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忘れられた盾の勇者は護りたい  作者: たてみん
第1章:忘れられた盾の勇者
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4.国王からの指令

 目が覚めてから数日後。僕は父上から呼び出しを受けた。日数が空いたのは父上も忙しいし、僕の体調も快復したとはいえ急な事だったし何日か様子を見るという意味もあったのだろう。

 父上と直接会うのは実に数カ月ぶり、いや半年ぶりか。万が一にも病気が伝染してはいけないと距離を置くようにしていただろうしな。なので僕としては特に不満は無い。

 久々に会った父上は、厳格な顔をしつつもどこか心配げだ。


「父上。お呼びとあり参上いたしました」

「うむ。アルよ、いまは公式の場ではない。そう畏まるな。息子から距離を置かれるというのも親としては淋しいものだ」

「はい、すみません」

「まだ遠い気が……それよりも、本当に良くなったのだな?」

「はい。皆の看病のお陰です」

「そうか……」


 僕の返事を聞いて父上は感無量と言った感じで顔を上に向けつつ目を閉じて。

 かと思えばカッと目を見開いて僕を見るとつばを飛ばす勢いで話し出した。


「いやお前、本当に5歳か!?

 ツバイクを見てみろ。あのやんちゃっぷりを!

 あれが5歳児というものだ。

 いったいどういう教育をしたらそんな真面目ちゃんに成長するんだ。親の顔が見てみたいぞ」

「あー父上。僕としては父上がお変わりなくて安心しました。

 それと親の顔であれば鏡でよく見ているでしょう。それとも母上をお呼びしましょうか?」

「や、やめなさい。私が殺される!」


 相変わらず父上はスイッチのオンオフが激しい。国王としては厳粛に振る舞っているけどプライベートになるとはっちゃけるというか、なるほどツバイクの父だと感心してしまう。


「それにしても病気になる前から落ち着いてる子で驚かされたが、今はそれに輪をかけて雰囲気出てるな。

 やっぱあれか?逆境が男を成長させる的な。

 私も経験があるぞ。何を隠そうあいつとは壮大な恋愛の末の結婚だったからな。

 あの死ぬか結婚するかの2択を迫るようなあいつのプロポーズを受けた私は間違いなく一皮剥けたからな!」

「はぁ」


 まさか父上も前世の記憶を?などど一瞬考えたけど、そんなことは無いだろうと思う。普通の人はしっかりと記憶を漂白してから生まれ変わるそうだからな。


「あ、そうだ。父上に聞きたい事があったんです」

「お、なんだ?」

「6英雄物語についてです。盾の勇者は本当に居なかったのですか?」

「残念だが歴史上はそうだ」


 歴史上は。つまり事実とは異なるけど声を大にして言うわけには行かないということか。まぁ、言えば6英雄を嘘つきだと言ってるようなものだしな。


「我が王家では1つだけ受け継がれている決まり事がある。それは生まれた男子が青味がかった黒髪であれば愛称が『アル』になるような名前にすることだ」


 ここでその話をするということはそれが盾の勇者が語られない事と何か関係があるということか。

 でも同じ血を引いてれば髪の色だって似てくるだろう。兄弟全員が同じ髪色だと全員アルだから、その時はアル1号、2号とかって呼び分けるんだろうか。

 そこでふと父上の髪をみればお世辞にも黒っぽくはない。


「父上は抜けるような青髪ですね」

「決まりは名前だけで別に王位継承には言及されて居ないからな。

 それに私の代では他にその髪色の子は生まれなかったのだ。先代も先々代もだ。だからもう当時の血筋は薄れてしまったのではないかと言われていた。

 しかしそこにアル、お前が産まれた。するとどうなると思う?」

「……伝説の再来、みたいな感じですか?」

「そうだ。もしかしたら200年前に失われた我が国の誇りを取り戻してくれるかもしれないと期待された訳だ。

 だが期待は同時に不安も呼び込む。

 まったく馬鹿げた話だ」


 いつの時代も、種族などにも関係なく、誰しも自分よりも強い者、賢い者、権力のある者に一方的に期待を寄せるものだ。

 そしてそれが期待通りの結果を出した時はほらやっぱりとまるで当たり前のように頷き、逆に大した成果を出せなかった場合は極悪人の裏切者として罰を与えようとする。

 更に言うと結果を出して欲しくない人、裏切られるくらいなら元々希望なんて無い方が良いと考える人というのも僅かながら居るものだ。そういった人達は可能性が芽を出す前に摘み取ろうとする。

 そう。病気に見せかけて呪い殺そうとしたりとか。


「アルよ。お前の病気は治っても身体は弱っているだろう。

 なにより成長期の2年を寝て過ごした訳だからな」

「はい」

「そこでだ。暫くの間、バックラー伯爵領にて療養してきなさい。

 そうだな。1年。いや2、3年もあれば良いだろう」

「分かりました。いつ頃出ましょうか」

「今夜だ。あまりお前の元気な姿が大勢の目に留まる前の方がいいからな。

 急で悪いが準備などなメイド達がやってくれるだろう」


 そうして僕は出掛けに母上と短い挨拶だけを交わして急ぎ王都を出ることになったのだった。



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