後編:ロケットはなぜあんなに燃料を使うのか?
千束「はいっ、後半戦いっくよー!今日のテーマは“なぜロケットは燃料ばっかり持ってるのか?”ってお話!」
ひとり「えっ……だって、あの……推進剤って……すっごく重たいですよね……?そんなに燃やして……地球怒らないんですか……?」
圭介「いや、怒る怒らないじゃなくてな……燃料がないと宇宙まで行けないんだ。それにはちゃんと“ロケットの法則”がある」
夏美「出た、物理おじさんのターン。今回は“ツィオルコフスキーの公式”っていうやつ。聞いたことある?」
ひとり「つ、ツォ、えっと、ツッコミコフスキー……?」
千束「近い!正しくは“ツィオルコフスキー”!ロシアの高校教師だったんだよー!でもね、この人が考えた公式が、ロケット工学の土台になってるんだって!」
圭介「そう。“M₁ = M_f × exp(ΔV ÷ u)”って式な。簡単に言えば、“どれくらい速くなりたいか(ΔV)”と、“どれだけ速くガスを吹き出せるか(u)”で、必要な“燃料と荷物の比率”が決まる」
ひとり「えっ……?えっ……?指数関数……?なんでそんな、急に難易度上がるんですか……?」
夏美「安心しなよ。要するに、“速くなりたいなら、それ以上にたくさんガスを吐かなきゃダメ”ってだけよ。しかも、それは最初にまとめて持っていかなきゃいけないから……ロケットって“ほぼ燃料タンク”なの」
千束「そうそう、さっきのページで言ってたよね〜。“1kgの荷物を宇宙に運びたいなら、47kgの燃料が必要”って!」
ひとり「47……!?そんなに……!?」
圭介「これが、“宇宙に行く”ってことなんだよ。地球の重力を振り切って、秒速7.7kmまで加速するためには、とんでもない勢いでガスを後ろに吐き出さなきゃいけない」
千束「そのガスのスピードが“排気速度(u)”。たとえば、2km/sで吐き出すときと、10km/sで吐き出すときでは、必要な燃料の量がぜんっぜん違うの!」
夏美「でね、この“指数関数”のグラフが怖いのは……ちょっと速くなりたいだけで、必要な燃料がドカンと増えるのよ」
ひとり「加速するたびに……おにぎり47個ぶんの重さを……背負わされて……しかもそれを投げ捨てながら進む……それって……私の高校時代みたいです……」
千束「ひとりちゃん、それたぶん燃焼じゃなくて“燃尽”してる!でも、ロケットも似たようなもん!推進剤を燃やして、重さを減らして、最後は“軽くなった自分”で宇宙へ飛び出す!」
圭介「ちなみに、打ち上げに必要なエネルギーはとんでもなくデカい。1kgのリチウム電池だとラーメン1杯分くらいのエネルギーしかないけど、プロパンガスはその13倍。だから、宇宙では燃焼がメインなんだ」
夏美「つまり、“軽くて強くてたくさん吐ける”ガスが欲しいわけ。で、それを吐くためには、めちゃくちゃな熱と圧力が必要で……結果的に“ロケットは火の玉”になるのよね」
ひとり「……もう……よくわかりました……。宇宙って……おそろしい場所……でも……ちょっと行ってみたいです……」
千束「だよねー!でも私たちの人生もけっこうロケットみたいなもんじゃない?いらないもの切り離して、どんどん加速して、最後には――」
夏美「――大気圏、突き破る!」
圭介「突き破った先に、何があるかは……自分で決めろってこったな」