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10年前に回帰した元世界最強は、隠しスキル〈共鳴〉と未来知識で無双する ~俺だけ2周目の世界で、ダンジョンを最速攻略していきます~  作者: 八又ナガト
第二章

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031 圧倒

 奏多の声を聞いた鳴海は、彼を洗脳することを諦める。

 代わりに使うのは、もしものために用意した時の保険。


「くっ……皆さん、今すぐにソイツを殺すのです!」

「「「はい!」」」


 鳴海の慌てた声が響き渡る中、信者たちが一斉に奏多へ襲いかかる。

 しかし、奏多の動きは予想以上に俊敏だった。


(遅いな……)


 奏多は思考しながら、水の流れのように信者たちの攻撃を躱していく。

 その動きは無駄がなく、まるで事前に敵の動きを読んでいるかのようだった。


 続けて反撃が始まる。

 峰打ちや殴打、蹴りなど、一見すると殺傷力のない攻撃ばかり。

 しかし、鳩尾や頭部といった急所を的確に狙い、着実に意識を刈り取っていく。


 その光景を目の当たりにした鳴海の顔が、驚愕で歪む。


「ば、馬鹿な……どうしてこれだけの動きができる!?」


 戸惑いの中、鳴海はある事実に気付く。

 時間経過とともに、奏多の動きがより洗練されているのだ。


(確か、彼は先ほど自分にデバフをかけ、私の洗脳を防いだと言っていた気が……そうです! ()()()()ありました!)


 勝利への活路を見出した鳴海は、必死に声を張り上げる。


「待ちなさい! 今ならまだ許して差し上げましょう!」


 奏多は冷ややかな目で鳴海を見つめ、答える。


「この状況で、そっちが主導権を握れるとでも?」

「と、当然です! 確かに私のスキル〈洗脳〉は、デバフにかかっている最中の相手には発動できませんが……デバフ効果の終えた今の貴方なら話は別です!」


 鳴海の顔に浮かぶ不敵な笑み。

 しかし、奏多は呆れたような表情を浮かべる。


「いや、それは不可能だ」

「っ!?」

「お前の洗脳には発動間のクールタイムが存在する。30分……いや、現状のレベルだとその数倍は堅いか」


 鳴海の顔から血の気が引く。


 奏多は一周目の記憶を頼りに、『新世紀会』の全てを把握していた。

 その厄介さも、弱点も、彼らが本格的に表舞台へと姿を現したのが第44階層のダンジョンブレイク直後だということも。


(結局のところ鳴海は、ダンジョンブレイク後の混乱に乗じて組織の拡大化に成功しただけ。まだ信者が出揃う前の今ならレベルも低く、大した相手じゃない)


 一応レベルは60と、今の奏多より遥か上のようだが……

 ボス戦ならともかく、対人戦は技術と経験が物を言う。

 その点、現状のコイツらには粗がありすぎた。


 それもそのはず。洗脳されながら力を振るう冒険者が、頭を使って戦う冒険者かなたに勝てる道理はない。

 奏多の冷静な分析が、状況を完全に支配していた。


「御託はその程度か?」

「ひっ!」


 思わず後ずさる鳴海。

 彼は〈洗脳〉というレアスキルに恵まれただけで、素の戦闘力は決して高くない。

 このままだと自分もやられると本能的に察したのだ。


 しかしここで、鳴海の頭に一つの疑問が浮かぶ。


(いえ、待ってください。なぜ、彼は私の信者共を殺さない……?)


 奏多の攻撃は全て非致命的なものばかり。

 初撃を浴びせた吉沢のみ胸元が切り裂かれているが、まだ息自体はある。

 その事実に気付いた鳴海の顔に、邪悪な笑みが浮かぶ。


(分かりましたよ。コイツは恐らく人を殺したことも、その覚悟もない。なら――)


「皆さん! 武器を捨て、ソイツの動きを拘束してください!」

「「「はい!」」」


 信者たちは命令に従い、無防備な状態で奏多の前に姿を曝け出す。

 これで奴の動きを封じることができた。

 あとは、信者ごと攻撃を浴びせればいい。


「高砂!」

「ええ!」


 この中で数少ない、洗脳を用いずとも鳴海に付き従う部下の一人、高砂。

 彼はその剛腕に魔力を込め、全力で振り下ろす


「オラッ! 喰らいやが――」


 しかし、その瞬間。


「バイブロブレード」


 奏多の冷たい声と共に、一筋の光が走る。


「――は?」

「……へ?」


 上半身と下半身に分かたれた高砂が、ずるりとその場に崩れ落ちる。

 その光景を目の当たりにし、鳴海の頭が真っ白になった。


「な、なぜ……貴方は、人を殺せないはずじゃ……?」


 奏多の目に、冷徹な光が宿る。


「誰がそんなことを言った? 俺はただ、自分の意志以外でお前に付き従っている奴まで殺すつもりがないだけだ。格上との戦いなら、そこまで気にする余裕はないんだが……()()()()だからな」

「ひ、ひいっ!」


 奏多の鋭い眼に睨まれ、尻もちをつく鳴海。

 未だに両者のレベル差は歴然。しかしこの瞬間、力関係が完全に決した。


 奏多は呆れたように溜め息をつき、鳴海に向かって冷たく宣告する。


「さあ、そろそろ終わりにしよう」


 その言葉に、絶望的な恐怖が鳴海を包み込むのだった。

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