一点特化政党
◎一点特化政党
ミニ政党の中には、福祉や環境など、政策を一点に絞って主張する党、いわゆる一点特化政党も多数見られる。
○医療・福祉系
医療・福祉は国民に関心が高い分野だけに、それを謳った政党も多い。
◇福祉党
福祉党は、八代英太(前島英三郎、TVタレント、「MPD・平和と民主運動」呼びかけ人)らにより結党、1983年参院選に出馬。八代のタレントおよび現職議員としての知名度で1議席を獲得するが、在任中離党し、自民党に移籍。候補者ではなく政党に投票する拘束名簿式比例代表制での移籍は非難の的となった。天坂辰雄(弁護士)を代表に86年・89年参院選に出馬するが、議席回復はならなかった。
◇年金党
年金党は互助組織「オレンジ共済」を母体に、友部達夫らにより結党。清川虹子(女優)や酒井広(元NHKアナウンサー、ワイドショー「うわさのスタジオ」司会)らを擁立するが、全員落選した。友部は後に新進党の参院議員となるが、「オレンジ共済」が組合員に配当支払いも出資金返済も行なわず資金をして気に流用するだけの詐欺組織であったことが発覚。友部は詐欺罪で逮捕され、懲役10年の有罪が確定。議員を失職している。友部は新進党の公認を得るため、共済の資金を利用したのではとも言われている。事件発覚後清川らは謝罪すると同時に、「騙された!」と号泣していた。酒井は以後TV出演を控え、「あしなが育英会」のボランティア活動や、共産党の福祉政策を応援する活動を行なっている。なお、「オレンジ共済」に関わった政治家としては、後藤田正晴、亀井静香、竹下登、中曾根康弘、羽田孜、鳩山邦夫、細川護熙、渡部恒三、中西啓介、海部俊樹、市川雄一、太田昭宏、小沢一郎、小沢辰男、石井一、石井一二、初村謙一郎、増田寛也らの名前が挙がっている。
◇日本福祉党
日本福祉党は1986年、「老人福祉党」として設立。その後分裂・一本化を経て、1995年改称。福祉問題への関心の高まりからか、供託金返還まであと一歩というところまでと健闘することが多かった。95年参院選からは安西愛子(志村愛子、歌手、「日本会議」副会長、元「太陽の会」参院議員)を顧問に迎え、96年の党大会では安西、日野原重明(医師)、田中真紀子(代議士)らが祝辞を述べ、安田伸(サックス奏者、コミックバンド「クレージーキャッツ」メンバー)も支援を表明していたという。その後は自由連合や民主党など保守系野党との連携で党勢拡大を試みるが、2001年参院選には供託金引き上げ等による資金不足で不出馬を発表。以後、目立った活動は見られない。
◇日本民政党
日本民政党は選挙活動・政治活動を目的とせず、社会福祉を唱える互助組織。「知人を入党させるたびに『活動援助金』がもらえる」という主張から、ネズミ講の一種ではないかと言われている。なお、党大会参加料は1回1万円である。
その他、薬害エイズ問題を前面に打ち出して当選した川田悦子(無所属)・龍平(みんなの党)親子や、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者として難病対策や患者の人権確立を訴えた藤本栄(訪問介護会社社長、2005年衆院選に愛知3区より無所属で出馬)なども、医療・福祉系候補と言えよう。
○環境系
ドイツ緑の党などを参考に、ポストモダンの影響を受けた環境政党、市民運動政党設立を目指す動きは日本でも存在する。
1983年参院選に「東京緑派」の河西善治が東京選挙区より出馬。これが「緑」「環境」を前面に打ち出す最初の候補となる。比例区ではMPDへの投票を訴えた。また、同時期活動を始めた重松九州男(歯科医師)の「日本世直し党」も「日本版緑の党」を名乗っている。86年参院選には水の浄化等を訴える「環境党」が登場。
◇日本みどりの党、みどりの連合、みどりといのちのネットワーク
同じく86年、「日本革命的共産主義者同盟・第四インターナショナル日本支部」元活動家の太田竜(栗原登一)らにより「日本みどりの党」結党。後に分裂し、太田は脱党して「日本みどりの連合」を結党、「家畜解放」などを訴える。しかし1989年に「みどりといのちのネットワーク」として再統合し、大石武一(元新自由クラブ代議士、初代環境庁長官)らの推薦を受けるも全員落選している。
◇ちきゅうクラブ、原発いらない人びと
更に86年、山本コウタロー(歌手、「午後は○○おもいッきりテレビ」初代司会者、現白鴎大学教授)、北沢杏子(作家、性教育実践者)、円より子(現民主党副代表、「女性のための政治スクール」校長)、田嶋陽子(英文学者、フェミニスト)らを中心に環境保護とフェミニズムを掲げる「ちきゅうクラブ」が、また、今野敏(作家)や坂下栄(元三重大学教員)、小田々豊(農業)ら反原発運動・環境保護運動の活動家らを中心に「原発いらない人びと」が結成された。「共産主義労働者党」や「第四インターナショナル」など一部の新左翼勢力は「原発いらない」を支援した。
◇希望
92年、「みどりといのち」「ちきゅう」「原発いらない」の3派は合併し、環境新党「希望」となる。藤本敏夫(農業、元「共産主義者同盟」系全学連委員長、加藤登紀子の夫)を代表に迎え、参院選には藤本や小田々らを擁立するが、大きな支持にはつながらず全員落選した。
◇憲法みどり農の連帯、みどりといのちの市民・農民連合
95年、小田々や新藤洋一(後に日本公進党推薦で群馬県吉井町議、1期で引退)ら農民運動・環境保護運動家らを中心に「みどりといのちの市民・農民連合」結党。同時期「平和:市民」(新党護憲リベラル)内の反自民・新進派と農民運動・環境保護活動家らで「憲法みどり農の連帯」が結党。しかし両党とも大きな支持は得られなかった。
◇みどりの会議、みどりのテーブル、みどりの未来、緑の党グリーンズジャパン
98年、武村正義らの保守政党「新党さきがけ」が環境政党として再出発を表明。後に党名は「さきがけ」となり、中村敦夫(俳優、個人政党「国民会議」代表)と黒岩秩子(フリースペース主宰、後の民主党参院議員黒岩宇洋の母)で参院会派「さきがけ環境会議」設立。黒岩の落選後、2001年当選した高橋紀世子(元参院議員、三木武夫・睦子の長女)が所属し、2002年「みどりの会議」と改称。2004年参院選には中村、小林一朗(サイエンスライター、反戦団体「CHANCE!」主宰)や足立力也(コスタリカ研究家)、藤田恵(元徳島県木頭村長、後に9条ネットより参院選出馬・落選)らを擁立するが、全員落選し、「女性党」にさえも得票を抜かれた。選挙直後に解党し、小林を代表に「みどりのテーブル」が設立。但し、小林は「CHANCE!」時代公安警察と会食し、「運動家より警察の方が信用できる」と公言していたことから、代表就任には批判も相次いだ。「テーブル」は、旧「共産主義労働者党プロレタリア革命派」系を中心とする地方議員の連絡組織「虹と緑の500人リスト」や新潟の地域政党「市民新党にいがた」などと共に2008年11月解散・合併し、新党「みどりの未来」を経て、「緑の党グリーンズジャパン」(緑の党・三橋派とは全く無関係)となった。当初は川田龍平(現参院議員、川田悦子元代議士の息子)を代表にする予定だったが、川田は当選後、渡辺喜美を代表とする新自由主義政党「みんなの党」に入党。その為、現在は地方議員のみの組織となっている。
◇その他
2007年には黒田恒一(司法書士)が「環境社会主義党」の結党と同年参院選への出馬を表明したが、選挙直前に立ち消えとなった。2009年衆院選には長友清冨(農林業、環境コンサルタント、NPO「森と海の恋人」代表)が「森海党」から出馬、川辺川ダム計画反対などを訴えた。
又、日本生協連を直接の母体としない生活協同組合を中心に各地で結成されている「生活者ネットワーク」も、消費者運動や環境保護運動を重視している。
尚、現在「緑の党」名義で街頭募金や議会活動等をしている団体(通称「緑の党(三橋派)」)は、毛沢東主義と青森ナショナリズムを源流としていて環境保護運動にはむしろ敵対的な党派であり、環境政党設立を目指す陣営からは「同一視されたくない」と迷惑がられているという。「三橋派」の呼称は設立時の指導者、三橋辰雄から。こちらの団体も、大田区議会議員がいるので要注意である。
○交通政党
交通政策について主に訴える政党もあった。
◇モーター新党、全日本ドライバーズクラブ
モーター新党は高速道路無料化・モトクロス場およびオートキャンプ場建設推進・ガソリン値下げなどを公約に、マイク真木(歌手)や菅原義正らを擁立。「全日本ドライバーズクラブ」は暴走族取締り強化や「ネズミ捕り」によるスピード違反取締りの禁止、税制の消費税への一本化、都道府県廃止などを訴えた。党首の岡田三男は「日本のラルフ・ネーダー(アメリカ緑の党代表、消費者運動家)」を名乗っていた。
◇新自由党、自由党(石川派)、新党フリーウェイクラブ
「自由党」は石川八郎、高橋妙子らを中心に結成された「新自由党」を母体とし、「交通戦争阻止」を公約とした。柿沢弘治らの「自由党」や小沢一郎らの「自由党」と区別し、「自由党石川派」「石川自由党」など呼ばれることもある。1998年参院選では、自由党から副総裁(党首)として出馬した石川は91467票を獲得。同選挙では小沢自由党の候補者も全国で出馬しており、一部では混乱が見られた。
近年は、「高速道路無料化」を訴え料金所強行突破などを行なっている「新党フリーウェイクラブ」が活発に活動している。
○運動系政党
運動系といっても市民運動や社会運動ではなく、スポーツ系政党のことである。これらにはアントニオ猪木や江本孟紀(元野球選手)の所属し、小林よしのり等も支援した「スポーツ平和党」(スポ平)や、川上哲治(元野球選手)らが立ち上げた「さわやか国民会議」を母体し、小林繁(元野球選手)や高田延彦らが所属した「さわやか新党」などがある。
◇スポーツ平和党、さわやか新党
「消費税に延髄切り」などのキャッチコピーで華々しくデビューしたスポ平は、計2名の当選者を出し、民社党と統一会派を組んだ。政党交付金(政党助成金)の受給要件が「得票率2%以上」となっているのは、自党の得票率が2%台だったスポ平の意向によるものである。しかし金銭トラブルが絶えず、活動は先細り、自然消滅していった。江本は自由連合に移籍後、大阪府知事選に自民党大阪府連と自由連合の推薦で出馬したが、落選している。
「さわやか」は「政治にフェアプレーを!」がスローガン。同時期に出馬していたスポ平との混同を避けるべく、「我々はスポーツ平和党ではない!」と強調。「校庭の芝生化」「いじめられっ子を武道で鍛える」などの政策を打ち出したが、大きな支持にはつながらなかった。街宣車は白と黄色を基調とし、「さわやかさわやかさわやかね~♪」という歌詞のテーマソングを流していた。応援演説には向井亜紀(タレント、高田の妻)やローバー美々(タレント)らがかけつけていた。
○セックスパーティ
セックスパーティといっても別に乱交パーティのことではない。要は性の問題を中心に取り上げる政党である。
◇雑民党、地球維新党
「オカマの健ちゃん」こと東郷健(雑誌「The Gay」編集長、ゲイバー「サタデイ」「BAR東郷健」経営)率いる「雑民党」は、同性愛者などセクシャルマイノリティの解放や、性表現を含む表現の自由化、障害者の人権擁護、天皇制廃止、反戦・平和、暴力団新法反対、反創価学会・反ユダヤ、飲尿療法の医療保険適用などを訴えた。
性表現を多分に含んだ政見放送や選挙公報は話題となり、また、差別語の入った政見放送はNHKが当該部分を無許可でカットし憲法裁判となった(東郷としては差別の意図はなく、むしろ「差別語を用いて罵られた」という事実を述べ差別の不当性を訴えたものだった)。また、聴覚障害者の手話による政見放送(ラジオでは無音)も話題となるなど、様々な人権問題について考えさせる主張を展開した。
一方、転向右翼の太田竜率いる「地球維新党」と繋がるという一面もあった。さらに、中曽根康弘(元首相)と東郷が蜜月の関係にあったという論も一部にある。党は現在活動停止状態にあるが、東郷は「もっともっと愛を」などのイヴェントを開き、精力的に活動を続けている。
◇AV新党など
AV新党は1994年9月結党。党員は80人いるとのことだが、党首の井上あんりをはじめ、幹事長の五十嵐いずみ、林由美香、有希蘭など、名乗りを上げている党員は全てAV女優。党名のAVは「アダルトヴォデオ」でも「オーディオヴィジュアル」でもなく、「エイブル・ヴォランティア(Able Volunteer)」の略であるとのこと。「政治からモザイクを無くす」を合言葉に、奉仕活動の推進、憲法9条改定による軍備増強、消費税増税、青少年へのポルノ普及による性教育推進と性犯罪抑止などを公約として掲げていた。連絡先電話番号は当時アダルト情報番組にも使われていたダイヤルQ2の「0990」番号であり、その番号の書かれたプラカードを掲げて街頭に出るなど、かなり派手なパフォーマンスを行なっており、週刊誌「FLASH」やTV番組「トゥナイト2」などのメディアでも取り上げられていた。TV朝日の深夜番組「タモリ倶楽部」でも特集が組まれ、模擬政見放送が制作・放映された。模擬政見放送は、候補者役の女優が政見を語りながら座っている椅子が回転し、Tバックをはいたお尻が見えるというものだった。
ところが、選挙直前になって活動はピタリと止み、選挙出馬どころか以後2度とメディアに現れることはなかった。自分は当時「そもそも新党は政界進出ではなく、女優のPR活動・ヴィデオの販促活動が目的だったのではないか?」と思い、それ程気にも止めなかった。また、候補者の大半は衆院選の被選挙権年齢の25歳にも達していなかった。しかし、近年実話誌に「新党は政治ゴロであり、出馬取り下げの引き換えに他党へ金品や便宜供与等をを要求していた」という衝撃の説が載せられていた。その後林は謎の変死を遂げ、井上・有希も死亡説が流れている。
その他、「エイズいやいや音頭」を歌い公娼制度(国家・政府による管理買春)復活を訴えた「エイズ根絶性病撲滅国民運動太陽新党」、「わいせつ」規制撤廃を訴える一方、「海星社」などと連名で同人誌即売会に関する脅迫状を警察へ送りつけたとも噂される「表現の自由党」、「ナイスですね~」の言葉で有名な村西とおる(アダルトヴィデオ監督)が結党宣言したものの、目立った活動を見せなかった「全日本ナイス党」などがある。近年はセクシャルマイノリティ(同性愛者、性同一性障害者など)の当事者が人権確立を目指して選挙に出馬し、上川あや(世田谷区議、会派「レインボー世田谷」所属)のように当選する事例も出ている。また、月亭可朝(落語家)は大阪市議選や2001年参院選出馬の際「入浴施設の混浴化」を公約としている。さらに、ポルノ雑誌「ぺあマガジン」などで、児童ポルノの解禁と、小児性愛者への差別撤廃と人権擁護、ポルノ出演を希望する児童の自由擁護などを目的とする政党(記事内では「ロリコン党」などと呼ばれている)の設立を呼びかける動きもある。更に2009年都議選では、着エロDVD販売により猥褻物頒布罪で逮捕歴もある後藤麻衣(後藤展江、タレント、元レースクイーン)が新宿区選挙区より出馬している。
○その他
他の一点特化政党としては、「教育党」「日本教育正常化連盟」「国立大学の裏口入学をなくす会」など教育関係専門の政党、「議員を半減させる会」(国会議員を半分に減らす会)「人間党」「主権在民党」「直接民主党」など議会制度について言及する政党、宇宙人との積極的交流を公約とする「『開星論』のUFO党」など、様々な勢力が存在する。