係活動で何か得るものがあるかは、その人次第
教室に戻ると、既に授業は始まっていた。
俺は何事もなかったかのように席に着いた。
凛は、いくらか教科書を持っていたようで、席を離して教科書を見ている。
その横顔は、心なしか微笑んでいるように見えた。
授業が始まって10分ぐらいした頃だろうか。
モブA「ちょっと、カオリ大丈夫? 顔色が悪いよ」
榮倉歌織「……うん、大丈夫だよ……」
モブA「大丈夫じゃないじゃない。先生!」
先生「どうした? 榮倉、調子が悪いのか。 保健係は誰だ? 保健室に連れてってやれ」
学級委員長「保健係は飛鳥井くんです」
俺は名指しされて少し驚いた。
俺「誰だよ俺を保健係にしたやつは」
俺は不満を小声で言った。
幸「誰と言うか、何もやりたくないって言って、最後に余ったのが保健係だったじゃないか」
幸太が小声で俺に言った。
俺「なるほど」
そう言えばそうだった。
先生「飛鳥井、早く連れてってやれ」
俺「へ~い」
俺は気のない返事をして重い腰を上げた。
俺「榮倉、立てるか?」
歌「……うん」
榮倉は、よろよろと立ち上がった。
俺は肩を貸し、榮倉と教室を出た。
俺「風邪か?」
ただ、歩いているのも何なので榮倉に話しかけた。
歌「……ううん。私、小さいころから病弱で……」
消え入りそうな声でそう言った。
ラノベだと卒業までにフェードアウトしそうなキャラだな。
歌「……特に重病というわけじゃないんだ……」
声に出てたかと一瞬思ったが、そういうわけでもないようだ。
何か言おうと思ったが、何も思い浮かばず黙って歩いた。
榮倉の足が突然止まった。
俺「どうした? 歩けないのか?」
歌「……ごめんね。少し休めば、また歩けると思うから」
休むって言っても廊下で休ませるのもどうだろう。
俺「しょうがないな」
俺は榮倉を抱き上げた。
いわゆる、お姫様だっこというものだ。
歌「……恥ずかしいよ」
榮倉はびっくりするとともに嫌がって振りほどこうとする。
俺「あんまり暴れると落ちるぞ」
と言っても、自力で振りほどくほど体力がないのを見越していた。
歌「……重いでしょ?」
観念したのか、抵抗するのを止めた。
それでも、顔が近くにあるのが恥ずかしいのか、目を合わせようとしない。
俺「しかし、思ったより軽いな。もうちょっと飯を食った方がいいんじゃないか?」
歌「……ふふ……」
榮倉は少し笑っていた。
俺「なにか面白いこと言ったか?」
歌「だって、お父さんと同じ様なことを言うから」
俺「オヤジくさいって言いたいのか?」
俺は、少し笑いながら冗談で返した。
歌「違うよ。飛鳥井くんってお父さんみたいに優しい人なんだなって。もっと怖い人だと思ってたから」
前段は置いとくとして、後段は聞き捨てならない。
俺「俺が怖い? 何で?」
歌「だって、みんないろいろ噂して――」
言い終わる前に保健室に到着した。
流石に榮倉を持ちながらドアは開けられないので、榮倉を降ろした。
ドアを開けると、保健の先生がいた。