どうやら婚約者がイジメをしているらしい
書きたいところだけ書いたら分かりにくかったので、付け足していったらさらにわけわからないものになってしまいました。
当事者を置いて話が脱線しがち。
「ゴルドー令嬢にいじめられてました…」
そう男爵令嬢が言い出した。
「俺に訴えるということは、俺の婚約者のほうということか?」
ゴルドー家には俺と同い年の長男のリンフォード、そしてその双子の姉のフェリシアと1つ下の妹のクローディアがいる。
俺の婚約者は妹のほうだ。
ことの発端は目の前の令嬢がずぶ濡れで歩いてきたことだ。
些末なことならば俺自ら関わる気はなかったが、さすがに目についたので、友人のひとり、ティードが声をかけた返答が、冒頭である。
「はい。実は以前からいろいろ言われてて…でも私なんかが言い返せるわけないじゃないですか…。そうしていたらだんだんとエスカレートして…最初は持ち物の紛失とかだったんですけど…バカにしてきたり、背中を押されたり…」
そう次々と被害を訴えていく。
聞くに限りバリエーション豊富だな、と。
だが。
「もし事実なら何故彼女は令嬢を?」
「わ、私が殿下と仲良いからだと思います…」
「……そうか」
さて、どうしたものか。
「やぁ、殿下。そろそろ程々にしないと我が可愛い妹が怒りでとんでもないことをしでかすかも知れないぞ」
「リンフォード」
ゴルドー家長男、俺の友人の一人である。
人前でないのに敬語で、俺を殿下と呼ぶということは少なくとも俺に不満があり、かつ、婚約者の肩を持つということだ。
俺は息を吐く。
「俺は悪くないはずだが」
「しかし限度というものがありましてね。臣下として友人として俺だってできれば殿下の味方でいたいんですが、可愛い妹の言い分もありまして。聞くと妹のほうが正しいかな~という次第です」
「俺とクローディアが対立するとお前は高確率でクローディアの味方だろうが」
「まぁそれはそうですよ」
即答。即答かよ。このシスコンが。
「最悪の場合フェリシアも出てきますよ」
「早急に対処しよう」
俺も即答。フェリシアが動く前に片付ける。
あぁは言ったが、大したことはない。
クローディアのもとへ足を運ぶ。
「やぁクローディア。最近俺のせいで不機嫌と聞いた」
「…えぇ、そうですね。ご理解いただけたようで何よりです」
貼り付けた笑顔に息を吐く。
そして口を開いたとき、背後から悲鳴のような声がした。
「クローディア様はそうやってまた殿下を困らせるんですか!?」
ざわりと周りに動揺が走った。
当然である。王族の俺と婚約者である公爵令嬢との会話に唐突に割り込むだけでなく、公爵令嬢相手に批判。
学園は平等を謳っているが、無法地帯という意味ではない。
さすがに場所を移動しようとするが、令嬢がやたらと興奮して話を聞かない。
面倒になったのでここで片付けることにした。
「とりあえず、クローディア。このお嬢さんからいじめられたと聞いたんだが意見は?」
「え…。…まず、理由がございません。ちなみにどのような内容ですか?」
「そんな、ひどい! 私が殿下と仲良いから嫉妬したんでしょ?!」
声を張り上げる横で、構わず俺が聞かされた内容を告げる。
するとクローディアは小首を傾げる。
「…もし、本当に私が嫉妬でいじめをするとしたらそのような可愛らしい内容で済ませると殿下は思っていらっしゃるのですか?」
「いいや?」
「…え?」
即座に否定する俺とポカンとする令嬢。
ちなみにリンフォードは笑いを堪えて震えていた。
他の友人のザザとティードは苦笑。ユールは何故か顔を覆っている。耳が赤い。何故だ。
巻き込んでやろうかと口を開いたとき、聞きたくない声を聞いた。
「何やら面白い場面ですのね」
背筋が伸びる俺とリンフォード。
クローディアは目を瞬かせた。
「あら、お姉様。お忙しいのでは?」
「可愛い妹に会いに行ったら殿下と中庭に、と返答いただきましたの。そうしたら茶番劇が始まっていて思わず声が出てしまいましたわ、ごめんなさいね?」
うふふ、と淑女らしいフェリシアの笑みに、ギャラリーは惚けている。羨ましい。俺もできれば騙されていたい。
「途中からの観劇でしたので分からないことがありますの。参加させていただきますね?」
普段なら「よろしいですか」と伺う形を取るが、そうでないところを見ると、うまく対処しなければ俺は怪我をする。そして伺う形だとしてもそれはもう決定なのだ。参加したい旨が告げられた時点で決定している。
「そこのあなた、えぇ、そう、あなたです」
「わ、私はジャクリーン・マルシェンと申します」
「そうですか。あなたはクローディアが嫉妬でいじめをしたとおっしゃいましたが、具体的には何を求めていますか」
「え? えーと…あの、謝っていただければ…その…」
チラチラとこちらを見る意味がわからない。俺も謝れということなのか。
「謝罪ですか」
「は、はい。あの、私が殿下と仲良いから婚約者として面白くないのはわかってますが、でも、だからといっていじめは良くないです。それにクローディア様はよく殿下を困らせてばかりで…私ならそんなことはしません!」
「は?」
思わず声が漏れる。話が飛んだな?
だが令嬢は何やら盛り上がっていた。先程から思っていたが一人でよく突っ走れるものだ。
「もう殿下を解放してあげてください。私もう見てられなくて…」
悲しげな表情は確かに悲劇のヒロインだった。
だが、そんな令嬢をフェリシアは笑った。
「わ、笑うなんてひどい! …殿下!」
「え、俺? …えーと…確かに一生懸命な人を笑うのは良くないぞ、フェリシア」
「失礼しました。あまりにも見当違いの一人芝居でしたので堪えきれませんでした。…私もまだまだですわね」
「そんなことありません、お姉様は私の理想の淑女です」
「まぁ嬉しいわクローディア。貴方を幻滅させないためにさらに頑張れるというものです」
「い、今はそんな話はしてません!」
姉妹の会話に令嬢が割り込む。度胸あるな。
「私はクローディア様に謝罪と殿下の解放を求めます!」
「却下だ」
「…えっ? え、殿下?」
「そもそも男爵令嬢がそんな権限があるわけがない」
「え、でも、でも…! リン様と殿下がクローディア様についてお話してたじゃないですか! クローディア様が怒ってて、それをどうにかしろって!」
俺より先に反応したのはリンフォードだった。
「立ち聞きしたのか」
「あ、いえ、そんなつもりは…」
「いやそこはいい。別に隠れてたわけでもないしな。だが、そもそもマルシェン嬢、俺はその呼び名を許可しないと何度も言ったはずだ、いい加減にしてくれ」
「でも、でも私達はお友達で」
「そう思ったことは一度もなければ仮にそうだとしたら嫌がっているのに改善しない友など不要だ」
リンフォードはリンと呼ばれるのを嫌う。
幼少期は愛称だったが、当時の外見も相まって女とからかわれたのが原因だ。
『私も愛称はリンなんです。お揃いですね、親近感湧きます』
とか言ってたな。リンフォードは外面用の絶対零度笑顔で拒否してたが、あの仮面のような貼り付けた笑顔が受け入れられたように感じたのだろうか。それならそれはすごいな。曲解か鈍感か。
「もう面倒なので終わらせるぞ。そもそもマルシェン令嬢と仲が良いと誤解される理由がわからないんだが、そうだとしたら我が公爵家としては先程聞いたような庶民的嫌がらせで済ませるわけがない」
「え?」
「いいか、婚約者がちょっかいかけられたなら苦言、忠告する。婚約とは契約だ。それを破棄するような行動に申し立てるのは当然だ。それを無視するなら共にいられなくすればいい話だ。だがそもそも殿下は令嬢と親密ではない。ゆえにクローディアが嫉妬などする理由がない」
「で、でも私は他の人より殿下達といましたよね!?」
「令嬢が追いかけて来ていたからな。殿下より俺たちと会話していただろ。当然だ」
令嬢があまりに狙いがわかりやすくて、だが退学までではなかった。俺自身が相手すると処罰が重くなりすぎるから、友人達に対応を任せていた。
特にザザが進んで買って出てくれた。確かに適任と思ってお願いした。もちろん彼も距離は保っていたし、みな、ちゃんと忠告もしていたんだが、何故か愛されていると思ったらしい。何故だ。
だから、どうしたものかと余計に悩む羽目になったのだ。
ほぼ挨拶程度の誰とも変わらない程度の交流で「俺と仲がいいから嫉妬してイジメ」と言われては頭を抱えるしかないだろう。
「く、クローディア様が怒ったというのは…」
「そのことについては私も申し上げたいですわ。殿下、クローディアが可愛いのはわかりきったことですけど贈られてくる品が多すぎます。回数も頻繁すぎです。下手をすれば我が公爵家は貧困状態でないかと思われる可能性が出てくるではありませんか」
フェリシアが割って入ったら、クローディアとリンフォードも頷いた。
「お兄様やお姉様からも頂くので少し落ち着いてほしいのです」
「そうだぞ、殿下は湯水のように使いすぎていませんか」
「クローディアに似合うと思うものを贈るのは当然ではないか。貢ぎと勘違いされるようなミスはしてないし、ちゃんと俺の私財からだ。俺がそんなミスをするわけなかろうが」
「それでも多すぎです」
「使ってくれたら嬉しいというだけで、無理にとは言わないし気に食わないなら捨てるなり返却なりすればいい。贈った時点でクローディアの私物だ」
「殿下から頂いたものを拒否するわけないじゃないですか。嬉しいのは確かなんですから」
「クローディア…」
近づくと双子に遮られた。
「今、何しようとしました?」
「私達の前でそんなこと許すはずありませんことはご理解いただけて?」
このシスコンどもが。
「ちょっと待ってください! ど、どういうことですか!?」
「どうもこうも。俺はクローディア一筋だし、浮気を疑われるような振る舞いをするはずがない。他の令嬢など興味もない。クローディアを不安にさせることをするはずがない」
「クローディアを溺愛してるのはわかりきっているから俺たちはその手の心配などない。殿下は他の令嬢を不用意に近づけないし、それでもという令嬢は俺たちが対処する」
「あわよくばと思っていたようですけど、後ろ盾もない男爵では無理となりますし、仮に殿下が望んだとしても自力で対処できないような方を認めるわけには行きませんわ」
「じ、自力で?」
「殿下に守られるような方は認められないということです」
仮に俺に何かあった場合に指揮を取るのは婚約者となる。その立場の者が俺に守られなければならないのは許されない。ゆえにそういった能力も必須だ。そして実家の力も必要なとき、使えるくらいでなくては有事の場合国が破綻してしまう。
「そんな、だって私は男爵家で!」
「えぇ、ですからそもそもが無理な話ということです」
「…守られるって言うならクローディア様だって何もできなかったじゃ…ひっ!」
喉を詰まらせたのは俺が視界に入ったからだろう。
「先程から度胸があるなとは思っていたが、ここまでとはな。クローディアがお前に対して何もしてないのは当然だ。理由がないからだ。お前と何の関係でもないし友人にもなってはいない、周りが誤解するような距離に置いてもいない。これは俺の人間関係の問題でクローディアが対応する内容ではない。クローディアをこんなことで煩わせるはずがないだろう、この俺が。何もできなかったのではない、何かする必要がないからだ」
むしろ下手に動くとことが大きくなるから迂闊に動けないということもある。
さらに詰めようとしたが、ザザに止められた。
「はーい殿下、そこまでにしてあげてください」
「ザザくん!」
「こわかったね~リンちゃん。でももう大丈夫だよ〜。殿下はクローディア嬢がいるからね~ちゃんと落ち着かせてくれるよ~」
「猛獣扱いするなザザ」
「似たようなものでしょ〜」
「ザザくん…? ザザくんは私の味方、よね?」
「え? どうして?」
「と、友達じゃない!」
「仮に友達だとしたら間違いは正さないとね~だから無条件に味方とは言えないかな~」
「え? えっ? あ、あんなに仲良くしてたのに!」
ザザの表情が変わった。笑顔のままだが、変わったことが分かる。
ヘラヘラとしていたのが、貴族然とした微笑みだ。
「いやだって、僕たちが相手しないと殿下に突進したでしょ? あれはまずいよ。相手は王族だし婚約者もいる。しかも溺愛の。だからそのことを伝えたんだけど、何かうまく伝わらなかったよね、どうしようか困ったよ」
わざと伸ばしていた語尾もなくなった。
勘違いをさせないよう忠告していたときも距離を置くような態度だったんだがな。
どこまでも通じなかったらしい。
「で、でも優しくしてくれたじゃない…」
「憧れて近づくくらいなら邪険にできないでしょ? ま〜リンちゃんはしつこい部類だったけど、それでもそれだけだったし。…でもさ、それを面白くないと思う人はいるのは確かだった。だからいじめ自体は虚偽でも自作自演でもない」
「そ、そうなの! 私、本当にいじめられてて…その…ある人に…こわくて、つらくて…」
「でも犯人は嘘だし、噴水に突き落とされたのも嘘」
「…えっ」
先程の演技力はどうしたと思うくらいにわかりやすく真っ青になる。よく王族や貴族の相手になれると思ったものだ。愛人なら妥当かもしれないが。俺はクローディアのみを求めるから理解できなくて構わない。
「殿下に近づく人間を調べないわけないじゃないか。しかも僕たちにもすり寄ってくるとなると余計にね。最初は夢見る少女だな~としか見てなかったけどね、粘り強かったから予想はしてたんだよ。少なからず何か起きるってね。実際起こったでしょ? クローディア嬢を犯人にするかも~なんてティードと冗談で言ってたら本当に言ってびっくりしたよ。君への嫌がらせの犯人は当然別の人で、噴水の件についても知ってるんだ」
「わ、私は本当に…突き落とされて…濡れて…」
「濡れたのは事実だけどコップの水をかけられた量で、噴水は嘘。目撃者もいるよ。自分で飛び込んだって」
「その人が嘘ついてるんです!」
「えっ、僕たちが?」
「…え?」
「あの時、僕はランセル様とともに殿下のもとに向かっていたんだよね。するとリンちゃんが噴水の前にいた。濡れていたから噴水に何か落として取ろうとしてたのかなって思ってたら飛び込むんだもん。声をかけるか迷ったけど、これは何かあるなと思って黙ってた。濡れた人を無視するのはどうかとも思ったけど、自ら飛び込んだから自分で何とかするんだなって思い直してさ」
ちなみに、ランセルは俺の弟だ。
「あ、あと目撃者はまだ他にもいるんだよ。水をかけた犯人とその兄。衝動的に水をかけてしまい、後悔はしたけど怒りはまだ収まらずに友人に話ししていたらちょうど会った兄に怒られて謝罪するために追いかけたんだって。その兄妹に口止めをしたのは僕。犯人だから嘘をついてる、なんて言わないでね。少なくとも兄は嫌がる妹を引っ張ってまで君に謝罪させようとしていた」
俺がどこにいるか知らないからザザより遅く来た。だから目撃者がザザとは思いもしなかったのか。
「我々の対応が甘かったからこんなことになってしまったようですね。マルシェン令嬢、申し訳ない」
「あ、ユール復活した?」
「えぇ何とか。内容は薄いのに我々のせいで話がズルズルと広がって殿下やクローディア様たちにご迷惑をかける羽目になってしまい…もう恥ずかしくて」
「仕方ない、あそこまで粘られると思わなかったし話も通じないとは思ってなかった。強引な手を使うわけにもいかなかったし。だが苦労は無駄ではないはずだ、次に活かせばいい」
「いえティード、こんなことこれっきりにしたいんですが」
「大丈夫だって〜、同じ轍踏もうとする令嬢はいなくなると思うよ~」
「そうだぞ、これだけ婚約者に夢中ということがようやく周知されたんだ、無駄だと理解するだろう」
「待て。俺は別にクローディアへの愛を隠していたわけじゃないが」
「わかりにくいんですよ。我々のように付き合いが長くなきゃ普通の政略結婚の付き合いにしか見えません」
リンフォードの言葉が地味にショックなんだが。
「クローディアはわかってくれているな?!」
「はい。大丈夫です、ご安心ください。さすがにそこまで鈍感ではないです」
「そもそも殿下は外では全然違いますし、そのような誤解が生まれるんですわ」
フェリシアが我がことのように不満を垂らす。本当にこの双子、シスコンが過ぎる。
「外聞があるから同じ訳にも行くまい」
「えぇ、ですからご安心ください。今回のことでみなさん理解できたかと」
「それならいいが」
「今回のこと、私は何もしなかったことがだめでした。殿下を信頼してますしお兄様たちも信用してますが、婚約者として対応すべきでした」
「顔見知り程度の会話でクローディアが出るほどじゃなかった。クローディアが出るほうが問題になった。むしろ俺の態度が良くなかった」
もしクローディアが出ていたら何て嫉妬深いのかと言われていたはずだ。嫉妬されるのは嬉しいが、クローディアに悪評があがるのは許さない。
クローディアを溺愛してると周知されていなかった事実もだが、正直、俺がだめならって他の人とって感じだったので友人に任せすぎたのも悪い。
「…さて、令嬢の件ですが、我が公爵家としてはクローディアへの侮辱、冤罪について訴えます。他のことについてはお任せしますわね」
「わかった。詳しく精査し対処する」
ザザたちの報告によると、母親が男爵の愛人だった元庶民で昨年引き取られたようだ。男爵の奥方が亡くなり、子どももいなかったので引き取ったという。子どもがいなかった理由も奥方が拒否したというから男爵自身については察するものがある。
婿を取るなり嫁に出すとしても人脈が弱いため学園に編入させたが、教育が追いついていなかった。もともとの性格もあるかもしれないが、そこは不明とザザは言っていた。だが教育がなってなかったのは確実だ。そうしたらもう少しうまくやれただろうに。成功するかは別として。
俺たちへの接近の他にもやらかしてたようだ。特に男に甘えるのが上手だったらしく、女生徒の反感を買っていた。
いろいろ言われていたのも、男との距離が近かったり婚約者がいても構わない態度だったりと言われて当然の苦言や、貴族のマナーを理解しようせずに自由奔放さに対する注意だった。
なのでバカにするのも当然だ。マナーがなってないからだ。
なのに反省もなしに被害者面されては余計に腹が立つものだ。物に当たるほどになり、暴力にエスカレートした。
幸いなのが、貴族令嬢なので深刻さはなかったことだ。背中を押されても力が弱く、あの男爵令嬢のほうが体幹が強かったらしく怪我は一切なかったとのこと。押したのも階段ではなく廊下だったり、叩くのも素手で肩だったりと本当に余程のことがない限り危険はなかった。家の力を使うこともしなかったのも幸いした。
だが器物破損や暴力は許されないのでそれに見合った処罰は下されたが。
公爵家への賠償金だけで男爵家は息も絶え絶え。そして今回のことで婚姻も難しくなった。
学園は騒ぎを起こしたとして停学処分としたが、在学は難しいだろう。
そして俺にも罰を与えられた。学園と公爵家から。当事者だからな、仕方ない。
「…だからといって月イチはひどくないか?」
「私にも罰をくだされたのです。お揃いですね」
「おそろ…いや、そんなことで騙されはしない。クローディアは平気そうじゃないか。口調が外向きだ」
「まぁ。アルトゥールはそう見えるの? 本気でそう思ってる?」
「そう見えるが、本気で思ってはいない」
クローディアはくすくす笑う。可愛い。知ってる。
平気そうに見えるのは確かだ。それが少し悔しい。余裕というかポーカーフェイスというか。淑女の嗜みなんて、今は俺だけなのに。
だが俺もクローディアに愛されてる自覚はある。だから寂しいと思っているとわかっている。
「クローディアに似合うものを用意したんだ。だが受け取ってはくれないだろ?」
「えぇ。それも月に一度、1つだけと言われてたわね」
「だから俺の部屋にどんどん増えてる」
「…アルトゥール」
「世のデザイナーはすごいな。クローディアに似合うものを作り出す。そしてクローディアもすごいな。何でも似合う」
「…私、何でそんなに愛されてるのか不思議だわ」
「…待ってくれ、語彙力が追いつかない。…まず、初対面から思いつくまま語ろうか」
「自分で言い出したけどごめんなさい、結構よ。私だってアルトゥールの好きなところは…要約すれば一言だけど」
「一言!?」
まぁ顔とか身分とかでも構わない。この顔に生まれて、王族に生まれてよかったと思うだけだし。
クローディアは俺だけしかいないのに耳に唇を寄せた。
「全部よ」
…理性って大事だよな。
ここまでたどり着いた方、感謝です。
書きたいところとか端折ったところとか諸々理解できた方、尊敬です。
ありがとうございました。
※誤字脱字誤変換報告…本当に助かります。ありがとうございます!




