彼女
目の前で少女が階段から落ちようとしていた。
「危ない!」周りにいた誰かが叫んだ。
僕は反射的に彼女に手を伸ばす。
服の裾を掴んだはいいが、華奢な僕の身体は傾いた彼女の身体に引っ張られてそのままバランスを崩した。
「――っ」
周りにいただれもが息をのんだ。
結果的に、僕の行動はおせっかいで、それ以上にただの迷惑だった。
僕は彼女と共になって階段を転がり落ちた。
「つぅ……、あっ! 大丈夫?」
運悪く僕の下敷きになってしまった彼女を抱き起こした。
「はあ……、痛い……、」
痛みからか、彼女の息遣いは荒くなっていた。
「本当にごめん! 大丈夫? 歩ける?」
彼女は静かに笑顔で頷いた。無理して作ったかのようなその笑顔は痛々しかった。
「取りあえず保健室に行こう」
僕は彼女に肩を貸して保健室へ向かった。
「痛い……」
か細い声で彼女は呟いた。
「ごめん、痛む?」
俯く彼女の顔を覗き込んだ僕は違和感を覚えた。
彼女の顔は赤く蒸気していた。瞳は何故か恍惚とうるんでいた。それに合わせてか、息遣いはよく艶やかに聴こえた。
僕はつい、物珍しそうに彼女の顔を覗き込んでしまった。
「あ……」
僕の視線に気づいた彼女は、しまった、といった顔をして僕から離れた。
「あの、ごめん」
僕の方も何故か見てはいけないものを見てしまった気になって、つい謝ってしまった。
「あの……、もう大丈夫だから。じゃ!」
彼女はそう言って、階段から転げ落ちた後とは思えないくらいに颯爽と走り去っていった。
僕はただ一人呆然と廊下に立って彼女を見送った。
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