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登校

教室に着き、僕は間宮さんと別れた。

 僕はもうすでに一人だったが、クラスの視線は僕に集まっていた。

「おい、どういうことだよ!」

 川本が興奮した様子で僕に駆け寄ってきた。

「……なに?」

 川本が何を言わんとしているか分かってはいたが、僕は知らないふりして目をそらした。 

「なんか、ざわめきがするから見てみると何だお前。あの間宮さんと仲良く一緒に歩いてるじゃないか、どういうことだ?」 

「たまたま並んで見えただけだって」

「聞くところによると登校まで一緒にしてきたというじゃないか」

 なんで知ってるんだよ。

 どれだけ話が広まるのが早いんだこの学校は。

「たまたま時間が一緒だっただけだって……」

「道路の真ん中で見つめ合って話してたっていうじゃないか」

 だからなんで知ってるんだよ!

 誰だよ広めた奴。

 僕は顔も名前も知らないその生徒を心から恨んだ。

「え、何? もしかして俺を差し置いて間宮さんと彼氏彼女の関係ってわけじゃないよな?」

 川本は落ち着きなく、キレ気味にそういった。

「違うって」

「本当か? 本当だな!」

 僕の両肩を掴んで川本は真剣な顔でそう問い詰めた。そして顔が近い。

「本当だって……」

「わかった……、信じよう。せめて、次の試合で俺が活躍し、モテモテになるまで待っててくれ」 

 果たしてその予定が現実になるのか分からなかったが、ようやく川本の太い両腕から解放された。

 川本が大声で話していたせいで皆がこっちを見ていた。いや、それでなくても見ていたかもしれない。

 男子の視線が特に痛い。

 間宮さんは僕と同じで何かと巻き込まれやすいので有名だ。しかし全てを知った今となってはその事故とやらもきっと自分から突っ込んでいったのだろう。

 そして、そのことの以前に美人だ。僕は生憎と今まで知らなかったが川本が言うには学年で五本の指に入るらしい。

 当然男子のファンも少なからずいたことだろう。そのファンからすれば僕のことを「なんであいつが」と思うのも当然だろう。


 昼休み。

 川本と共に昼食を取ろうと弁当箱を開けようとしたところで、教室が若干ざわめいた。

 何事かと辺りを見回すと、教室の入り口に間宮さんが立っていた。

 僕と目が合うとこっちにこいと手招きで示した。

 僕はできるだけ目立たないように身体を丸ませて移動した。

「な、何?」

「一緒に昼食を摂ろう、何かが起きるかもしれない」 

 恥ずかしげもなく間宮さんはそう言った。

「分かったから、取りあえず行こうか」

 一刻も早く此処から去ろうと僕は彼女の背中を押した。

「ああ。私はいつも食堂だが、君は今から弁当を食べようとしていたんじゃないのか?」

 間宮さんは僕の机を指差した。

「たまには食堂もいいかなって」

「もったいないだろう、まったく。作ってくれた親御さんの思いを無駄にするな」

 そう言うと彼女は教室に入り、僕の机の上からひょいと弁当箱をつまんで戻ってきた。 

 同じ机に座っていた川本には目もくれなかった。

「さ、行こうか」

「……うん」

 去り際に教室を見ると誰もがこちらに注目していた。そして川本が大きく中指をたてていた。


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