とある心霊ゲームが流行ってるの、知ってる?
「八代っていつも休み時間中寝てるわよね。学校生活楽しい?」
俺の名を呼ぶ女子の声に反応して机に突っ伏していた顔を上げると、目の前に立っていたのは、やはり祭火灯花だった。
熟睡しかけていた俺の安眠を妨げておいて彼女はなんの悪びれる様子もない。
どこか楽しげなようにも見えるが、一体どうしたのだろうとまで質問する気にはなれない。
とにかく眠い以外の感情が……。
昨晩は自身が運営しているオカルトサイト、『夕闇怪奇倶楽部』で新しく発見された心霊スポットのマップ更新やひとりかくれんぼに続く興味深い降霊術、聞いたことのない都市伝説などの新規ページを作成したりと夜通し作業をしていて圧倒的に睡眠不足なのだ。
クマだらけの眼で彼女をじっと見つめることで心情を分かってもらおうとしたが、当人は首を傾げるだけでピンときていないようだった。
「寝癖すごいよ?」
祭火はそう言って俺の頭頂部を優しく撫でる。
手首からほんのりと桜っぽい匂いの香水が漂ってきて鼻先をくすぐる。
寝落ちしそ…………う……だ……。
気絶しそうになったとき、後頭部を軽く叩かれ、その衝撃で机に安全着陸しかけていた俺の顎が激突したおかげで意識が戻ってきた。
「人がせっかく話しかけてきてんだから起きなさいよ」
「鬼かお前は…………」
俺からしてみれば、祭火灯花という存在が校内で1.2を争う美少女だろうがスクールカースト最上位だろうが関係なく現時点では血も涙もない悪鬼にしか見えない。
――――――――神野のヤロー……、チッ。
――――――――なんで神野なんかが祭火さんに……。
しかし、周囲の男子からしてみれば、祭火灯花に話しかけてもらえるだけで嫉妬の対象になってしまうのだからルッキズムの社会は残酷だ。
「公衆の面前で俺なんかに堂々と話しかけていると、祭火まで友達いなくなるぞ。ただでさえ、こっくりさんの事件で2人も仲の良い友人をなくしているんだろ」
「あの2人のことは……もういいの。私も含めて自業自得だからさ。それに、八代には色々助けてもらったしね。これからも何かあったら助けてね」
「もう降霊術とか変な事には手を出すんじゃないぞ……。大抵は碌なことにならないんだからな」
こっくりさん事件当初はショックを受けていたせいか元気がなかったが、1週間も経つと
いつも通りの彼女に戻っていった。
女の友情は儚いなんて聞くが、祭火の性格は薄情ではないので、2人の友人を簡単に見限ったというわけではなく、友人を失った悲しみと現実にしっかりと折り合いをつけたのだろう。
「そういえば、最近学校でとある心霊ゲームが流行ってるの、知ってる?」
「知らん」
嫌な予感がした。
「チェーンテレホンっていうんだけどね。昔中学生くらいのとき、チェーンメールって流行ったじゃない?あれの電話バージョンみたいなゲームなのよ」
「祭火もやってるのか?」
「うん」
ほらやっぱり…………。




