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第16話 期間限定(フルーツパーラー編)

駅前のフルーツパーラーに来た。

いちごのパフェが始まったらしい。

毎年、なぜか来てしまう。


ショーケースの中が赤い。


長い列ができている。


順番が来て、カウンターに通される。

座る。


横で、メニューの写真を数えているスーツの男。


「……十、十一、十二」


――いた。


三上灯馬。


「何ですか」


「赤の占有率だ」


「高いんですか」


「高い」


三上はページを戻して、まためくる。


「期間限定は、メニューを赤で埋める」


「いちごの季節ですから」


「季節は免罪符だ」


「赤は判断を急がせる」


三上はメニューを閉じた。


「わたしは迷ってますけど」


「迷っているつもりだ」


店員が水を置く。


「ご注文は」


「期間限定いちごパフェを」


「食べるんですか」


「検証だ」


わたしも同じものを頼んだ。


カウンターの向こうで、いちごが重ねられていく。


目の前に置かれる。


「いちごが、写真より多い」


「多いのはいいことじゃないですか」


「期待値管理が甘い」


三上は写真とグラスを見比べる。


「写真は抑えている」


「なんで抑えるんですか」


「失望を防ぐためだ」


三上はノートを開く。


グラスを横から見て、線を引いた。


「何してるんですか」


「層の確認だ」


三上は、描いた線の上部をペンでなぞる。


「上層は広告だ」


「下は?」


「収支の匂いがする」


下の層には、コーンフレークが見える。


「普通に食べられないんですか」


「食べている」


三上は黙って食べ進める。


上から崩して、中層に届いて、底まで掬う。


グラスの底が見えた。


「……訂正する」


「何がですか」


「分断がない」


「断面で見たのが間違いだった」


「順番が正しい」


「グラスの中にストーリーがあります」


「……悪くない」


翌週、ポスターの写真が変わっていた。


余計な夢を足していない。

実物からも引いていない。


列が、前より長い。


わたしは少し笑って、駅に向かった。

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