あ、これ死んだわ
あとがき
今回もリバース・ワールズ・アカデミーを読んでくださりありがとうございます。いやー刹那君助かってよかったですね。まさか従者になるとは(他人事)。私結構十何年か前のラノベ、例えばゼロの使い魔とか精霊使いの剣舞などが好きですね。なので内容のいくつか参考にさせてもらってます。ということで次回もお楽しみに。フォローやレビューをしてくださると逆立ち日本一周できそうなぐらい喜びます。
「ひとまずあいさつをするとしよう。私はこの街を統治しているカルネシオン家現当主、
エルター・カルネシオンだ。君は刹那くんと言ったね」
男は微笑みながらそう言ってきてはいたが、その男の後ろに虎でもいるのではないかと思わせるほどの緊張感を俺の身に与えてきた。だが極力それを見せないように落ち着いた態度で俺は言う。
「はい、お、俺は天童寺刹那です」
とは言え、こんな端的な言葉しか出す余裕がほとんどないとは、我ながら不甲斐ないやつだと思う。
その後、男が一瞬だけ冷気を纏わせて冷静な口調で紡ぐ。
「その名前は、地球のとある国の人間と同種のものだ。つまり、君は私たちの敵という扱いになる可能性がある。いや、もしかしたら地球側のスパイだと勘ぐっているのだよ」
「――っ!」
正直そんな感じはしていたしさっきのフレアだって、赤い空だって違和感しかなかった。なるほど、俺は地球から来たのか。
そんなことを1人で納得していると、男が続ける。
「しかも君は記憶がないと言っているんだろ?それが嘘である可能性は十分にあり得る。そうは思わないかい?」
それに対しては確かに向こうが正しい。こんなどこから来たかも定かじゃない男をいきなり娘が拾ってきたら疑わざる負えないだろう。
そう考えていた直後に男が手をかざし、俺の頭上に赤い魔法陣を展開させた。
「これは一体」
その問いに男は答える。
「この魔法は対象の心の一部を見透すことができる。これで君の記憶を覗かせてもらうとするよ」
なるほど、魔法とはそんな事ができる代物なのか。
「この魔法は基本的に使ってはいけないのだが、尋問を行うときだけは使うことを許されているんだ」
まぁさすがにこんなものを街中で知らないうちに使われたとなればやられてる側にとっては大問題だな。そんなことを考えているとどうやら始めるようだ。
「では、覗かせて貰うよ」
その直後、その魔法陣が俺の体に降りてくる。なんとも不思議な光景だ。男は目を瞑り、俺の奥深くを覗こうとしているようだ。
「確かに、君は記憶をなくしているようだな」
なるほど、しっかり俺の記憶を覗けているらしい。男は入念に俺の中を覗いているのか、かなり渋い顔をしている。一瞬何かを見つけたのか、眉間にしわを寄せたような気がしたがもう一度見ると男は目を開け言う。
「分かった。君は本当に記憶がないようだ。…ただ」
何か含みがある言い方だな。しかもなんかニヤけてるし、何か俺の中から見つけたのだろうか。
「ただ?」
男は俺の問いに慌てて訂正してきた。
「い、いや何でもないんだ。気にしないでくれ」
何だ?何か隠しておくべきものがあるのだろうか?
「それよりも、君は記憶喪失ということでこれからの処遇に付いてだが」
そういえば、ここに来る前にリンに学園に通うという話をされたような。その話だろうか?
「それはもしかして、学園のことですか?」 その問いに男ははっきりと頷いた。
「そうだ。私が治めている学園でこの国の人間として、もといそこにいる我が娘リーン・カルネシオンの従者として魔法を学びなさい。学園内なら私の監視下で生活するため記憶を取り戻したとしても、何かされるリスクが幾分かマシになるだろう。ひとまず」
なるほどな。確かに魔法には少し興味がある。それに俺の記憶が戻るとは決まってない以上、俺がこの国の人間として扱ったほうが何かと都合がいいのだろうな。そのように考察していると、さらに男が言う。
「これから君はリンの従者として学園に通ってもらうわけだが」
一呼吸置いて、あまりのもとんでもな発言が飛び出す。
「では刹那くん、私の学園の寮内のリンの部屋で一緒に生活してくれ」
「「え?」」
俺とリンの声が重なる。そして先に口を開いたのはリンだった。
「な、何そんなこと言ってるのよお父様!?」
リンがリンゴのように真赤に顔を染めていった。
「そんなことしたら私がこのケダモノに襲われちゃうかもしれないじゃないのそれでいいの!?」
そんな自分の娘からの言葉に男は笑いながら返した。
「生憎と、今は寮の空き自体かなり少なくてね。男子寮に関しては今ほんとに余裕がないんだよ」
「だからって何でこんな奴と一緒の部屋なんかにするのよ!私は絶対反対よ!!」
リンが声を荒げてそう言う。だがそれにも諭すように男は言った。
「リン、君も知っているだろ?我が校が従者の同室を許可していることぐらい」
(何でこの人こんなに楽しそうに言ってるんだ…)
「ぐぬぬ…」
リンが言葉に詰まっていると男はトドメだと言わんばかりに勢いよく言い放った。
「そもそも彼は記憶喪失、こんなここがどこかすら分からないのに世話をする者がいないというのはどうかと思うが」
「うぐっ」
「それに、彼を見つけてここまで連れてきたのは紛れもなく君だ」
「うぐぐ〜…」
「君には彼をここまで連れてきた責任がある。君は責任を取って君が彼の学園内での世話をするべきだと私は思うがね」
(だから何でこの人こんなに楽しそうなの!)
さっきまでは威厳の塊みたいな雰囲気醸し出してたのに今は完全にいたずらが成功したみたいな顔になっている。この人はこっちの表情が素なのだろうな。なんだか笑えてくるな。
そんなことを思っているとリンがギロリとこちらを見やる。とても人に向けるものとは思えない殺意のこもった目を向けられて恐怖すら覚えた。ゆっくりとこちらに近づいてくる。
「へ?」
待ってなんかほんとに殺されそうなんだけど、え?ほんとにこれやばくないか?
俺はゆっくり後退る。だが少ししたら本棚にぶつかってしまったようだ。だがリンの歩みは止まらない。あ、コレ俺死んだわ。リンが、俺の眼前まで迫り足を止めた。
「…アンタ」
「ハイッ!」
リンが荒い声音で言った。いやマジで怖い。
「…しく…」
小さくリンが何か呟いた。
「へ?なんて?」
そうしてリンがまたボソリと呟く。
「だから…よろしくって行ってんのよー!!」
その言葉とともに強烈なアッパーが飛んできた。今日だけで俺何回ぶっ飛ばされればいいんだほんとに…
けれどもこれからのことは決まったな。俺は、魔法を学ぶ。リンとこれから行く学園で。まぁこのお嬢様との生活で俺が死ななければ、の話ではあるが。
「いてて、でもまぁひとまずこれからよろしく頼む。リン」
それに少しそっぽを向きながら、リンが答える。
「ええ、私の従者としてよろしく。刹那」
さて、学園ってのがどんな物なのか楽しみだ。




