男子達に襲われそうになっている。助けて。
『次々に怪死を遂げる生徒達!?呪いから逃れる方法とは!!』
昼休みの時間、新聞部が新たに配布した校内新聞の大きな見出しを読みながら席で総菜パンを齧っていた。
生徒の死が相次ぐ中、重い空気感漂う学校内でここぞとばかりに不謹慎な話題と見出しを全面に推し出す尾道遠江の新聞部魂は称賛に値するだろう。
こんな記事をよく学校側が通したな……。
「新聞部の人達の誰かだってチェーンテレホンに参加したのかもしれないのに、一体どういう神経でこんな見出しで記事にしようと思ったのかな」
前の席に座る祭火は、サンドイッチを頬張りながら俺が開いている校内新聞を覗き込んで苦い顔をする。
「それがジャーナリズムというものなんじゃないのか」
「そうまでして新聞売りたいっていうことなのか、私には理解できないわね」
「売るっつったって今の2学年の出席率を考えたらな…………」
周囲を見回しても教室内の生徒数はまばらだ。
食堂が特別にぎわっているわけでもなければ、みんなが校庭で外遊びしているわけでもない。
生徒の多くがチェーンテレホンの呪いを怖がって家に引きこもるようになってしまったのだ。
特にチェーンテレホンが最も流行った2学年が深刻で、生徒数は全体の半分ほどしか出席していない。
「なんだかいよいよ終末感が漂ってきたわね。何か解決策はあるの?」
「今誰がチェーンテレホンの最終地点かさえ分かれば、そいつの元に行って呪いを解呪するなり憑いた悪霊を祓うなり手を打てるんだが、それが誰か分からない上に生徒の多くが引きこもり状態になられるとな……」
「私の友達も引きこもっちゃってる子多いし、友人のネットワークを使って調べるのも難しいわね。中にはヤケになって煙草吸いだしたり万引きを繰り返したりする子も出てきてるみたい。同級生なのに敵同士に見えてきちゃうわ」
早くも暗礁に乗り上げそうになりお互いに黙り込んでいると、沈黙を破るようにスマホの着信音が鳴り響いた。
友人の多い祭火のスマホの着信だろうと思ったが、俺のスマホだったことに驚く。
スマホを開いてメッセージを確認すると、尾道遠江からだった。
『男子達に襲われそうになってる。部室にいる。助けて』
「カモがネギ背負ってきたか」
「どういうこと?」
「こちらが探さずとも向こうから顔を出してきたかもしれない」
「よかったじゃないの」
「新聞部の部室に用があるから行ってくる。祭火は教室で待っていてくれ」
よかっただと?
確かに無駄な労力を省いてゴールに近づくことができたんだからよかっただろう。
それなら、なぜ俺はこれほどまで怒っているのだろうか。




