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リバース・ワールズ・アカデミー 記憶喪失の俺は反転世界の学園で頂点に立つ  作者: カギナナ


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2/4

反転世界

刹那がリンと出会ったのと時を等しくして、朝日奈恵は東京都内の病棟で目を覚ました。

 意識がはっきりするに連れ、自分に何が起こったのかが蘇ってくる。

(そうだ、私確か…せっちゃん)

 その瞬間、大粒の涙を流し、刹那の背中が離れて行った様子が鮮明に蘇った―――


 30年前異次元の扉が開かれた。

 突如として現れたのは1匹の龍と現実ではありえないような異形の生物の群れだった。それらが数年間に渡り世界を荒らし、龍は完全にこの世界を己の住処とした。そして今から25年ほど前になると、次元の歪みによって地底に繋がったと思われる反転世界からの侵略者がこの世界を侵略し始めた。侵略者たちは明らかに人間ではありえない、魔法のような術を有しており、今の科学レベルでは対応が難しいものだった。それが及ぼす影響も龍による被害と同等のレベルであった。

 そんな中、多くの人類に新たな力が宿った。その異能の力は神から与えられた「神性」と呼ばれ、神性を手にした人間達はいつしか反抗者と呼ばれるようになった。より強い反抗者達の力は侵略者にも対抗しうる人間の大いなる希望になった。

 反抗者により侵略者たちによる侵攻を食い止めることに成功し、後退し続けていた文明が回復し始めることが出来た。それにより、現在神性を宿した多くの反抗者たちが所属する組織が設立された。

 それが反抗者ギルドである。それは新たな軍事組織として各地域の防衛手段の役割を担い、尚且つ復興のために大きく貢献した。そして、ギルドの1番の目的はこの世界を追い込んだ元凶である邪龍を討伐することだ。



 刹那と恵は都市部からかなりの離れの場所にあるにしてはかなり大きい街で生活していた。そこはまだ大きな被害を受けたことのない街の一つだった。

 恵は刹那をいつものように電話で買い物に誘っていた。

『ねえせっちゃん、明日服一緒に買いに行こうよ!』

『えぇ~またかよ、先週も買い物行ったじゃないかよ』

『別にいいでしょ減るものじゃないんだし』

『しょうがねぇな。分かった、行ってやるよ』


 そして翌日、恵は刹那の住んでいるマンションに行った。

「あっ!恵お姉ちゃんおはよう!」

 出迎えてくれたのは刹那の妹の夏芽だった。天真爛漫な笑顔を見せている彼女はまだ幼く、10歳だ。

「おはよう夏ちゃん。今せっちゃんいる?」

「うん、いるよ。お兄ちゃん、恵お姉ちゃんが来てくれたよ」

 夏芽が声をかけて数秒後、あくびをしながら刹那が来た。

 そんな刹那に恵は声をかけた。

「せっちゃん、準備できてる?」

その言葉に思い出したように刹那が答える。

「あ、そういや買い物行くんだったか。眠すぎてさっきまで昼寝してたわ」

 そんな刹那に起こり気味にムスッとした表情で恵は言った。

「もう、いつも夜遅くまでゲームしてるからだよ!ちゃんと早く寝ないと!!」

 またも眠そうな顔で刹那は答えた。

「へいへい、善処しますよ〜」

 そんな他愛もない会話を終え、共にショッピングモールに向かった。

「ふんふ♪ふふーん♪」

「十分とご機嫌だな、恵」

 それを聞いて当然かのように恵は答える。

「だってせっちゃんと一緒に買い物出来るのが楽しみなんだもん!」

 刹那は恵に毎日変わらないようなこの日常でよくもまぁここまでずっと笑顔でいられるものだと感心していた。

 刹那と恵が育ってきたこの15年間は魔物のや反転世界の侵略者の侵入をほとんど許しておらず、許したとて複数のギルド所属の現象級反抗者がこの街には居るためそこまで被害が出ることはなかった。そうやってこの街の平和は保たれている。

 そしてまた、ここの住人のほとんどが小さい頃に神性を与えられている。神性の種類にも様々あり、例えば自分の手から火球を飛ばすことが出来たり、自分自身が空を飛ぶことが出来たり、本人の身体能力を強化したりなどその能力は個人特有のものだと言っていい代物で、同系統の神性だとしても最大出力や、その能力の操作性には差が生まれることは少なくない。そしてそれらの能力を与えられた人間たちは能力によって固有級から神話級まで5つの階級が定められている。




固有級︰その能力の発動が確かに認識できるレベル。これらの反抗者は焚き火ほどの火や1度に水槽分の水を出すなどの生活が向上できる程度の能力を持つ。

異常級︰ギルドに所属する反抗者の大半がこの階級に属している。総数が多いために街の復興時や工事などの職などで貢献している人間も多数おり、技術革新にも貢献している。


現象級︰ギルドの上級戦力。幻想、神話級と比べるとその数も多くなる。各市街地の警備隊長を任されている事が多い。


幻想級︰複数人で軍隊と戦うことが可能なレベル。小さな町なら1日で地図から消すことも可能な能力を持つ。


神話級︰魔物、侵略者と対抗する上での最高戦力。1人で戦術兵器にも匹敵する能力を持ち、現在は世界で5人しか確認されておらずその存在は秘匿されており、幻の階級とされている。そのため、幻想級が一般的には最大の力となっている。神話級には異次元にも干渉できる反抗者がいるとか。


 そのような階級がある中で神性を与えられなかった無能力者は、「神から見放された劣等種」として差別の対象になってしまう事が多々ある。

 そして、侵略者に対しても同様の階級で被害レベルを設定している。

 そんな世界になってしまった中で恵は固有級の反抗者である。成績優秀なために刹那と恵の高校では優等生として知られている。そして刹那はと言うと、階級は無い。つまり無能力者。学校では話すことが出来る人間などいない。いたとしても、そいつらは刹那のことをパシリにしたり、無能力であることを馬鹿にするような人間ばかりだった。そのたびに、恵が間に割って入るという構図が日常的になっている。ただ、恵は知っている。刹那が誰よりも人のことを想える人間であることを。



「とは言え、今日も今日とて平和だな〜」

 歩きながらそんなことを言っている刹那に笑いながら恵は声をかける。

「そんなおじいちゃんみたいなことを言ってどうしたの?」

「いや、なんとなくそう思っただけだ」

恵は「ふ~ん」と返しながら1歩先に歩き、刹那の手をつかんだ。

「私早く買い物したいからさ、そろそろ急ご」

 それを聞き、刹那は応えようとする。

「ああ、そうだなちょっと早めに―――ッ!」

 応える瞬間大きな地震が街を襲った。

「え何!?地震?」

 刹那は恵の手を強くつかんだ。

「恵!手、放すなよ!」

「う、うん!」

 数秒後、その地震がおさまった。幸い近くの建物には被害は出なかったようだった。

「ふう、なんとかおさまったみたいだな」

【!!!!!!!】

気が緩みかけた瞬間、各地から大きな警報が鳴り響いた。

「め、恵!コレってまさか!」

 その言葉に恵が答える。

「うん。コレは、「大型の魔物の襲来」の警報だよっ!!―」

 恵がその言葉を紡ぐと同時、轟音が響き渡り、大きな魔物が二人の頭上を通り過ぎた。それを見て刹那たちは急いで避難施設に向かって足を進めた。

(酷い、街がこんな風になっちゃうなんて)

 周囲に目を向けるとつい昨日まで人が笑顔を見せながら暮らしていたとは思えない程の酷い惨状となってしまっていた。

「う、嘘…」

 向かったシェルターの入り口の前で恵は膝を崩した。その入り口では周りの建造物のものだったであろう瓦礫が元々大人3、4人分の幅があったはずだったスペースを丸々覆い尽くしていた。それによって絶望の表情を浮かべていた恵を見て刹那は覚悟を決めたようにその瓦礫の壁の前に進み、瓦礫の一つを力いっぱい持ち上げた。

 刹那が何をしているのか恵には全く理解できなかった。

「せっちゃん…?何をしているの?」

 それを受けて刹那が強い意志を込めて言葉を放つ。

「俺がここでお前が入れるぐらいの穴を作る!だからお前はそこで待ってろ!」

 一つ一つの瓦礫を肩で息をしながら持ち上げ少しずつ人間が入れそうな穴まで拡がりつつあった。が、その瞬間に後方から大きな雄叫びが聞こえた。それは魔物の声であることがすぐ分かった。そして恵がその方向へ振り返ると動物とは思えないほどに大きな動物の尻尾が覗かせていた。

「ねぇせっちゃん!もう魔物がそこまで来てるよ!早く別のところに逃げないと!」

 刹那は能力を持っておらず、恵も能力を持ってはいるものの、今の力のままのこの状況では無いに等しいものだ。

 恵の言葉に対して怒気を孕んだ声が飛ぶ。

「うるせぇ!二人で逃げてもどうせじきに追いつかれちまうだけだ!俺のことはいいからお前だけでも早くここに入って地下に逃げろ!」

 そう言ったと同時に女性が1人入るギリギリの穴に促した。

 そして恵がその穴から入った瞬間、もう汗で顔がぐちゃぐちゃになっている刹那の前に大きな魔物が現れた。

「せっちゃん!」

「恵!とっとと地下まで逃げろォォォ!!!」

 その言葉を聞いて恵は涙をこらえ、地下に伸びている階段を全力で下った。

(せっちゃん…ごめんね…)

 下って行ったことを感じ取った刹那は全力で走った。魔物も追いかけてくる中、山の方へ走り、通常は立ち入り禁止とされている入り組んだ道も全力で逃げた。そして逃げ続けると、刹那は足を止めた。そう、そこはどこまで続いているのか全く計り知れないほどの大穴だった。そこに入れば死はほぼ確定と言っていいだろう。

 そんなことを考えていると、大きな魔物がもう目の前まで迫っていた。

(オレはもうおしまいだな…)

 刹那は意を決したようにその大穴に飛び込んだ。

(恵、今まで守ってくれてありがとうな。最後まで護れなくてごめんな)

 刹那は一雫をこぼしながら闇へ消えていった。その瞬間、誰かからの声が響いた。

『ソレは力なり、器となる神の力なり』

 声が止んだ直後、闇の中から一筋の赤い光が少しずつ大きくなって言った。そして、その光の先には、赤い空があった。



あとがき

今回もリバース・ワールズ・アカデミーを読んでくださりありがとうございます。今回は刹那君が向こうの世界に行ってしまった経緯や現世の置かれている状況を書いてみました。これからも読んでくださると幸いです。ブックマークやレビューをしてくだされば私が飛び跳ねます。

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