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忘れられた盾の勇者は護りたい  作者: たてみん
第2章:騙られた救いの聖者
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43.みんなの今後

 無事に(?)朝練と朝食を終えた僕は皆と別れて勉強へ。皆はお昼まで部屋で休むそうだ。僕も朝練初日はかなりぐったりしてた記憶があるし、むしろ休息は大事だからしっかり取って欲しい。

 そして午後。


「アル様。ひとつご報告が」


 僕の元にやって来たグントからの報せは、予想通りと言えばその通りで。どうやら昨日の司祭が僕の事を探し回っているらしい。午後に僕がよく街に出ている事は少し調べれば分かることだからね。流石に領館に乗り込んでくることはしないか。


「今日の所は外に出ずに様子見がいいか」

「はい。それがよろしいかと」

「引き続き監視をお願い」

「はっ」


 他人の思惑で自分の行動が制限されるのはあまり好きじゃないんだけど、元はと言えば自分で蒔いた種だし仕方ないか。多分数日の辛抱だしね。

 それより今は出来る事をしよう。そう思って皆の客室に向かった。


「コンコン。入るよ~」

「どうぞ~」


 客室に入ればみんな既に起きていてフィディは食後のお茶を堪能していた。フィディは、というのは残りのキャロは部屋の内装が珍しいのか色々見て回ってるしエンジュは所在なさげにテーブルの近くで立っていた。

 部屋に入って来た僕を見てどこかほっとしたようにエンジュが近づいてくる。


「あの、ご主人様。なにかお仕事ありませんか?」

「ん?仕事?」


 どういうことだろう。エンジュには将来的には今のサラと同じように僕の付き人になってもらおうかななんて思ってたりするけど、それはまだ伝えてないし今はただのお客さんだ。

 見かねたフィディが説明してくれる。


「はぁ。その子ね、自分がお世話される状況に慣れてないみたいよ」

「お仕事しないとぶたれたり、ごはん抜きになります」

「なに!?ご飯抜きになるの!!」

「ならないから落ち着いて」


 エンジュの呟きに慌てて駆け寄ってくるキャロ。

 働かざる者食うべからず、とは言うけど客にまで働けとは言わないよ。フィディは既に居候するって宣言してたから朝練の時とか頑張ってもらったけど。

 って、そうそう。その話をしに来たんだよ。


「ひとまず座って。

 ここに来たのはキャロとエンジュが今後どうしたいかを聞きに来たんだよ」

「どうって?」

「成り行きで3人をあの屋敷から連れ出してきた訳だけど、別に僕としては皆を拘束する気は無いんだ。

 もしどこか行きたい、何かしたいっていうなら止めないしむしろ応援する。

 分かりやすく言うとキャロは西のゴブリン王国出身でしょ? 実家に帰りたいなら送るよ」

「あたしは帰らないぞ!」


 僕の提案にキャロは胸を張って返してきた。


「理由を聞いても良いかな」

「ゴブリン王国の民は受けた恩は必ず返すものだからだ!」


 これまた当然というように宣言するキャロ。この様子だとキャロ個人が、ではなく王国の常識として根付いている思想なんだろう。そう思うとちょっと嬉しくなる。


「つまり僕に助けてもらった恩を無視して帰ったりしないってことかな」

「うん。それに元々あたしは昔命を救ってくれたゴリアンに恩返しするために家を出てきたんだ。

 だからそれが済むまでは帰るつもりはないよ」

「そっか」


 ゴリアンっていうのは最上級の敬称だったはず。その人の為なら命を惜しむことなく全身全霊を捧げるべしっていうのがゴブリン王国の習わしだ。ならきっとキャロはそのゴリアンを見つけてその人に仕えて、その人が天寿を全うするまで国には帰らないつもりなんだろう。


「なら僕への恩返しはそのゴリアンが見つかってからで良いよ。ふたり揃って挨拶に来てくれたら僕も嬉しいし」

「それなんだけど、しばらくはここに居させてくれないか?」

「いいけど、どうして?」


 僕としてはいつまで居てくれたって構わないんだけど、どことなく思い悩んでる風なキャロの様子が気になる。


「その、今回の事であたしはまだまだ未熟なんだってよく分かった。

 きっと今のままゴリアンに会っても足手まといになるだけ。

 だからここで鍛え直させてほしいんだ。アルのそばに居たら強くなれそうな気がするから。

 せめてティーラには勝ちたい」


 昨日ティーラに不意打ちを軽々と止められたのを少し根に持ってるみたいだ。確かにティーラ級の敵が現れたら今のキャロでは勝ち目はないだろう。

 キャロはまだまだ伸びしろ沢山というか鍛えればもっともっと強くなると思う。それこそ今回みたいに地下牢に閉じ込められても余裕で建物を破壊して逃げ出せるくらいには。

 僕としても知り合った子が元気で居てくれた方が嬉しいし、それなら一肌脱ごうかな。


「よし。じゃあ明日からも朝練でビシバシ行くから覚悟してね」

「それはちょっと加減して欲しい。あれ以上は倒れる。死んじゃう」

「いやいや。そんなことは……ある?」

「「うんうん」」


 うっ、3人そろって頷かなくても。仕方ないなぁ。じゃあ程々に厳しくしていこう。よし、なら午前中は訓練してもらって、午後は何かお手伝いをお願いすることにしよう。

 で、残るはエンジュか。


「エンジュは、やっぱり行くあてとか無いよね」

「はい……」

「なら今後は僕専属のメイド見習いになってもらっても良い?」

「メイド、見習い」

「要するに僕のお世話をする仕事。サラの後輩だね。仕事の内容とかもサラに聞けば教えてくれるだろうし」

「サラおねえちゃんの。はい、分かりました」


 僕の言葉に頷いたエンジュはとてとてとサラの横に歩いて行って頭を下げた。


「おねえちゃん。これからよろしくお願いします」

「っ。ええ、一緒にアル様をお助けしていきましょう」


 エンジュからのおねえちゃん呼びにどこか感極まった様子のサラ。そう言えばサラは末っ子だったっけ。ならそう呼ばれることに憧れがあっても不思議じゃないか。

 ともかくこれで3人の今後は決まった。



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