プロローグ
石畳の路地に並ぶゴシックな建物。
シュノーアのような街並みの一画に、そのお店はあります。
年期の入った木造洋式が情緒深く、その背は一際見上げる程に高い。花壇の草花はありのままの形で生い茂り、冬でありながらも瑞々しい緑を感じさせてくれます。
ドルミーレ・イン・ディエム。
それがコーヒーとアルデヒドの香りに包まれた、このお店の名前です。
霧色のガラスがはめ込まれたドアを抜けると、その先で別世界のような体験が待っています。
――パリーン! ガシャーン!
こじゃれたBGMが緩やかな時間をご提供。
「うらぁぁあああああああ!! ぶっ殺したらあああああああ!!」
大勢の詰め寄る客人は陽気に笑っています。
「あんぎゃあああああああ!!」
ウェイトレスはそれを心からの歓迎で出迎え、
「あわ……あわわわわわわわ……!」
ウェイターの洗練された仕事には迷いがありません。
「シャアアアアア!! ギャフベロハギャベバブジョハバ!!」
寄り道している猫も思わずニッコリ。一緒になって合唱しちゃってますね。
「おち、おち、おちつつききましょう。おつちいて、虚数をかぞえててて」
そしてカウンターの奥におわすのが、このお店のマスター。自慢のコーヒーを淹れながら、今日も優雅に佇んでいます。
この物語はそんな街、そんな喫茶店が引き起こす――心温まる家族のお話なのです。