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終幕

 チェーンテレホンの呪いの正体は、以前この学校でイジメを苦に自殺した女子生徒の幽霊だった。


 彼女がイジメで最も苦しんだのがチェーンメールらしく、ガリ勉だけど実はヤリマンだの、裏でこっそり援交しているだの事実無根の出鱈目をメールでばら撒かれ、日々知らないところで自分の評判が落ちていき、周りの見る目が勝手に変わっていくことが苦しかったのだという。


 馬鹿にしてくるような奴らなんて暇で怠惰で頭の悪い連中とでも思っておけばいいのに。

 俺くらいの鈍い神経を誰しもが持っていたら、若年層の自殺なんて半減しているだろうさと尾道は笑っていた。


 イジメられるのが嫌なら、空手をやって強くなればいいのにと祭火は言った。

 やっぱりこいつは脳筋なのかもしれないと改めて思った。


 女子生徒の怨霊を祓ってから、連日の生徒の死がぴたりと止んだ。

 毎日のように開かれていた全校集会で生徒の死を告げられることもなくなり、

 校内新聞では、


『とある謎の幽霊探偵によりチェーンテレホンの呪いにとうとう終止符!』


 という見出しで全校生徒に配布されていった。

 尾道曰く、新聞部歴代最高の売上だったという。

 襲われかけたというのに、俺以上に逞しい奴だとつくづく思う。


 登校せずに引きこもっていた生徒達が徐々に登校し始め、1ヶ月も経つと、ほとんどの生徒がこれまで通りの学校生活を送るようになった。


 尾道を襲った生徒はというと、警察に補導され、全員が退学処分となった。


 多くの生徒達にとって平和で退屈な日常が舞い戻り、俺自身油断していたんだと今振り返ってみれば思う。


 悪霊怨霊、呪い、邪神の類。

 あらゆる魔の者に襲われ、退けてきた俺だが、どうにも生身の人間相手となると隙ができるらしい。

 その日、下校時に雨が降っていた。


 人通りの少ない路地だったが、雨脚が強く、背後から近づく何者かの足音に気づかなかった。


 ドン、という軽い衝撃を感じた後、腹部が急に熱を持って痛み出した。


 アスファルトに溜まっていく水溜まりが真っ赤に染まっていくのを見て、自分が背後から刺されたことを後から知った。


――――――――目の前が真っ暗になった。

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