表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忘れられた盾の勇者は護りたい  作者: たてみん
第3章:錆びついた平和の騎士団
78/131

78.ミッションの達成条件は?

 結局朝になるまで魔物の襲撃は無かった。

 なので僕らはどこかのんびりと朝日を浴びながら朝食を食べていた。


「皆食べながら聞いてね。

 今日これからの予定を伝えます」

「「はいっ」」

「騎士団員は後発組の15人に加え、先発組から10人、それとティーラがこの場に残って昨夜に引き続き魔物を誘引して殲滅して欲しい。明日以降成果が無ければ順次北に移動しつつ同じことの繰り返しで。

 ここの指揮はティーラに任せます。

 残りの騎士団員はエンジュと共にフィディの指揮の元、南側からぐるっと回ってはぐれ魔物の討伐して欲しい。

 僕とサラとキャロは一緒に山の中腹に向かってこの地域一帯の魔物の状態を調査してきます」

「「分かりました」」


 僕の指示を聞いて頷くみんな。でも中にはちょっと納得いかないぞって顔をしている人も居る。いちいちそれに反応してたらキリがないんだけど、今はたった40人程度しか居ないから、それなら不満は解消しておいた方が後々の連携が良くなるだろう。


「気になることがあるなら遠慮なく言ってね」

「え、あ、じゃあ。

 あのぉ、俺らってやっぱり足手まといなんでしょうか」

「ん?」


 そう聞いてきたのは、昨日の魔物との戦いで左足に怪我を受けてた後発組の1人か。


「昨日の戦いでも俺らの攻撃は大して効いてなかったですし、むしろ先発組の邪魔をしただけじゃないかなって思って。

 今だってここに居残りなのは戦力外だからですよね」

「おい馬鹿、言い過ぎだって」


 あまりの発言に隣の同僚が肩を小突いて止めに入る。でもまぁ彼の言いたい事は分かるし、今回に限って言えば戦力としてあまり数えていないのも事実だ。

 まだ基礎体力作りを始めたばかりの彼らは、ゴブリン相手ならまだ良かったんだけど熊相手だと死にかねない。むしろ先発組だってまだ盾も碌に扱えない新人と大差ないし熊と1対1で戦ったら勝てないか勝てても大怪我をする危険が高い。

 ただそれを正直に伝えれば良いというものでもないと思う。それに彼らをここに残すのは別の理由だ。


「今回の遠征は何が出来たら達成か分かる?」

「え?それはまぁ、魔物を討伐すれば良いんですよね」

「うん。勿論魔物は倒すね。

 でもその理屈で言えば、昨夜もう倒しちゃったから終わりにして帰っちゃっても良いのかな?」

「それは……いや、どうなんでしょう」


 実際の所、もう帰っても王都の人達からは文句はいわれないと思う。ちゃんと魔物を討伐した証拠もある訳だし『見事魔物を討伐して帰ってきました』と胸を張って言えば誰も疑いはしないだろう。だけど討伐依頼を出した地元の人達からしたら?多分今の状態だとまだ魔物の被害は無くならないだろう。


「敢えて大げさな表現をするけど、魔物を1体残らず倒し尽くして明日からはこの山で子供たちがピクニックを楽しめる状態にしたい?」

「それは、確かに理想ですが、やっぱり無理ですよね」

「うん。断言するけど絶対に無理だよ」


 多少なりとも瘴気があれば魔物は発生する。そして瘴気は生き物がいる限り完全に消えたりはしない。生き物が完全に居ない砂漠とか氷山とかなら分からないけど確かめようもない。


「じゃあそうやって考えて行った時に、僕らが何をすべきかと言えば、麓の村が魔物に襲われない様にすることだと思っている。

 つまりこうして誘引できる魔物が居なくなるくらいに魔物を討伐出来れば良いんだ。

 言い換えるとわざわざ山に登ってそこに眠っている魔物を呼び覚ます必要は全くない。

 だからね。

 実はここで頑張る皆が今回の主役。フィディ達が補助。僕はおまけくらいの役割なんだよ」

「そ、そうだったんですね」

「そうそう。今回の作戦の成否は皆に掛かってるからしっかり頼むよ」

「はっ、分かりました!

 先ほどの失言をお許しください」

「気にしないで。これからも懸念や心配は内に溜めずにちゃんと吐き出して欲しい」


 よし、これで今度こそ大丈夫そうだな。

 っと、1つ忘れてた。


「ティーラ。今夜か明日かそれ以降かは分からないけど、子爵家お抱えの騎士団200名が応援に来るから、喧嘩しないようにね」

「はい」

「僕らと彼らの指揮系統は全く別だと考えて良いから、もし仮に彼らが何か命令をしてきても断ってくれていい。

 どうしても話が合わない場合には距離を取って、みんなは僕が帰ってくるのを待っていて欲しい」

「分かりました」


 出がけに話した感じだと話が通じないって程ではなかったと思うけど何があるか分からないからね。


「じゃあサラ、キャロ、行こうか」

「はい」

「うん!」


 そうして皆と別れて僕達は山を目指して森の中へと入って行った。

 森の様子はいたって普通。強いて言えば動物の気配が少ないかなってくらい。でもそれは仕方ないか。


「アル様。11時の方向に魔物の群れです」

「ありがと。えっと4体か。

 じゃあ僕が盾役、キャロが主攻、サラはサポートで行こうか」


 浅いところに出てくる魔物であればキャロ1人でも勝てるとは思うけど偶にはちゃんと連携して戦うのも良いものだ。時間短縮になるし体力の温存にもなるしね。

 と、向こうもこっちに気付いたな。


「よし、来い!」

「グラァッ」


 先頭の1体が走り寄ってくる勢いのまま僕に襲い掛かってくる。それを僕は半歩横にずれながらそっと盾を当てて流してあげる。すると魔物は態勢を崩しつつ僕の斜め後ろへと転がる様に突き進み。


「えりゃっ」

ボコッ!


 待ち構えていたキャロに頭を叩き潰されて崩れ落ちた。

 残りの3体は、普通の動物なら最初の1体がやられた時点で逃走を選択する場合も多いんだけど、魔物は攻撃性が上がってるから気にせず向かってきた。

 左右からの2体同時攻撃か。意外と連携が取れてるのかな?

 対する僕は、2体を見比べて若干重心の低い右の魔物に対して馬跳びの要領で上を取り、そのまま背中を蹴り飛ばした。

 するとどうなるか。僕に蹴られた魔物はちょっと加速してさっきまで僕が居た場所へ。もう1体がそこへ突撃していく形になる。


「がっ??」

「!?」


 あ、でも流石に同士討ちとはいかないな。腕がぶつかる前にちゃんと止まって2体揃って僕の方を振り返った。……うん、振り返っちゃった。


「まったく、こっちにもいるぞ。っと」

ドカ、バキッ!


 無防備な背後から再びキャロがポールアックスを旋風のように振り回し魔物たちの頭を刈り取って行く。なんともあっさりだ。

 その様子を眺めていたところで、残った最後の1体が背後から僕に飛び掛かってくる。


「残念だけど見てなくても動きバレバレだから。ふんっ」

「グオッ!?」


 飛び掛かる魔物に対し、逆に身を屈めてその下に潜り込み、気合と共にその巨体を上空へと持ち上げる。空を飛べない種は基本的に地面から足が離れた時点で態勢を整えたり踏ん張ったり出来なくなるから数秒間、無防備な姿を晒すことになる。

 そしてその数秒があれば戦いが終わってしまうのが常だ。


「さようなら」

ズンッ!


 上空へと飛んだ、その背中に飛び乗ったサラが後頭部と首の付け根にナイフを突き入れ絶命させていた。地面に落ちる寸前に近くの木へと飛び移ったサラは汚れ一つない。


「うん、良い連携だったね」

「というか楽勝過ぎるぞ。強敵は居ないのか、強敵は」

「はいはい、まずは返り血を拭きましょうね」

「まあもう少し登れば強いのも出てくるよ」


 そうして僕らはまるでハイキングのように山道を進んでいった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ