教「オウム真理教」(現「ALEPH」。横浜弁護士一家殺害事件や地下鉄・松本サリン事件、信徒焼殺事件などに関与)が母体。1990年衆院選で全国各地に候補者を多数擁立し、代表松本智津夫(麻原彰晃)の面や象のかぶり物などを身につけた信者が「彰晃マーチ」に合わせ派手に踊るパフォーマンスが話題となった。結果は大惨敗、松本は「落選は真理党当選の妨害を目的とする国家権力の票数操作による」と主張。
選挙出馬前、教団による信者の全財産没収や悪徳商法、脱会妨害等の問題を追及していた横浜法律事務所所属の弁護士とその家族を「出馬の邪魔になる」と殺害していたが、全員落選という結果、更に暴力的な権力奪取を志向するようになり、益々凶暴化することとなった。
○新しい時代をつくる党、女性党、なかよしの党
1989年設立の「生活研究会」を母体に、1993年「新しい時代をつくる党」(新時代党)として結党。後に女性党、なかよしの党と改名。アイスター(アイレディース化粧品、アイレディース宮殿黒川温泉ホテルなど)と、アイスター経営者が教主の宗教組織「和豊帯の会」(一部で創価学会から分裂との報道も)とを母体とする企業系・宗教系政党である。
政策は「主婦感覚の政治」「議員の半分を女性にする」「永久平和」など。年金改革や少子化対策も訴える。フェミニズムやウーマンリブなどの女性解放運動とは全く関係無い。女性党に改称後は、得票は現職議員を輩出していた一部政党を抜き、あと一歩で当選者が出るところまで行くなど健闘している。
街頭演説と政見放送の文面が全く同じことや、2007年参院選での公約「トリプルファイブ」(幼稚園児・小学生・中学生のいる家庭にそれぞれ5万円・10万円・15万円を毎月支給するというもの)、そしてファナティックな演説の様子などが話題となった。その一方、「黒川温泉ホテル」でハンセン病が既に完治している元患者を「迷惑である」と宿泊を拒否した事件や、アイスターのマルチ商法的な販売方法などもあり、批判も相次いでいる。
○新党・自由と希望
自公連立に反対する白川勝彦(元代議士、弁護士、立正佼成会信者)らにより結成。「創価学会と戦う唯一の政党」を自認し、反創価学会を鮮明に選挙活動を行なった。候補者として宮崎学(作家、元暴力団員、ネット政党「電脳突破党」代表)や安東尚美(建築家、社民公認漏れ)らを擁立し、立正佼成会の推薦を受けるも、当選者を出すことはできなかった。現在は白川個人の政治団体「リベラル政治研究会」として活動中。
他には、「再臨のキリスト」を自称する党首又吉イエス(又吉光雄、元塾講師、元牧師)の「腹を切って死ぬべき」「地獄の業火に投げ込む」などの発言が注目され、ファンも多い「世界経済共同体党」や、日本平和神軍(仏教系の武装集団。「株式会社イオンド大学」「にんにくげんこつらーめん花月」などを経営)を母体とする「日本正理党」(選挙出馬歴なし)、大川隆法(中川隆)・大川きょう子(中川恭子)夫妻が率い、元々自民党の支援組織だった「幸福の科学」による「幸福実現党」などがある。幸福実現党は小池百合子らとも関係を深めている。
また、立正佼成会、世界基督教統一神霊協会(国際勝共連合)、神社本庁(神道政治連盟)、霊友会(インナートリップ・イデオローグ・リサーチセンター)、生長の家(生長の家政治連合)、世界救世教(日本民主同志会)、パーフェクトリバティー教団(芸術政治連合)、「原始福音・キリストの幕屋」、神慈秀明会などは、主に自民党の支持団体として組織的に選挙に関与している(自民党に協力している公明党に反対するため、民主党候補の一部を推薦することもまれにある)。また、自民党と主義主張を同じくする「日本会議」には、神社本庁、天台宗、解脱会、国柱会、崇教真光、モラロジー研究所、倫理研究所、キリストの幕屋、佛所護念会教団、念法真教、オイスカ・インターナショナル、三五教、新生佛教教団、黒住教、大和教団など、多くの宗教団体・宗教系修養団体が参加している。