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第二音楽準備室

埃が高舞い、荷物は踊り場へばらばらに散らかった。

 僕達三人も踊り場へ転げ落ちた。

「うう……」

 僕はうめきながら体に異常がないか確かめた。

 打ち見程度で骨には異常がないようだった。

「お前ら、大丈夫か!」

 いち早く身体を起こしてそう言ったのは大荷物を抱えていた人物、歴史教師の瀬川だった。

 瀬川教諭はまだ赴任してばかりでかなり若い、同じ制服を着ればまだ同級生としてもいけるぐらいだ。

「なんとか、大丈夫です」

 間宮さんも立ち上がり無事を示した。

 何処か満足げな表情をしているのを僕は見逃さなかった。


「お前達、こんな所で何してたんだ?」

 瀬川教諭は踊り場に散らばった教材や資料をかき集めながら僕等に尋ねた。

「いや、特に何も……」

 僕も拾うのを手伝いながら曖昧な返事を返した。

 本当のことなど言えば、変人扱いは決定だ。

「……ははあ、まったく若いねえ」

 瀬川教諭は何かを納得したようにうなずいた。

「第二音楽準備室がいいぞ。……防音だから安心だ」

 僕は彼が何を言わんとしているかを理解して顔を赤らめた。

「違います! あの……」 

 僕は弁明しようとしたが、本当のことを言うわけにもいかず言葉に詰まった。

「大丈夫、誰にも言わないって。だけど、ほどほどにな」

 荷物をまとめ終わった瀬川教諭は最後にそう言い残し、再び腕いっぱいに荷物を抱えて階段を下りて行った。

「僕達も戻ろうか」

 まだ昼休みは少し残っていたが今の一連の出来事にどっと疲れを感じた。

「まだ、ある」

 間宮さんはSWATCHの腕時計で時刻を確かめてそう言った。

 そして僕の意見を受け入れる様子もなく、階段を上って行った。

 一人で行かせる訳にもいかず、渋々ながら僕も後に続いた。

 最上階に着いた。

 間宮さんは斜め上に視線を移して、何かを探しているように歩いている。

「何か探してるの?」

「うーん……」

 僕の問いに、彼女は曖昧な返事をした。

 そして廊下の一番端、間宮さんは目当ての物を見つけたようだった。

「あった」

 間宮さんの視線の先には第二音楽準備室と書かれたプレート。

「……」

 どうやらこの部屋を探していたようだった。

 あの話を聞いた後でどうして、この部屋を見つけようと思ったのだろう。瀬川教諭の言葉の意味を理解していなかったのだろうか。

 不用心にも部屋には鍵がかかっておらず、間宮さんはすんなり中に入った。

 そこは教室の半分ほどの大きさの部屋だった。その中にあらゆる楽器が押し込められているわけだから自由なスペースはほとんどない。

 僕が部屋に入るのを確かめると彼女は扉を閉めた。

「あの、何するつもり?」

「ナニって?」

「いや、別に……」

 我ながら変な質問をしたと一人赤面した。


――バアアァン


「うわっ!」

 僕の驚いた顔を間宮さんは悪戯な笑顔で見ていた。

 彼女の手には木製のスティック、傍らにはドラムのクラッシュシンバル。

「驚かせないでよ」

 まだ心臓が高鳴っている。

「此処は、防音なんだってね」

 悪戯笑みを維持したまま、彼女は楽しそうに言った。

 そして昼休み終了を告げる鐘が鳴った。


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