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今日も間宮さんと一緒に食堂で昼食を摂っていた。

 いつも彼女の方が先に食べ終わるので最近は早く食べるように努力していた。

 そして今日はついに彼女より早く食べ終わることができた。

「昨日は、その、どうだった?」

 手持無沙汰になった僕は間宮さんに話しかけた。

「……?」

 質問の意味が分かっていないのか、間宮さんは首をかしげた。

「階段から落ちたとき、痛かった?」

「ああ……」 

 短くそう答え、最後の唐揚げを飲み込んで言葉を続けた。

「まあまあ、痛かったよ。だけど階段からは落ち慣れたせいで無意識に受け身をとるようになってね。もうあまり効果は望めない」

「……そうなんだ」

 もうスタントマンとして食べていけるんじゃないかと思った。

「さて」

 そう言って立ち上がった彼女に僕は続いた。

 今日もまたいつものように学校探索が始まるのかと思った。

「今日は何処に行くの?」

 その、僕の問いに彼女は含み笑いを返すだけだった。

 彼女のその笑みにどんな意味があるのか、思いつかないまま彼女の後を追った。

 ただ、嫌な予感しかしなかった。


 人気のない階段を上っている辺りから予想はしていた。

 辿り着いた場所はまたも第二音楽準備室だった。

 間宮さんは偉そうに丸椅子に足を組んで座り、手まで組んで憮然とした様子だった。

「まったく君にはがっかりだよ、期待はずれだ」

「え……」

 僕はまるで上司にしかられる新入社員の気分だった。

「ここ数週間、君についてまわったけど、私の納得のいく結果は得られなかった」

 間宮さんは沈痛な面持ちでそう言った。

「……」 

 ごめんなさい、というのも変だと思い僕は何も言えず、ただ突っ立っていた。

「これ以上、ただ付きまとうだけではもう効果は無いと、私は判断した」

「それじゃあ……」

 言葉にしたら現実になってしまいそうで『止めるの?』という言葉を僕は呑み込んだ。

「何その不安そうな顔は? 私はてっきりもう解放されると思って安心する顔を想像していたのだけど」 

 自分では自覚していなかったが、僕の顔を見て間宮さんは意外そうに言った。 

 僕は急いで表情を整えようとした。

「そんな顔してた?」

「うん。それでも有無を言わせず次のステージに移行させようと思ってたのに」

「次のステージ?」

「そっ。やっぱり、受け身で待ってるだけじゃだめだと、思ったわけです」 

「十分積極的に行動してると思うけど……」

「そこで、私は気づいた。偶然の事故にまかせるのではなく自分でやればいいのだと」

「自分で事故を起こすってこと?」

 話が犯罪的な方向へ行きそうなので僕の心はざわついた。

「違う、違う。せっかく君と言う理解者ができたことだから、君が私を痛めつけてくれればいいの」

 別に僕は彼女の体質を理解しているわけではない、ただ知っているだけなのに。それにしても、

「今なんて?」

「君が私を痛めつけて」

 彼女の言葉は簡潔で、しっかりと僕の耳に届いた。

 だけど僕の頭はその言葉を理解するのを拒んでいた。


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