新しい物語
翼は、約束の数だけ重くなる
ユイの翼は、空を飛ぶためのものではなかった。
それは約束が生えた痕跡だった。
誰かと約束を交わすたび、
彼女の背には羽が一枚、静かに増える。
忘れられた約束。
守られなかった約束。
最初から叶うはずのなかった約束。
それらは羽となり、
飛べない翼として、彼女を地面につなぎとめた。
*
この街では、人は「約束」を軽く扱う。
明日会おう、また連絡する、ずっと一緒だ――
言葉は簡単で、忘れるのはもっと簡単だった。
だがユイだけは、
他人の約束を背負ってしまう体質だった。
約束された瞬間、
それが守られない未来が見える。
そして破られたとき、
羽が一枚、生える。
*
ある日、ユイは一人の少年と出会う。
彼は言った。
「君の翼、重そうだね」
その一言で、
ユイは初めて知る。
――この翼が、見える人間がいることを。
少年は続けた。
「それ、捨てる方法を探してるんだろ?」
風が吹いた。
翼は揺れたが、浮かなかった。
ユイは小さく笑って答える。
「ううん。
捨てたら、誰が約束を覚えてるの?」
*
物語はここから、
**「約束を引き受ける少女」と
「約束を終わらせる少年」**の関係へ進んでいく。




