ほむらじゃないよ、師匠だよ
俺「ふぅ、すっきりした」
トイレを出て、手をハンカチで拭きながら廊下を歩いていると、後ろから声をかけられた。
?「あら、飛鳥井くん。授業中に何をしているのかしら」
振り返ると、黒髪ロングの黒ストの美少女が無表情で立っていた。
俺「玉藻か……」
陽胡玉藻。
なんだかよくわからないが、時折、俺の前に現れる神出鬼没の謎の美少女。
基本的に、俺が一人の時にしか現れないため、幽霊かもしれないと思っていたが、学校に在籍しているのは確認した。
なぜか他人に探知されないステルス能力を持つ。
俺「授業中って、お前もだろ」
玉「お前だなんて、飛鳥井くんは私の旦那様のつもりなのかしら」
俺「そんなつもりは全くない」
玉「それは良かった」
……
俺「で、俺に何の用なんだ?」
玉「あら、飛鳥井くんに用があるなんて言ったかしら?」
俺「ないのに話しかけてくるな」
玉「ないとは言っていないわ」
……
俺「トイレから出てきたんだから、用を足していたに決まっているだろう。他に何の用があるというんだ?」
玉「うら若い女子に、そんなことを言わせる気なのかしら?」
俺「全年齢対象という言葉を思い出せ」
玉「私は、髪をセットしていたのかと思っただけなのに。飛鳥井くんって、いやらしい人なのね」
俺「お前にどう思われようと、一向に構わんが、否定しておく」
玉「私は、てっきり飛鳥井くんが女子を抱きかかえて、保健室に連れ込んでいると思ったのだけど、思い違いだったのかしら」
一見事実を言っているようだが、微妙に違うような気もする。
俺「見てたのなら、いちいち聞くな」
玉「あら、否定しないのね。いやらしい」
……
俺「クラスの女子が気分が悪いから、保健委員の俺が保健室に連れていくことになり、途中で歩けなくなったから俺が抱えて行った。やましいことは何もしていない。おわり」
玉「クラスの女子っていうだけで、抱きかかえたり、身の上相談に乗ってあげるなんて。飛鳥井くんって女子なら誰でもいいのかしら」
会話まで聞いていたのか。
俺「もしかして妬いているのか?」
玉「や、妬いてなんか、いないんだからっ///。と言えば満足なのかしら」
玉藻は、わざとらしい演技を交えて、そう言った。
……
俺「もう行っていいか?」
玉「ふふ。せっかちさんなのね。いいわ、お行きなさい」
玉藻はそう言って立ち去った。
何なんだ一体。
あいつと話すと酷く疲れる。
保健室に戻ろう。