表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/14

動物と話ができる子

自称動物と会話ができると言う子と出かけた。

とある人物の妹なのだが、何故か私は気に入られている。


二人でイオ…いや、大型ショッピングモールの帰りだ。

晩御飯の材料を買っただけの話だ。

田舎っていうのは買い物に行くだけで大変だ、その間は手を繋いでおかないといけないし。


妹ちゃんは興味深い物を見つけるとそれしか見えなくなり、

間に道路があろうが、車が走っていようが関係なくそこに向かって走り出すので、

絶対に手を離してはいけないのである。


その帰り、私にとっては運が悪いことに一匹の犬と出会ってしまった。

妹ちゃんは話ができるので、その犬に向かって走る。

私は妹ちゃんが「動物と会話できる」と話していたのを思い出し、

しばらく会話させてみる事にした、これが良くなかった。

要冷蔵の食材が無くて本当に良かった。


どうやら、会話と言っても「わんわん」と声に出すような物では無く、

お互いが見つめあって会話をする方式の様である。

妹ちゃんは腰を下ろし、目線を犬と同じ高さまで下げる。


この状態がまさか1時間ほど続くとは思っていなかった。


私は初めて見ることもあって、そこまでイライラしなかったが。

こんなに時間がかかるものだとは思っていなかった。

犬も彼女と話している間はじっとしている。

良く考えてみるとこれはあり得ないことではないか。


ああ、これが動物と会話をするという事ね、と思いながら煙草をふかし見ていた。


傍から見れば、女の子と犬が見つめあっているだけなのだが、

これは間違いなく会話をしている、と私は思った。妹ちゃんは嘘がつけない性格だ。


妹ちゃんと行動する際はイライラしない。これが鉄則だ。

犬との会話も終わり、犬に手を振って別れ、私の方に戻ってきた。


…私だけでなく、他の人も1時間も待たされたのだから、

さっきの犬と何を話したのか聞いてみたくなるはずだ。私は戻ってきた妹ちゃんに尋ねてみる。


これがいけなかった。


ここから犬との会話の内容の要約。

数字の概念はないらしく、最近の話をしていた模様。

ある日、普段は遊んでくれないご主人と珍しく出かけた。恐らく車に乗ったようである。

そこは初めて行く場所であり、ご主人とその家族が遊んでくれたと。

犬はそれが嬉しくて、時間も忘れて遊びに遊びまくった。

気が付くと、ご主人一家が見えない、いなくなってしまった。

ご主人一家もきっと楽しくって迷子になってしまったのだろう、

それで今、その犬はその迷子になってしまったご主人一家を探しているのだと。


…うううーーーん。聞かなきゃよかった。


「早く見つかるといいね」そう言って妹ちゃんは分かれたんだと。

…はあ、これは困ったぞ。妹ちゃんも気が付いていない。


その犬、多分捨てられている。


これを妹ちゃんに言うべきだろうか?

…いや、言わなくてもいいんだ普通の子であればさ。


しかし、この妹ちゃん、異常に勘が働く。


私が今の話を聞いて何かを察したのはわかってしまうんだ。

それで黙っているのは不信感につながってしまう。

言いたくない、言いたくないが、不信感は抱いてほしくない。


妹ちゃんはすでに私が今の話で何かを察したことに気づいているようで、

目をキラキラさせている。


…妹ちゃん、会話ができるのはすごいけど、できるのであればこのくらいは察してくれ。

私が酷な解答を提示しないといけなくなるじゃないか。

会話出来ていると言えるのか、それは。


…仕方ない。私の解答を妹ちゃんに話す。


妹ちゃんはみるみる顔色が悪くなり、

彼女は先ほどの犬が歩いて行った方向に走り出そうとする。


私は慌てて彼女の手を掴む。


「ダメだ、妹ちゃん。それをさっきの犬に話すつもりか?

きっと知らない方がいいんだ、何でも知る必要はない、そう思わないか?妹ちゃん。」


「で、でも…」そういって、ウワーンと泣き出してしまった。


私も彼女に謝った。そもそも聞かなければこうはならなかった。

動物と会話ができる。それはよい事なのだろうか?

そんな1日になってしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ