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終幕

 屋上から地面への墜落死をループする天上院の恐怖にまみれた顔を眼下に、俺は浜崎開斗へ向き直った。

 彼の透き通った身体は光の砂のように少しずつ崩れていき、風に流れていく。


「少しは気が晴れたか」


 俺の問いに、浜崎は安堵したように笑みを浮かべたまま、やがて消えていった。

 彼の逝った先は天国か、それとも地獄か。

 それは誰にも分からない。


 ただ、俺は彼が天国へ行けるようにと両手を合わせて天に祈りを捧げる。

 なんの効果のないただの気休めだが、やらないよりはいいだろう。

 しばらくの間祈りを捧げた後、バケツに汲んでおいた水を屋上にぶちまける。


 血で描かれたサークルが水に溶けて輪郭を失っていく。

 いつの間にか暗雲は消え、世界は元の形へと戻る。


 青空翼は鋏で髪の毛を短く刈られた状態で泡を吹きながら倒れ、

 中野三葉は保健室のベッドで茫然自失とした虚ろな目で天井を見上げ、

 天上院京真は失禁しながら校庭の中心で狂気的に叫び続けている。


 彼らの身体に目立った傷や異常はどこにもない。

 しかし、幽世に縛られた精神は今もなお蝕まれ続けている。

 そんな彼らに同情の余地はないだろう。


 早朝、誰よりも早く出勤してきた教頭先生が異常な状態で意識を失っている3人を発見し、その後彼らは救急車で運ばれた。

 しかし、治療を受けても意識が戻ることはなく、時折白目を剥きながら大暴れする彼らの姿を、お見舞いに行った生徒達がクラスで話題にしていた。


 クラスの奴らはそんな下賤な話題で盛り上がっていたが、浜崎開斗の父にそれらの話を報告しても、重い溜息をついただけだった。

 イジメの加害者達が地獄の苦しみを味わったところで、死んだ息子は返ってこない。

 息子の死という現実を背負ったまま、地獄のような現実を生き続けなければいけないのだから。

 

 それがいかに辛いことか、母と妹を失った俺には痛いほど分かる。

 だからこそ俺は、この痛みを絶望ではなく憎しみに変え、原動力にする。

 逃亡した父を探し出し、復讐するために。

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