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忘れられた盾の勇者は護りたい  作者: たてみん
第2章:騙られた救いの聖者
42/131

42.みんなの得意分野

 エンジュとフィディにはもう少し休んでもらって、僕はキャロの様子でも見てこようかな。

 騎士団のみんなが相手をしてくれているようだけど、任せっきりも良くないし。


「キャロ。順調に馴染めてる?」

「あ、アル。うん、ここのみんな良い人。親切で優しい」

「そっか。それは良かった」


 話ながらキャロの素振りを見せてもらう。


「うーん」

「やっぱりどこかおかしい?変?」


 やっぱりって事は自分でも自覚はあるらしい。何というか剣を振っているのに剣に見えないというか。


「ちょっと待ってね。えっと、これだな。これに持ち替えてみて」

「これは斧?それとも槌?」

「どっちもかな」


 僕が渡したのは長柄の先に片側は斧のような刃が付いていて、その反対側はハンマーのように太く平らになっている武器だ。ポールアックスって呼ぶのが一般的かな。


「それでもう一度素振りしてみて」

「うん、わかった」


 キャロがちょっと重そうに持ち上げて、一気に振り下ろす。

 ブオンッ、と凄い風を切る音を立てながら訓練場の地面に突き刺さるポールアックスはまさに一撃必殺って感じだ。言い換えると避けられるとピンチだけど。

 でもこれの方がキャロには合ってる気がする。


「どう?」

「凄く良いと思う。まだ重くて上手く扱えないけど頑張って慣れる!」

「キャロの場合、魔力強化を覚えれば、すぐにいい線行くと思うよ」

「うぅ、ゴブリン魔力は苦手」

「あっ」


 キャロの苦手発言に隣で聞いていた騎士のお兄さんが「まずっ」って感じの声を上げた。そういえばこのお兄さんは前に僕の前で「攻撃を逸らすのが苦手なんだ~」って言ってた人だ。もちろん今ではちゃんと逸らせるようになってる。

 僕はキャロの肩に手を置いてにっこりと笑った。


「キャロ」

「ん、なんだ?」

「苦手なら特訓で克服あるのみだね!」

「…………えっ?」


 僕の笑顔を見て何故か固まるキャロ。大丈夫だよ。ゴブリンは別に魔力を扱えない種族じゃないから。キャロでも1週間もあれば初級くらいにはなれるよ。


「という訳でちょっと訓練所の端に行こうか」

「え、え、えぇ~~~」

「が、がんばれよ~。死ぬんじゃないぞ~」


 訳も分からず引きずられていくキャロをお兄さんが見送る。でも死ぬななんて酷いなぁ。僕はちゃんとその人に合った訓練をするから大怪我をすることすら滅多にないのに。


「……で、キャロはなにやらされてるの?」

「キャロは魔力強化の特訓中」

「ぬぎぎぎっ」


 休憩を終えたフィディ達が僕の所にやって来た。視線の先には大岩を持ち上げた状態で立ち続けるキャロの姿がある。


「身体的な能力だけだとギリギリ支えきれない重さの岩をああやって持ち上げることで、強制的に魔力強化を促すことが出来るんだよ」

「それはまた、なんというか鬼ね」

「がんばって」

「う、ウッス!」


 エンジュの声援にこたえる余裕があるならまだ大丈夫だな。うん。


「さて、じゃあフィディにはお仕事してもらおうかな」

「私? 何をすればいいの?」

「魔法を使った訓練。まずは皆にフィディの凄さを理解してもらおうかな。

 皆集合!」

「「はいっ!」」


 僕が声を掛ければすぐさま訓練の手を止めて集まる騎士団の皆。その顔にはどことなく緊張の色が見えるんだけど大丈夫だよ?


「えっと、今から魔法の訓練を行います。

 今日からはここに居るフィディが魔法の手解きをしてくれます。

 はい皆拍手~」

「「パチパチパチ」」

「じゃあ早速始めるから盾を構えてね」


 魔法の訓練をするというのに盾を構えることに誰も疑問を抱かないのは訓練の賜物だね。もちろんこの時点で盾を持っていないって人も1人も居ない。居たらその人には盾なしでこの後の訓練を受けてもらおうと思ったんだけどな。残念。

 ただ、当然フィディはこれから何をするのか分かってない顔をしている。


「フィディは魔法の連射って出来る?」

「え、ええ。それなりには行けるわよ」

「うん、じゃあまずは昨日僕に放った魔法くらいの強度でみんなに魔法を撃ちまくって欲しいんだ」

「って大丈夫なの?」

「大丈夫大丈夫。あれくらいなら多分みんな余裕だから」

「多分なのね」


 呆れるフィディだけど僕が本気なのを見て仕方なく騎士団のみんなに向き直った。


「えっとじゃあ恨むならこっちのアルを恨みなさいよ。『ファイヤーアロー』連射!」

ばばばばっ!


 秒間3発くらいかな。みんなに向けて魔法で創られた炎の矢が飛んでいく。みんなはそれを見て冷静に盾を構えて防いでいく。うん、これくらいならみんな余裕だね。フィディも初めなので手探りで魔法を撃ってるみたいだし。

 でもこれじゃああまり意味がない。


「フィディ。威力5割増しで。魔法の種類とかも変えてもらって良いから」

「え、ええ」

「あと連射速度も倍でお願い。もしくは広範囲攻撃で」

「え、ええっ!?」


 同じようで全然違うニュアンスの返事をしたフィディは、それでも僕の期待に応えるべく魔法を撃ちまくってくれる。


「くっ、ほんとに死んでもしらないんだからね!『メテオシャワー』『ハリケーン』『ニードルテンペスト』!!」

「「ぐおおおおっ」」


 空から幾つもの岩が降り注ぎ、突風が叩きつけられ、更には氷の槍がみんなを貫こうと飛んでいく。これには皆も耐えきれずに吹き飛ばされたり倒れたりしてる。

 でも強力な魔法を連発したせいでフィディも息切れしてるな。


「はぁ、はぁ、はぁ。これでどうかしら」

「うん。なかなかに良かったよ。じゃあ皆が立ち上がったらもう1回ね」

「悪魔かしら!?」


 悪魔とは酷いなぁ。それにほら見てよ。ちゃんと皆大怪我してないし、立ち上がってくれるし、その顔からはまだ闘志が失われてないし。大丈夫大丈夫。これくらい割といつもの事だから。



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