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約束の羽  作者: あお〜い
7/7

後日談 役目の終わった場所で

彼は、街の外れに立っていた。

振り返れば、

あの橋も、川も、もう見えない。

それでいいと思った。

役目を終えた者は、

振り返らない。

それが、彼が最初に教えられたことだった。

約束を終わらせる者は、

約束を持たない。

名前も、居場所も、

「また会おう」も。

彼はそれを、不自由だと思ったことはない。

少なくとも――

彼女に会うまでは。

翼を持つ少女。

いや、もう持っていない少女。

彼女の背中から

最後の羽が消えた瞬間を、

彼は確かに見ていた。

終わりは、静かだった。

拍子抜けするほど、普通だった。

でも、

それでよかったのだと分かっている。

彼は思い出す。

初めて彼女を見た時、

翼よりも先に目に入ったもの。

――立ち止まっている足。

飛べないからじゃない。

重いからでもない。

進まないと決めていた足。

あれが、

彼女が背負っていた本当の重さだった。

「全部、終わったのか?」

誰もいない道で、

彼は自分に問いかける。

答えは、すぐに出る。

――終わっていない。

約束は、今日も生まれる。

守られないものも、きっと増える。

彼の役目が消えたわけじゃない。

ただ、

一人分、減っただけだ。

それでいい。

彼は歩き出す。

次の街へ。

次の約束へ。

けれど、歩きながら、

ふと立ち止まる。

胸の奥に、

今までなかった感覚がある。

名前のない、

小さな引っかかり。

――覚えていたい。

その考えに、

彼自身が驚いた。

「……いや」

彼は首を振る。

覚えるのは、

彼の役目じゃない。

でも。

彼は、ほんの一瞬だけ、

約束をする。

――翼のない彼女が、

  ちゃんと前に進めていますように。

誰にも渡さない約束。

守られなくても、

終わらせなくてもいい約束。

それでも――

彼の背中に、何も生えなかった。

彼は、少しだけ笑う。

「悪くないな」

そして今度こそ、

振り返らずに歩き出した。

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