夢の中の出来事
「ねぇ、早く起きてよ」
「ん…まだ外は暗いよ。もう少し寝てなよ」
「スズメはカラスの残り物を食べるって言うでしょ。早起きするといいことがあるわよ」
聞いているだけで心が満たされるような、甘く、優しい声だった。
言うなればそれは、予定のない休日に朝寝坊をしている時のような、そんな充足感に似ていた。
細く白い指が自分の髪をさらさらと掬うのがくすぐったい。
「今日は一緒にベーグルを焼きましょう。それで、それを持って花園に行くのよ」
「うん、そうだね…」
私が横になっているベッドに腰掛け、その少女はにこやかに笑った。神官服に身を包んだ愛らしい少女だった。
十四、五歳くらいだろうか、眠っている人物と意識を分け合う私よりも、少しだけ幼く見えた。
夢の中で、こうして他人と意識を共有することがある。私が深い眠りについたときはいつもそうだった。私は、そうやって意識を共有するのがいつも―――恐ろしかった。
しかし今回の夢は、いつもと少し違うようだ。
「ね、もう少しだけ寝ていようよ」
ぐい、と少女の腕を引き、その手をぎゅっと抱きしめる。
「どうしたの、今日は甘えん坊なのね」
おでこに少女の唇が触れる。よほど仲の良い二人らしい。まるで恋人か、母親が我が子を見つめる時のような目で見つめられ、言いようのない気持ちが溢れてくるのが分かる。これは、私か、意識を共有している本人の心か。
「今日はどんな一日になるかしらね…」
その愛しい空間に、いつまでも浸っていたかった。夢から覚めたくないと思ったのは初めてのことだ。
しかし、その気持ちも空しく、徐々に自分とは別の意識が覚醒していくのが分かる。夢の終わりが近いのだ。
(いつもなら待ち望んだ目覚めなのに…)
少女の甘い声が少しずつ遠ざかっていく。視界が、淡くぼやけていった。あまりにも名残惜しくて、本当の自分よりもいくらか骨ばった手が、少女の方へ伸びていき、そして、その柔らかな頬に触れた気がした。
「―――…い」
「……?」
「――おい」
低く神経質そうな声が、頭上から降ってきた。先ほどまでの多幸感はあっという間に立ち消えて、混乱が脳内を支配する。
「…どういう状況…?」
横たわる私に添い寝するかのように、白金色の髪をした美丈夫が並んでいた。




