死なない程度に傷つけて
昨日は結局話だけで昼休みが終わってしまった。
そして、昼休み移行彼女と話をする機会はなかなかなかった。
最後の最後に意味深な台詞を吐かれて僕はずっともんもんとしていた。いったいどういった意味だったのか訊きたかったが、また今日も話をするとなると嫌がられるだろう。
だから今日はいつものように彼女に付き合うことにした。
昼休み、部屋に着くと彼女はまたも衣服を脱ぎ始めた。
「また急に……」
僕は急いで回れ右した。
「別にいいのに」
昨日の話で彼女に詩腰は常識的なところがあることが分かったが、恥じらいというものも少しは持ってほしいと思った。
「何か言った?」
心の中で思ったつもりが口に出ていたらしい。
「その、もう少し恥じらいってものを持った方がいいんじゃないかと思って」
僕は正直に白状した。
「失礼な、人並な羞恥心はある。私が平気で人前で下着姿に慣れる女だとでもおもってるのか?」
「……」すぐに否定はできなかった。「じゃあなんで僕の前じゃ……?」
「だって付き合っているんだろう?」
「それは、その方が都合がいいからそういうことにしておこうってことでしょ?」
「……ん?」
「……?」
間宮さんは疑問の表情を浮かべた。
僕は何かおかしなことを言っただろうか。
「君、私は少しショックを受けてるよ」
彼女は眼を伏せ低い声で言った。
「え?」
「私は正式に付き合ってるつもりだったのだけど?」
「え、だって、あのときのやり取りの流れじゃ……。ちなみに、間宮さんが言う付き合ってるって、どういう認識?」
「今日の君は本当に失礼な奴だな。だから、付き合ってるっていうのは……、男女であれこれ性的なことをすることだろ」
顔を少し赤くしながら彼女はそう言った。彼女の恥じらう姿を見たのは初めてかもしれない。
「じゃあ、その。本当に付き合ってるってことでいいの?」
「何? 嫌なの?」
「そんなことないよ! 僕は間宮さんのこと好きだし」
しれっとそんなことを言ってしまったが、もう取り消すことはできない。
「……自分で言うのもなんだけど、こんな性癖の私をなんで好きになったの?」
「間宮さんこそ、なんで僕と付き合ってもいいと思ったの?」
「質問を質問で返すな」
「まさか、こうやって自分を傷つけることに付き合ってくれるからって理由?」
「……それもある。が、それだけじゃない」
彼女は照れを隠すようにぶっきらぼうな口調で言った。
「なんか、ぐだぐだになっちゃったね」
なんだかもう、付き合っているとかそうじゃないとか、今はどうでもいいことに思えた。ただ、彼女の近くに居てもいい、それだけでよかった。
「じゃあ……」
そう言った彼女は静かに僕に近づいてきて、ついには焦点が合わなくなるほど顔を近づけ自分の唇を僕のそれに重ねた。
「これでいいだろ?」
間宮さんはすぐに離れると背を向けてそう言った。
「……うん」
何も理解しないまま無意識のうちにそう呟いていた。
「さ、はやく準備してはやう撃て!」
背を向けたまま彼女は叫んだ。
「ご、ごめん」
すぐに準備を整えエアガンを構えた。
まだ撃っていないのにも関わらず、彼女の首から耳まで真っ赤に染まっているのが見えた。
それを口にするときっと彼女は怒るだろう。
だからその赤みを隠すように首の近くから弾を撃ち込んでいった。
部屋には乾いた音と、たまに彼女が漏らす小さな悲鳴だけが響いた。
まったく、歪な関係だ。
だけど、彼女が望むならいくらでも彼女を傷つけよう。
死なない程度に。




