学校には怪談が無ければダメですか?
ドアを開けると、そこは屋上だった。
ごく普通の。
凛「普通ね」
凜は真顔で感想を述べた。
俺「そりゃあそうさ。でも見晴しはいいだろ?」
凛「風が気持ちいい」
凛の髪がさらさらと風になびいている。
俺「あんまりフェンスに近寄るなよ」
凛「フェンスが腐ってるとか?」
俺「いや、屋上にいるのがバレるとまずい。屋上は立ち入り禁止だからな」
凛「そっか」
凛は納得したようだ。
俺「それに……」
凛「それに?」
俺「屋上には曰くがあって」
凛「イワク?」
凜は不思議そうに聞いてきた。
俺「出るんだってさ」
凛「で、出るって、な、何が……?」
凛は明らかに挙動不審になっている。
さては、この手の話が苦手だな。
俺「どのくらい前の話かはわからないんだが、屋上から飛び降りた女子生徒がいるとか」
凛「……」
凛は恐怖でひきつった顔で黙って聞いている。
俺「それ以来、屋上にいると、どこからともなく、女子生徒の悲しげな声が聞こえてくるらしい」
その時、タイミングよく女子生徒の声が聞こえてきた。
凜はビクッとしてあたりを見回している。
ただの、休み時間にはしゃいでいる女子生徒の声なのだが。
俺「屋上のドアが開かないのは、逃げ惑う生徒を逃がさないように、霊が歪めたせいだ、とでも言うのだろうか」
凛は口をぽか~んと開けて虚空を見ている。
さすがに可哀想になってきた。
俺「……などということはない」
凛「……?」
凜は涙目でこっちを見ている。
俺「ちょっと調べてみたけど、そんな事件ないって」
凛「……あ、す、か、い~!」
ようやく状況を理解したようだ。
凜は怒ってポカポカ殴ってきた。
俺「俺が悪かった、やめろって」
凛「ゆるさないっ!」
俺「うわっ」
俺は凛の猛攻を受け、バランスを崩して倒れてしまった。
俺が突然倒れたことにより、凛の攻撃は空を切った。
結果として、凛もバランスを崩して、俺の上に倒れ込んできた。
凛「……」
凛の顔が目の前にある。
息がかかるほど。
俺「……なぜ俺が押し倒されているんだろうか」
ラノベでは普通逆じゃないだろうか。
凛「ふん」
凛は少し顔を赤らめ、急いで立ち上がった。
俺「この噂と、ドアが開かないおかげで、屋上に人が寄り付かなくなったってわけ」
凛「ふ~ん、そういうことか」
凜は納得したようで、多少機嫌が直ったようだ。
この機を逃してはならない。
俺「さあ、飯食おうぜ。時間なくなるぞ」
凛「そ、そうね」
なんとか誤魔化せたようだ。