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リョウと圭介の「人工衛星、なぜ落ちない?」講義編

都内の古びたスタジオカフェ。夜。

壁にホワイトボードが立てかけてあり、コーヒー片手に須賀圭介が資料を並べている。

リョウはギターを膝に乗せたまま、床に座っている


圭介(静かに資料を広げながら)

「じゃあ今日は、真面目に物理の話をしよう。

人工衛星は“なぜ”地球に落ちずに、何年も宇宙を飛び続けられるのか――これには『速度』と『重力』、それから『曲がった空間』が絡んでる」


リョウ(髪をかき上げつつ)

「重力と速度。つまり、地球が“ずっと引っ張ってる”のに、“ぶつからないだけ”って話だよね」


圭介

「正確には、“落ち続けてる”が正しい。ニュートンの『大砲の思考実験』、聞いたことあるか?」


リョウ(目を細めて)

「地球のてっぺんに大砲を置いて、打ち出す速度を少しずつ速くしていくと……そのうち地球のカーブとぴったり一致して、永久に落ちない――あれか


◆ 講義①:「軌道とは、“自由落下のカーブ”である」


圭介(ホワイトボードに円を描きながら)

「ここに地球。で、衛星がこの円を“落ち続ける”。

人工衛星が軌道上にいられるのは、地球の引力に引かれて“曲がって落ちている”からだ。が、落ちる先が常に“地球の外周”なんだ」


リョウ

「ジャンプしてるんじゃなくて、曲がりながら“一生かけて落ちてる”……。詩的だね。人間関係みたい」


圭介(苦笑)

「例えるなら“半永久的な転びかけ”。でも、秒速7.7kmで滑ってるから、地球の“膨らみ”に沿って、ずっと落ちてもぶつからない。

これが、軌道速度。高さ300~400kmの低軌道ならこの速度だ


◆ 講義②:「速度が足りなければ、落ちる。速すぎると、離れる」


リョウ(コーヒーを一口)

「じゃあ、もし秒速5kmしかなかったら?」


圭介

「それだと軌道に乗らず、地球に再突入して燃える。

逆に秒速11.2kmなら、地球の引力圏を脱出できる。いわゆる“第二宇宙速度”。

人工衛星はそのちょうど間――“引力にギリギリ逆らわず、でもぶつからない”絶妙な速度を取る」


リョウ

「それって、感情の制御に似てるね。愛しすぎても壊れるし、冷たすぎても届かない。その中間だけが、ずっと続く」


圭介

「そうかもしれないな。軌道とは、情熱と冷静のあいだだ


◆ 講義③:「静止軌道と軌道周期の関係」


リョウ

「静止軌道ってのもあるよね。地球の上空で、ずっと同じ場所にいるやつ。あれはどうなってるの?」


圭介(また図を描く)

「高度約3万6千km。そこでの軌道速度は秒速3.1km程度。

地球の自転と同じ時間で周回できるから、地上から見れば“動かない衛星”に見える」


リョウ(ギターを爪弾きながら)

「なるほどね。速さと距離でバランス取る。近ければ速く、遠ければゆっくり……それが、宇宙のリズムか」


圭介

「そのとおり。ちなみにISSは90分で1周してる。つまり1日に16周。ものすごいスピードで、静かに、絶えず地球を“落ち続けてる”


◆ まとめ:「人工衛星は、地球への永遠の帰還を拒みながら、愛し続けている」


リョウ(少し笑って)

「つまり、人工衛星は“引かれてるけど、触れない”存在なんだね。

遠心力と重力が釣り合った、宙ぶらりんな愛の軌道」


圭介

「物理学的には正確じゃないが……悪くない比喩だな

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